Research Theme 研究テーマ
・多身体的協働と共在の生成原理の把握
・信頼・責任・リスク分有の形成メカニズムの解明
・身体性とバーチャル環境における協働の比較
・新たな「つながり」と共同性の再構築
Research Director 所長
Member メンバー
- 扇原 淳 人間科学学術院人間科学部教授
- 大須 理英子 人間科学学術院人間科学部教授
- 加藤 麻樹 人間科学学術院人間科学部教授
- 佐治 伸郎 人間科学学術院人間科学部准教授
- 佐野 友紀 人間科学学術院人間科学部教授
- 竹中 宏子 人間科学学術院人間科学部教授
- 西村 昭治 人間科学学術院人間科学部教授
研究キーワード
研究概要
本研究所は、複数の身体が相互依存的に関与する実践において生成される「共在(copresence)」を、単なる同時存在ではなく、信頼・責任・リスク分有・規範意識が複雑に絡み合いながら動態的につくられるプロセスとして捉え、その生成原理を解明することを目的とする。従来、共同性や社会的信頼は社会の中に組み込まれた制度や規範として存在し、その紐帯原理は人文社会科学分野において多く研究されてきた。しかし現代社会においては、近隣組織の激減および消滅などからわかる通り、他者とのつながりは希薄化し、さらにテクノロジーによる個人化も進行し、「つながり」の基盤そのものが再編を迫られている。他方、こうした紐帯原理は人文社科会学的に研究されることがほとんどで、身体的な反応や分泌物の検証などのいわゆる数値を基に明らかにされていない。また、身体的同期や接触が協力や信頼に影響を与えることは、認知神経科学や心理学において示唆されてきたが、それらが実社会の実働実践の中でいかに統合的に機能するのかは十分に解明されていない。
こうした理論的および方法論的断絶を乗り越えるために、文化人類学による参与観察を基盤としつつ、認知神経科学・実験心理学による測定と実験操作、社会医学によるウェルビーイング評価、安全工学によるリスク構造分析、建築学による空間条件の記述、教育工学による学習過程のモデル化を統合する。これにより自律的かつ多様な個人が、身体的協働、心理的同期、社会的規範を基にどのように相互生成的に結びつくのかを、多層的に明らかにする。
本プロジェクトの対象事例のひとつにユネスコ無形文化遺産に登録されている「人間の塔 (Castells)」がある。それは高度に組織化された多身体的協働実践であるが、これをローカルな文化現象としてではなく、人間の極限的条件下における共在生成の原理モデルのひとつとして扱う。そこからコミュニティのあり方と地域との関連性、バーチャル環境における協働実践との比較にも展開して、人間の協働実践における物理的な身体性の有無や媒介条件の違いが共在の質に与える影響を検証する。他の事例の開拓も視野に入れている。 本研究プロジェクトは、従来の共同体論や集団論を刷新し、流動化する現代社会における新たな「つながり」の基盤を理論的かつ実践的に提示するものであり、教育、地域社会、組織運営、災害対応など多領域への波及効果を有すると考える。