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独創性を発揮する、気鋭の研究者たち
早稲田大学PI飛躍プログラム 2026年度支援対象者の研究内容
Thu 28 May 26
早稲田大学PI飛躍プログラム 2026年度支援対象者の研究内容
Thu 28 May 26
独創性を発揮する、気鋭の研究者たち
早稲田大学では、独立した研究室を主宰する研究者(Principal Investigator/以下PI)を支援する「PI飛躍プログラム」を設置しています。5回目となる2026年度の公募では、13名の研究者より申請があり、3名が採択されました。本記事では、独創的な研究領域から社会への貢献を目指す、それぞれの研究活動を紹介します。
音声知覚のメカニズムを
認知神経科学から紐解いていく
商学学術院 篠原靖明准教授
商学学術院 篠原靖明准教授 撮影場所:西早稲田キャンパス
商学学術院の篠原靖明准教授は、音声学にアプローチしてきた。ヒトはどのように言語音を発し、聞き取っているのか。音声の産出や知覚に関するメカニズムを、音響の視点から分析する領域だ。
「近年私が関心を抱いているのが、子音や母音といった“音素”と、音素の中にある“異音”です。例えばパンに塗る‘butter’は、イギリス英語とアメリカ英語で‘t’の発音が異なります(英[t] vs. 米[ɾ])。これを異音と呼びますが、異なる音声であるにもかかわらず、同じ音素/t/として認識するのはなぜか。その脳処理メカニズムの解明を目指しています」
PI飛躍プログラムに採択されたテーマは、「言語音の神経処理:事象関連電位から音素認識を解析する」。音素の認識や異音の知覚が脳内で処理されるプロセスを認知神経科学の観点から分析する。
「大きな目的は、ヒトが言語音を知覚・識別・認識するプロセスを、脳反応から解析することです。PI飛躍プログラムでは、まずイギリス英語話者とアメリカ英語話者について、両者の脳波を比較します。特に課題となるのが、異音に対する脳波の分析です」
ソフトマテリアルの構造解析に
独自開発の装置でアプローチ
理工学術院 廣井卓思准教授
理工学術院 廣井卓思准教授 撮影場所:西早稲田キャンパス
構造化学を専門とする理工学術院の廣井卓思准教授は、これまで計測が困難だった高分子の構造解析について研究を進めている。特に注力しているのは、ソフトマテリアルだ。
「身の回りにある材料は一般に、“金属”、ガラスやセラミックスなどの“無機材料”、プラスチックやゴムなどの“ソフトマテリアル”に大別できます。ソフトマテリアルの中でも私が得意とするのが、ゼリーに代表されるゲルです。ゲルは生体との相性が良く、人工関節やドラッグデリバリーシステムなど、ヒトの体内で機能させる材料としても注目されています」
わが国では現在、健康長寿社会に向けて高機能なソフトマテリアルの材料づくりが進められている。これらは合成の領域にあたるが、廣井准教授が取り組む構造の知見も必要になる。
「頑丈な材料、予定通りのタイミングで壊れる材料など、合成にはさまざまな目的があります。これらはナノメートルスケールの精密な構造を理解できなければ、設計を進められません。そのような構造を計測により明らかにすることが私の役割ですが、既存の装置では困難な領域もあるため、装置そのものを開発しています」
世の中の森羅万象を数理モデル化し
俯瞰的視点から社会システムをアップデートする
理工学術院 和佐泰明准教授
理工学術院 和佐泰明准教授 撮影場所:西早稲田キャンパス
理工学術院の和佐泰明准教授の専門は、制御工学。電力、経済、生命、ロボティクスなど幅広い領域に、システム制御や数理工学の視点からアプローチする、異分野融合理論の研究者だ。
「インフラや機械、金銭の授受、人間の行動など、私たちの社会はさまざまな現象で溢れています。この目に見えるシステム(Physical System)と同時に、AIやIoTなど実世界そのものを支えるテクノロジー(Cyber System)も存在する。両者から構成される“世の中”を“Cyber-Physical Human Systems(CPHS)”と捉え、その制御設計を探求することが、私の大きな目的です」
PIのニーズに沿った
テーラーメード型の支援プログラム
今回、3名の若手研究者が採択されたPI飛躍プログラムは、早稲田大学が2022年に新設した制度だ。PIの研究内容は独創的であるがゆえに、必要となる支援の形もそれぞれ異なる。それぞれのニーズに対し適切な支援をテーラーメード型で受けられることが、同プログラム最大の特徴といえるだろう。
研究者の成長モデルと本プログラムの位置づけ(イメージ)
(学内の方はこちらへ ⇒ https://waseda-research-portal.jp/research-fund/early-stage-pi/)
プログラムの対象は、博士学位取得後15年以内が原則。採択されると、研究環境整備などに充てることを想定した研究促進費が助成され、他の研究費との相乗効果を発揮できる。また、アドバイザー数名から成るチームにより、国内外の研究ネットワークの拡大、国際共同研究の企画・提案など、さまざまなアドバイスを得ることも可能に。さらに、本学リサーチイノベーションセンター研究戦略セクションURA*による、大型の外部研究資金獲得、産学連携の推進などに向けた伴走支援などサポートも受けられる。
採択された3名の研究者は、今後どのような成果を育んでいくのだろうか。それぞれの活動に期待したい。



