2009年9月博士後期課程入学
金倫廷(KIM, Yun Jeong)さん
(経営専修 経営組織研究指導)
博士後期課程に進学した動機を教えてください
博士課程への進学の動機といいますと、やはり、学問の奥深さを感じたのが最大のきっかけです。研究を進めていくと、ある課題を一つクリアしたと思いきや、またすぐに新たな課題が出てしまいます。自分の仮説を人々に説得させることの難しさや自分の勉強不足を痛感する日々の続きですが、日常の中で突然アイデアが浮かんできて問題解決につながったりもします。「避けられないのなら楽しめ!」という韓国の若者の間で一時期流行ったフレーズがあります。博士課程、つまり研究者の道はまさにその通りだと思います。問題解決プロセスを通じて自分の成長が自分で確認できるという一種の自己満足が博士課程の最大の魅力ではないかと考えています。たとえ、それが問題解決に直結しなくとも、試行錯誤さえも楽しめるというのが博士課程への進学を決めた理由です。
現在の研究分野について教えてください
修士課程では、CSRと企業倫理に興味をもっていたため、「組織アイデンティティと不祥事」というテーマで、企業の不祥事がなぜ起こるかについて、組織アイデンティティの観点から分析し、企業が有している主体的アイデンティティと社会的アイデンティティの衝突によってそれが発生するという自分の仮説にもとづく理論モデル構築に取り組んだ論文を作成しました。しかし、組織アイデンティティ論は欧米では組織論の最も新しい分野として注目を集めてますが、なぜか日本ではほとんど研究されていません。それで、大げさではありますが、組織アイデンティティ論を日本に定着させるという使命をもって研究を進めています。具体的には、主に組織アイデンティティ概念を中心に組織論の最新の動向を把握するとともに、既存の組織論の研究を行っています。まだ博士課程に入ったばかりで文献研究が多いですが、組織アイデンティティ概念の有効性の検討と理論構築に欠かせない作業なので、今は今後行う実証研究の土台作りのために努力しています。
博士後期課程の学生生活はどのような感じですか?
学部や修士課程との大きな違いは、授業がないことです。博士課程は自分がやりたい研究が自由にできるところです。博士課程での生活を振り返ってみると、時間的に制約されることはなくても自分の研究に追われてあっという間に一学期が終わってしまったという感があります。進学を考慮している人に、博士課程の学生は一日どれくらい勉強するかと聞かれたことがありますが、それは自分がどのレベルの研究者になりたいかによって研究に費やす時間もかなり違ってくると思います。つまり、自由である分、自分がしっかりしないと、時間を無駄にしてしまう恐れがあります。いずれにせよ、博士課程は学者の世界で一人の研究者として自立できる力を養うプロセスです。結局は自分次第でその質が決まるということですね。
最後にメッセージをお願いします
人によって博士後期課程に進学する動機をさまざまです。ただ「さらに研究を進めたい」という気持ちはみんな一緒だと思います。どんな進路に決めようとみんな不安を感じているはずです。そこで一言いいますと、やりたいことができるほど幸せなことはありません。進学と就職、選択を行うのは自分自身です。どの道を選ぶにしてもそれは皆さんの可能性を広げる道であるに違いありません。「人生は旅」という例えがあります。目的地に到着するよりも到着するまでの道程を楽しむのが旅の目的ではないでしょうか。私の場合は博士後期課程という学問の道を選びました。もちろんしんどい時もありますが、無限大の可能性に満ちたこの道をこれからもっと楽しんでいくつもりです。