School of Humanities and Social Sciences早稲田大学 文学部

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「イスラーム時代のエジプト・シリア史」 文学部 五十嵐大介准教授 (新任教員紹介)

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自己紹介

学生時代に読んだ佐藤次高『マムルーク:異教の世界からきたイスラムの支配者たち』(東京大学出版会、1991年)という本に影響を受け、マムルーク朝(1250~1517年)という中世のイスラーム王朝の歴史研究を志しました。マムルーク朝は、エジプト・シリアというアラブ・イスラーム世界の中心部を支配し、メッカ・メディナというイスラームの二聖地を保護下に置き、十字軍やモンゴルと戦いその覇権を中東イスラーム世界・東地中海世界に広く及ぼし繁栄を築いた巨大な王朝です。この王朝では、騎馬遊牧民出身の軍事奴隷(マムルーク)たちが実力で成り上がり、王朝の支配層を形成し、時に君主の地位にまで上り詰めました。この本を読んでマムルークたちの活躍に魅せられたことが、本格的な研究の道に入るきっかけとなりました。最初の海外旅行先はもちろんエジプトで、マムルーク朝史跡めぐりを堪能しました。大学院時代には青年海外協力隊としてシリアに二年間赴任し、ダマスカスの歴史文書館で古文書の整理作業に従事しました。シリア滞在中、マムルーク朝とオスマン帝国が激突したマルジュ・ダービクの古戦場を訪れた時の興奮は今でも忘れられません。

ダマスカス歴史文書館

ダマスカス歴史文書館

専門分野ここが面白い

近年は、マムルーク朝時代のイスラーム寄進制度(ワクフ)について研究しています。農村や都市の土地や建物を宗教施設や慈善活動に寄進するワクフ制度は、前近代のイスラーム世界各地で都市の発展や学問・文化の振興に寄与し、社会的に重要な役割を果たしたのみならず、現代においても形を変えながら、宗教的慈善を実践する一つの手法として生きています。いわばワクフ制度は、イスラーム社会を見るうえで無視しえない重要なシステムの一つと言えるでしょう。現在は、エジプトの公文書館や宗教財産省に残されている寄進文書を史料とした事例研究を進めています。個別のワクフの事例を寄進者のライフ・ヒストリーと重ね合わせることで、ワクフを寄進するという選択・行為がその人物の生活・生涯とどのように関わっていたのか考察し、社会とその構成員にとってのワクフ寄進のもつ多面的な意味と役割について明らかにしたいと考えています。

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モンゴルを撃退したマムルーク朝君主バイバルス

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ワクフによって運営されたマムルーク朝君主バルクークの学院

プロフィール

東京都出身。中央大学大学院文学研究科東洋史学専攻単位取得退学。博士(史学)。日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センター特任研究員、中京大学非常勤講師等を経て現職。

 

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