今日は何の日?
はじめまして、LIVS・BBN班の古橋です!
突然ですが、この記事の更新日は2月3日。
2月3日と言えば、節分です!
節分と言えば日本の伝統行事の一つ。「鬼は外、福は内」と言いながら豆を投げるのは有名ですが、豆は鬼を追い出すのに役に立つのだろうかとふと疑問に思いました。そもそもどうして節分の時に豆をなげるのでしょう?特に理由はないのならば、個人的には色と形が似ていて用意しやすいピーナッツを投げたいところです。
気になったらすぐ調べてみよう!早稲田大学の図書館は調べものには最適な場所です。
というわけで、今回は節分について調べてみようと思います!
そもそも節分とは?
まずは「節分」自体について調べてみましょう。
はじめに、中央図書館2階参考図書コーナーに行ってみることにしました。この場所には様々な辞書や事典が置いてあります。 今回はその分厚さと巻数の多さが目を引く『日本国語大辞典』を利用することにします。早速読んでみましょう。
【節分】せつぶん
①季節の変わり目。四季それぞれの季節の分かれる日。立春、立夏、立秋、立冬の前日をさす。せちぶ。せちぶん。
②特に立春の前日。四季のうち、冬から春になる時を一年の境と考えた時期があり、大晦日(おおみそか)と同類の年越行事が行なわれる。近代はこの夜、ヒイラギの枝にイワシの頭を刺したものを戸口にはさみ、節分豆と称して、煎った大豆をまいて、厄払いの行事を行なう。せちぶ。せちぶん。《季・冬》
『日本国語大辞典』「節分」の項目より
大変です、いきなりとんでもない事実が発覚しました。
2月3日以外にも節分は存在しました!
「特に立春の前日の」ということですので2月3日のみが節分だと認識しても問題はないでしょうが、これは驚きの事実です。また、柊の枝に鰯の頭を刺したものを飾るという文化もなんとなく聞いたことがありますが、私は実際にしたことはありません。一体何の意味があるのでしょうか?後ほど調べてみましょう。
続いて、『年中行事大辞典』で調べてみます。
『年中行事大辞典』には節分について数ページにわたり書かれていましたが、読み進めていくと気になる一文を発見しました。
平安時代の宮廷行事として年頭にあたって邪気や疫鬼を追い払う行事として知られているのは、古代中国にその起源をもつ十二月大晦日の夜の追儺の行事であった。
『年中行事大辞典』「節分」の項目より
節分の原点は追儺(ついな)というようです。追儺という行事自体が初耳だったのですが、みなさんはどうでしょうか?年中行事大辞典には追儺についてもちゃんと詳しく書かれていました。
追儺とは、疫病を駆逐するために古くから中国で行われている儀式のこと。方相氏と呼ばれる呪師が専用の衣装を身にまとい、百官を率いて疫鬼を迫ったそうです。日本でもこれが取り入れられ、平安時代の宮中でも大舎人を方相氏として大みそかに行われました。しかし平安時代末期から鎌倉時代・室町時代にかけては異装の方相氏のことを鬼だとみなして葦の矢で追い払う形になったといいます。
追儺という形ではありますが、節分は平安時代から行われている長い歴史をもつ伝統行事だったのですね。
なぜ豆を投げるの?
WINEで「節分」「豆まき」「鬼は外、福は内」などとキーワード検索をかけてみましたが、真相にたどり着けそうな本はでてきません。
こういうときは早稲田大学の学術情報検索から「ジャパンナレッジ」を利用してみましょう!第2回の「成人式いまむかし」の記事でも大活躍でしたが、今回も活躍してもらおうと思います。
「豆撒き」で検索をかけると5件ヒットしましたが、今回は1番上の『日本大百科全書』を見てみましょう。
*「ジャパンナレッジ Lib」の検索画面より
読んでみると気になる文章を発見しました!
食べ物を撒き散らす行為は散供(さんぐ)といって、下級の神霊に供物を供える一つの方法であったから、豆に限ったことではなく、また節分だけのことでもなかった。
『日本大百科全書』「豆撒き」の項目より
そもそも散供として食べ物を投げることが重要な行為であったようです。
これは推測ですが、投げやすい大きさであり、投げてもいいくらいには価値が低く、量のあるものとして豆が選ばれたのではないでしょうか?
