School of Humanities and Social Sciences早稲田大学 文学部

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「第二言語習得研究に見る英語上達の秘訣」文学部 笹山尚子准教授(新任教員紹介)

自己紹介

大学院時代を過ごしたジョージタウン

研究生活の大半をアメリカで過ごしたため、研究関連の話をするのは英語での方が断然得意。でも、日常会話となると日本語の方が自然で、東京にいるときは関東弁、京都に帰ると関西弁を話します。トピックや場面、話し相手によって得意な言語(または方言)が変わるのは私に限ったことではなく、第二言語習得の分野ではよく知られたことです。この第二言語習得研究に興味を持ったのは、自分の英語学習経験に起因するところが大きいように思います。

京都生まれ京都育ちで、初めて「活きた英語」に触れる経験をしたのは、小学校6年生の時でした。当時通っていた小学校から親善大使として派遣され、姉妹校のあるセイシェル共和国を訪れました。その頃は英語がまだ上手く話せず、現地で出会った友達やホストファミリーに日本について話したり、感謝の気持ちを伝えることができないもどかしさを経験し、幼いながらに共通語としての英語を話せるようになりたい、と強く思ったのを覚えています。今思うと、これが人生のターニングポイントで、「ことば」を仕事とすることになったきっかけだったと思います。

セイシェル共和国にて。親善大使として姉妹校を訪れた

ただ、英語上達への道のりは思ったよりも険しく、楽しみにしていた中学校での英語の授業は、蓋を開けてみると文法ばかり。話す練習はそっちのけで文法漬けの毎日に、英語への興味を失いそうになることもしばしば。それでも、文法を勉強するうちに長文が読めるようになるという体験を通して、使える英語力を身につけるには文法も大切なのかもしれないと思い直すようになりました。一方、話す方はというと、英語の授業だけではなかなか上達せず、結局、日本を訪れる留学生との交流や英語圏への留学等、教室の外にコミュニケーションの機会を求めるようになっていきました。そんな中、学部時代に交換留学で訪れたオーストラリアのメルボルン大学で、第二言語習得研究という研究分野に出会い、これまで文法ばかりを勉強していても英語が話せるようにならなかったのには科学的な理由あること、またコミュニケーションの中で文法を教える手法が存在することを知り、とてもワクワクしたのを覚えています。そんな経緯から、自分のように教室の外にコミュニケーションの機会を求めずとも、文法を疎かにしない形で「使える英語力」を養うことのできる英語教育法はないかと模索するようになりました。それが、私が今専門とするTask-Based Language Teaching(タスク中心の言語教授法)との出会いです。

 

私の専門分野、ここが面白い!

「どうしたら英語が話せるようになりますか?」学生に限らず、友人、親戚から担当の美容師さんまで…誰からもよく聞かれる質問です。第二言語習得の分野では、英語習得に欠かせない要素は3つあると言われています。一つ目は、英語でのインプット量を増やすこと。英語で読んだり聞いたりする機会をできるだけ持つことが大切です。赤ちゃんが日本語を習得する過程と同じで、インプットなしで英語を話せるようにはなりません。それも、何か他のことをしながら聞き流すのではなく、しっかり集中して読み聞きすることが英語学習につながります。二つ目は、英語でアウトプットする機会を持つこと。英語で話したり、書いたりすることで、自分が言いたいことと言えることとのギャップに気が付くことができ、それが次の学習に繋がります。三つ目は、英語で会話(インタラクション)する機会をなるべく多く持つこと。話す相手はネイティブスピーカーがいいと思われがちですが、他の学習者との会話も効果があるとされています。誰かと英語で会話することで、自分の言いたいことが伝わるかを試したり、相手からフィードバックをもらうことができるという利点もありますね。

この研究結果を踏まえて、私が自分の教室で実践しているのは、授業を全て英語で行うということです。リーディングから、講義、グループワーク、また授業外の学生とのメールでのやりとりも基本的には英語で行います。英語で専門科目を学ぶのは容易なことではありませんが、その分、得られるものも多いと考えています。英語での授業を通して、第二言語習得・英語教育のエキスパートになるのはもちろん、将来に役立つような「使える英語力」も磨いて欲しいと思っています。

 

プロフィール

京都府京都市生まれ。フルブライト奨学生としてハワイ大学大学院第二言語研究科で二年間学ぶ。米国ジョージタウン大学言語学研究科博士課程修了、Ph.D(言語学)取得。帰国後、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部にて特任助教・特任講師を務める。その後、米国ETS (Educational Testing Service)でアソシエイト・リサーチ・サイエンティスト(常勤准研究員)として、研究活動に加え、新しい英語テストの開発や教員養成に従事。2022年4月より本学文学学術院准教授。専門は第二言語習得研究、外国語教授法、第二言語テスティング。2017年に、タスクデザインに関する論文でPaul Pimsleur賞受賞。

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