所長 齋藤潔 理工学術院教授
2050年における温室効果ガス排出量80%削減を実現するためには、再生可能エネルギー利用を中核として、高質な電力や燃焼エネルギーだけでなく低質な熱利用まで含めた多様なエネルギー形態をトータルとして最適に活用することが求められています。
このためには、これまでの縦割りされた学問体系内での研究開発では対応できません。電気系、機械力学系、熱エネルギー系の異なるエネルギー変換工学体系を横断できる革新的な理論体系の確立が必須となります。本学では、50年以上にわたり、現象の論理と法則の構造を探求し、異なる工学体系間においても、すでに強固な体系化がなされている電気回路論を共通解析構造としてシステム解析が統一化できること、流通量と位差量を共通量とすることにより、その積であるパワーが体系間のエネルギー変換における不変量として変換群を構成できることを世界に先駆けて提示してきました。
熱エネルギー系は多様に形態を変える熱と流動現象からなる極めて複雑な構造となるため、体系化が取り残されてきていましたが、熱エネルギー系に対して流動エネルギーの伝搬構造を明示し、閉塞や気液分離による特異な流動現象を流通量の拘束条件として回路網構造に加えることで、回路網解析が実現できることをはじめて示しました。これにより、熱エネルギー系の解析体系が大きく進展し、機器開発にも直結できるようになり、その省エネ性から世界的に普及促進が進められているヒートポンプや再生可能エネルギー利用技術の解析に活用され、多くの企業との共同研究や公的資金による大型研究開発が進んでいます。
今後は、オープンな場で電気系,機械力学系,熱エネルギー系と多様に変換されるエネルギー形態を含む未来エネルギー社会の共創を進めていきます.さらには,資源循環プロセスや新たなセンシング技術を導入した運用最適化技術,人間環境科学,経済や政策等と連携しながら,新たな環境エネルギーシステムの創出等に貢献していきます。