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新たな領域を切り拓く研究者たち

早稲田大学PI飛躍プログラム 2025年度支援対象者の研究内容

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Thu 12 Jun 25

早稲田大学PI飛躍プログラム 2025年度支援対象者の研究内容

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Thu 12 Jun 25

新たな領域を切り拓く、気鋭の研究者たち

早稲田大学では、独立した研究室を主宰する研究者(Principal Investigator/以下PI)を支援する「PI飛躍プログラム」を設置しています。4回目となる2025年度の公募では、13名の研究者より申請があり、4名が採択されました。本記事では、普遍的な知や社会的な価値を創造し、未来へと挑みつづける、それぞれの研究活動を紹介します。

身振りが発話に及ぼす影響を
認知科学の視点から解明する

人間科学学術院 関根和生准教授

人間科学学術院 関根和生准教授 撮影場所:所沢キャンパス

人間科学学術院 関根和生准教授 撮影場所:所沢キャンパス

人間科学学術院・関根和生准教授の研究領域は、マルチモーダルコミュニケーション。言語、身振り、表情、視線など、人間がコミュニケーションで用いる多様な「モダリティー(伝達媒体)」を対象に、心理言語学や認知科学の観点から、メッセージの生成と理解のプロセスの解明を目指している。

「これまでのコミュニケーションに関する研究では、それぞれのモダリティーごとに研究が行われてきました。しかし実生活において私たちは、複数のモダリティーを組み合わせながら情報をやり取りしています。複雑なマルチモーダルコミュニケーションの様相と産出、理解のメカニズムを解明するのが、私の研究の大きな目的。表面的な行動観察にとどまらず、メッセージの生成と理解の背景にある認知的処理や脳内の処理を明らかにしようとしています」

PI飛躍プログラムに採択された研究課題は、「身振りの発話促進機能に関する研究:行動・生理指標からの検討」。関根准教授は海外のさまざまな機関で研究員として活動しながら、特に身振りと発話の関係性の解明に注力してきた。プロジェクトの発端となっているのは、「人はなぜ身振りをするのか」という問いだ。

人間に共通する言語理解のメカニズムを
バイリンガル認知の解析から解き明かす

国際学術院 中村智栄准教授

国際学術院 中村智栄准教授 撮影場所:西早稲田キャンパス

国際学術院 中村智栄准教授 撮影場所:西早稲田キャンパス

2人目の採択者、国際学術院の中村智栄准教授は、心理言語学が専門。人間が母語や第二言語を習得する際の、“文処理”というメカニズムを検証している。

「人間が読んだり聞いたりしながら、言葉の意味を理解するのは、一見当たり前のようで謎に満ちた現象です。日常的な言語理解の背景に潜む、認知のメカニズムを解明するのが、私の研究テーマです。特にバイリンガル認知にアプローチしており、子どもが複雑な言語体系を獲得できる理由、成人の外国語習得が困難な原因、言語理解における言葉と思考の関係性などを解明したいと考えています」

この領域を掘り下げるには、英語・日本語のバイリンガルを対象にした研究が有効だ。PI飛躍プログラムに採択された研究では、早稲田大学の国際教養学部をフィールドにするという。

「バイリンガル研究の中心は、欧州や米国です。しかし英語・スペイン語、英語・フランス語のように、類似した言語を対象にする場合、特定の認知プロセスが明らかになったとしても、それが言語の類似性に起因しているのか、バイリンガル特有の言語処理から派生しているのか、区別がつかないケースが生じます。この点において、英語・日本語のように、類型が異なる言語ペアのバイリンガルを対象がすることは有効ですが、被験者の確保が困難です。両言語のバイリンガルが集まる早稲田大学の国際教養学部という環境を最大限生かし、異なる言語間における情報共有・処理のメカニズムなどを分析するのが、PI飛躍プログラムの研究課題となります」

エネルギー資源の価格形成プロセスを
膨大なデータから解き明かす

政治経済学術院 セドン ジャック准教授

政治経済学術院 セドン ジャック准教授 撮影:早稲田キャンパス

政治経済学術院 セドン ジャック准教授 撮影:早稲田キャンパス

政治経済学術院、セドン ジャック准教授の研究課題は「コモディティ価格報告機関の政治経済学」。現在アプローチしているのは、原油や天然ガスの価格形成プロセスだ。

「原油の価格は、PRAと呼ばれる価格報告機関の評価に大きく影響されます。原油取引の最も重要な指標価格には、北米ではWTI、欧州では北海ブレント、アジアではドバイ原油があります。これらの価格がどのように形成され、どのように市場へと影響を及ぼすのかを解明するのが、私の主な研究テーマです」

エネルギーをはじめ広範な産業に関係する原油価格は、世界経済にも多大な影響を及ぼす。また原油自体に金融商品としての側面もあることから、価格は金融市場のトレンドの影響も受けやすい。こうした複雑なメカニズムの中で、指標価格の形成プロセスを理解することが、セドン准教授の研究目標である。

「指標価格は本来、経済やマーケットの動きが直接的に反映されるのが理想。しかし、指標価格の形成プロセスは、それが反映しようとする市場そのものを形作る役割も果たしています。写真において、写し出されるイメージ(つまり指標価格)が、カメラの設計(すなわち指標の算出方法)によって変わるのと似ています」

PIのニーズに沿った
テーラーメード型の支援プログラム

今回、4名の若手研究者が採択されたPI飛躍プログラムは、早稲田大学が2022年に新設した制度だ。PIの研究内容は独創的であるがゆえに、必要となる支援の形もそれぞれ異なる。それぞれのニーズに対し適切な支援をテーラーメード型で受けられることが、同プログラム最大の特徴といえるだろう。

研究者の成長モデルと本プログラムの位置づけ(イメージ)<br />
(学内の方はこちらへ ⇒ https://waseda-research-portal.jp/research-fund/early-stage-pi/)

研究者の成長モデルと本プログラムの位置づけ(イメージ)
(学内の方はこちらへ ⇒ https://waseda-research-portal.jp/research-fund/early-stage-pi/)

プログラムの対象は、博士学位取得後15年以内が原則。採択されると、研究環境整備などに充てることを想定した研究促進費が助成され、他の研究費との相乗効果を発揮できる。また、アドバイザー数名から成るチームにより、国内外の研究ネットワークの拡大、国際共同研究の企画・提案など、さまざまなアドバイスを得ることも可能に。さらに、本学リサーチイノベーションセンター研究戦略セクションURA*1による、大型の外部研究資金獲得、産学連携の推進などに向けた伴走支援などサポートも受けられる。

採択された4名*2の研究者は、今後どのような成果を育んでいくのだろうか。それぞれの活動に期待したい。

*1 University Research Administrator:
研究者および事務職員とともに、研究資源の導入促進、研究活動の企画・マネジメント、研究成果の活用促進を行って、研究者の研究活動の活性化や研究開発マネジメントの強化を支える業務に従事する人材(拠出:RA協議会WEBサイトhttps://www.rman.jp/ura/
*2 ガーニエ大蔵奈々准教授の記事は後日掲載。
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