食べ物を投げること自体に意味があるのならば、ピーナッツを投げても鬼を追い払えるかもしれませんね…。
また、とある新聞記事にも気になる文章が書かれていました。
新聞記事の検索の仕方は、
WINE→新聞一覧(画面右上)→国内新聞カテゴリー別リスト→好きな出版社を選ぶ
と、することで検索できます。
WINEの画面右上の新聞一覧をクリック(オレンジで囲まれた部分)
↓
目録一番上の国内新聞カテゴリー別リストをクリック
↓
今回は朝日新聞の記事データベース「聞蔵IIビジュアル」を選択します。
↓
*朝日新聞記事データベース「聞蔵IIビジュアル」の検索画面より
このページにまでくることができれば、準備万端です!
キーワード検索に「節分&由来」と入れて探すこと数分……役に立ちそうな記事を発見しました!
*朝日新聞記事データベース「聞蔵IIビジュアル」の検索画面より
2007年2月2日朝刊「節分の由来知ろう 豆をまく・イワシやヒイラギ…子どもらに「伝授」」、というタイトルの記事です。早速読んでみると以下のように記載されていました。
「鬼」は、邪気や災いの象徴だ。「豆」は一説には「魔滅」という意味が込められているという。「いわしを焼いたにおいで鬼を家に近づけさせません。ヒイラギのぎざぎざの葉っぱは鬼の目を突くと言われています」と坂本さん。
「節分の由来知ろう 豆をまく・イワシやヒイラギ…子どもらに「伝授」」『朝日新聞』2007年2月2日朝刊より
魔滅と豆の音が似ているから豆を投げる
と、いうことでした。あくまでこれは一説ではありますが、こういう理由であるとピーナッツを投げても鬼は追い払えなさそうですね……。
そして、鰯や柊にもちゃんと意味はありました。においを利用したり目を狙ったりとは、なかなか邪道です。鬼とはそれほど恐ろしく強い存在だったということでしょうか。
漢字から意味は推測できますが、せっかくなので魔滅についてジャパンナレッジを利用して調べておきましょう。
【魔滅】
悪魔のようなしわざで滅ぼすこと。また、魔道のために滅びること。
『日本国語大辞典』「魔滅」の項目より
なんだか物騒な単語ですね…。
「鬼は外、福は内」はいつから言っているの?
豆を投げながら「鬼は外、福は内」と言うのは有名ですが、いつから行われているのでしょうか。
平安時代の追儺の段階では豆を使ってはいなさそうでし、「鬼は外、福は内」とも言っていなさそうです…。
参考図書コーナーに再び戻り、今度は先ほどとは違う『年中行事辞典』を読んでみます。
まずは「節分」で調べてみました。節分についてやはり詳しく書かれていましたが、関連単語として「豆打」があったのでそちらも見てみましょう。
立春を迎えるのに先立ち、節分の夜、大豆を打ちつけて邪鬼を追い払う行事
『年中行事辞典』「豆打」の項目より
と書かれていました。豆撒きと同義と考えてもよさそうですね。さらに「豆打」の欄を読み進めていくと、
臥雲日件録 文安4年(1447)12月22日の条には「明日立春、故及昏景家毎散敖豆、因唱鬼外福内四字」とある(下線強調筆者)
『年中行事辞典』「豆打」の項目より
との文を発見しました。
これは自分の目で確かめてみないとと思い、早速WINEで「臥雲日件録」と検索をしました。
すると数冊ヒットしました。いずれも瑞谿周鳳という室町時代の人物による書物のようです。
かなり古いもののようで、翻刻されたもの(古文書など崩し字で書かれた文献を読みやすいように、内容はそのままに楷書で書き改めたもの)でないと読めそうにないため、 今回は東京大学史料編纂所が刊行している、大日本古記録シリーズの『臥雲日件録抜尤』を読んでみることにします。
早速、中央図書館で所蔵している研究書庫に行ってみましょう!
地下の研究書庫には基本的に荷物は持ち込めませんので、ロッカーやかごを利用しましょう。入り口で学生証を提示すると通行証としてバッジをもらえます。
WINEで調べた配架場所へ行くため、中央図書館地下1階の研究書庫に行きます。
地図を頼りに歩くこと数分……お目当ての場所につきました!
圧倒的大日本古記録!!!
