自己紹介
学生時代の思い出と言えば、柔道です。大学に入ってからは稽古がきつくて大変な思いをしましたが、道場で大切な仲間に出会えたことに感謝しています。今でも柔道の試合を見ると興奮します。 細かい技術的なことはほとんど分かりませんが、鮮やかな技をかける選手たちに憧れる気持ちは、ずっと変わりません。たまに練習に行くと、体は雑巾のようにボロボロになりますが、心が充実します。礼を尽くしたら、ルールの範囲内で思いっきり相手にぶつかる。完膚無きまでに投げとばされる。本気の時間。そういう純粋で密度の高い瞬間を、研究生活でも追い求めています。
柔道以外では、小学校から高校まで 本をたくさん読みました。一体何を読んで何を得たのかは今となっては判然としませんが、興味のままに片っ端かららん読していたような気がします。自分でも何かを書いてみたいと原稿用紙を手にとったこともありましたが、当時は何を書いたら良いか分からず、すぐに投げ出しました。研究者になることを志してからは、自分なりの文章を書けるようになるために、読んだらノートを取って自分なりに消化する時間を持つように心がけています。
私の専門分野、ここが面白い!
専門は、20世紀の歴史です。アラビア半島の歴史を調べたり、世界全体に影響を及ぼしたイギリス帝国の歴史を考えたりしています。中高生の頃は、正しいとされている歴史像を理解して記憶することに重点を置いていました。今は、そのような歴史叙述が本当に妥当なのかを問い直すという作業をしています。一般に正しいとされている価値観や常識から一歩引いて考えるというのは、とても自由で開放感のある時間です。同時にこれは、歴史的な出来事の当事者たちが残した記録から、証拠に基づいて歴史を再構成するということでもあり、論理的で緻密な作業でもあります。
一例を挙げると、20世紀の中頃から後半、イギリスがまだ帝国だった頃、イギリスは世界中で大規模な文書隠蔽工作を行いました。主に隠蔽されたのは、イギリスが各地で植民地支配をしていた頃の記録です。「イギリス帝国の遺産」作戦Operation Legacyと いうコードネームを与えられたこの政策の結果、アジア、アフリカ、太平洋のたくさんの地域でぼう大な量の行政文書が文字通り灰に帰しました。この文書隠蔽工作については、これまでほとんど知られていませんでしたが、最近になって大量の証拠が見つかりました。今、この新しい証拠を一つ一つ検証しながら、文書隠蔽工作の全容を解明するという研究を進めています。興味があったら、ぜひ読んで感想を聞かせて下さい(http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/03086534.2017.1294256)。皆さんの中から、将来こういう研究を一緒に進められる方が出てくると最高ですね。
アラビア半島の闘牛
プロフィール
青森生まれの滋賀育ちです。大学から東京に来ました。日本国外では、イギリスでも暮らしました。アラビア半島で現地調査は行うことも多いです。引っ越しをたくさんしている流れ者ですが、逆に言えば、色々な立場の人たち、時には悪者とされるような人たちの心性も理解したいという思いを持っています。正義が強調され、それでいて移ろいやすい時代にあっては、こういう姿勢でいるのも悪くない気がしています。授業やゼミで、皆さんのことも聞かせて下さい。教室で会えることを楽しみにしています!