大日本古記録とは、各時代の貴重な古記録を史料としてまとめたシリーズなのですが、この数には驚きです。日本にはこんなにもたくさんの貴重な古記録があるのですね。
他の史料も気になりますが、今回探しているのは『臥雲日件録抜尤』です。巻数順にちゃんとならんでいるので迷うことなくお目当ての本が手に入りました。
早速中を見てみると、各ページの端に時代が記されていたので想像よりも簡単に文安4年12月22日が記載されているページを見つけることができました!
書かれている内容を抜粋すると以下の通り。
廿二日、明日立春、故及昏、景冨毎室散敖豆、因唱鬼外福内四字、盖此方驅儺之樣也、
『臥雲日件録抜尤』(大日本古記録 / 東京大學史料編纂所編). 岩波書店, 1961, p.22より
『年中行事辞典』に記されていたように、「明日立春、故及昏、景家毎散敖豆、因唱鬼外福内四字」の一文が確かにあります!欄外に、書かれている内容の重要な事項が要約されていますが、そちらを見ると、
立春前夕焼豆ヲ室内ニ撒キ鬼ハ外福ハ内ト唱フ
『臥雲日件録抜尤』(大日本古記録 / 東京大學史料編纂所編). 岩波書店, 1961, p.22より
とあり、どうやら「鬼は外、福は内」で間違いないようです。豆を投げながら「鬼は外、福は内」という節分の風習も、少なくとも室町時代からは行われていたという、長い歴史があるのですね。
節分を音で楽しむ
「節分」という単語でWINEキーワード検索をしているとき、興味深い録音資料を見つけました。
『効果音大全集[録音資料]:27:デジタル最新録音&マスタリングによる:祭礼・祭事・行事』
「そういえば録音資料は試してみたことがなかったな…」と思い、せっかくなので利用しに行くことにしました!
録音資料は中央図書館4階AVルームで利用することができます。
早速入ってみましょう。入り口から見たAVルームの様子がこちら。
「あれ?どこで録音資料が聞けるの?」と思った方、ご安心ください。
奥に進むと……
たくさんの再生可能ブースがあります!
事前にWINEを使い、利用したい資料の請求番号を調べておきましょう。申込票として置かれている黄色い紙に必要事項を記入してカウンターに渡すだけ!
申込票・学生証と引き換えに資料と座席札を受け取れます。指定されたブースで利用しましょう。
利用の仕方や再生機器の使い方はちゃんと説明書がおいてあるのでご安心ください!説明書通りに再生機器を準備するとこんな風になります。
『効果音大全集[録音資料]:27:デジタル最新録音&マスタリングによる:祭礼・祭事・行事』のトラック2:節分を再生してみると、豆まきを楽しむ人々の声が聞こえてきました!
このAVルームでは音声資料のほかに映像資料も利用できるので、みなさんも一度試してみてくださいね。
まとめ
- 節分とは立春・立夏・立秋・立冬の前日のことを指し、立春の前日(2月3日)が一般的である。
- 節分では豆を投げ、柊の枝に鰯の頭を刺したものを飾って鬼を追い払う。
- 節分は中国で行われた追儺から由来している。
- 下級の神霊に供物を供える一つの方法として食べ物が撒かれた。
- 「鬼は外、福は内」は文安4年12月には言われている。
以上のことが今回わかりました!
将来子供や孫に教えて、節分が何十年先にも正しく受け継がれていくといいですね。
今回使用したツール
- 学術情報検索 https://waseda-jp.libguides.com/imas
- ジャパンナレッジ https://waseda-jp.libguides.com/az.php?q=LGaz47316655
- WINE https://waseda.primo.exlibrisgroup.com/
- 聞蔵IIビジュアル https://waseda-jp.libguides.com/az.php?q=LGaz47316626
今回のお宝(参考資料)
- 『日本国語大辞典第2巻(さ‐の)』(小学館国語辞典編集部編、東京、小学館、2006)
- 『年中行事大辞典』(加藤友康編、東京、吉川弘文館、2009)
- 『年中行事辞典』(西角井正慶編、東京、東京堂出版、1958)
- 『朝日新聞』 2007年2月2日朝刊 東京東部・1地方
- 『臥雲日件録抜尤』(東京、岩波書店、1961)
- 『効果音大全集[録音資料]:27:デジタル最新録音&マスタリングによる:祭礼・祭事・行事』(東京、キングレコード1993)