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電池人材育成の普及に、早稲田大学が参画
電池人材育成の普及に、早稲田大学が参画
Thu 16 Oct 25
電池人材育成の普及に、早稲田大学が参画
Thu 16 Oct 25
「バッテリー人材普及ネットワーク(BATON)」の発足発表会が開催
2025年10月14日(火)、早稲田大学が参画する「バッテリー人材普及ネットワーク(BATON)」の発足発表会が行われました。BATONは、蓄電池産業の人材育成を目的とした、産学官連携による新たな枠組みです。早稲田大学は一般社団法人電池サプライチェーン協議会(BASC)と連携し、2025年に協力講座「電池工学概論」を開講。BATONでは同講座を先行事例とし、他大学への展開を目指す方針です。
本記事では、BATON発足発表会の一部をレポートします。
※各登壇者の発言は、抜粋や要約によるものです
需要が高まる蓄電池産業と、次世代人材育成の重要性
この日、発足が宣言された「バッテリー人材普及ネットワーク(Battery Advancement Talent Organization Network:BATON)」は、脱炭素社会・デジタル社会実現を支える次世代の先進人材の育成を広く普及・啓発し、日本の電池産業の発展に貢献する、産官学が連携する枠組みです。
発足発表会の冒頭では、一般社団法人 電池サプライチェーン協議会(BASC)で会長を務める好田博昭氏が、BATON発足の背景を述べました。
「日本政府が2022年8月に策定した『蓄電池産業戦略』では、2030年までに国内で150GWhの電池製造基盤を構築する官民目標が掲げられました。その実現には、約3万人の電池人材が必要と見込まれています。電池産業の集積地である関西では、先行して『関西蓄電池人材育成等コンソーシアム』を立ち上げ、産学連携による教育プログラムを制作いたしました。学生が電池産業に興味関心を持てるよう、さまざまな工夫を取り入れた結果、電池教育実施校は関西の高校・高専を中心に30校へと拡大。受講者は過去2年間累計で約1,600名に達しています。関西以外の地域からもプログラム普及の強い要望を受け、今回BATONを立ち上げる運びとなりました」(好田氏)

一般社団法人 電池サプライチェーン協議会 会長 好田博昭氏
世界的に需要が高まる電池は、資源、部材、設備、電池、リユース、リサイクルに至る、裾野が広い産業です。好田氏は「理系・文系を問わず、幅広い人材が活躍できるフィールドがある」と、人材育成の意義を強調します。
「BATONでは、各領域のプロフェッショナルの方に参画いただくことで、より充実した教材および教育プログラムの制作につなげたいと考えています。BATONの事務局はBASCと電池工業会(BAJ)が担い、取り組みに主体的に参画する幹事企業は、国内の主要電池メーカーであるGSユアサ、トヨタバッテリー、パナソニックエナジー、プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)に担っていただきます。また国立高等専門学校機構は、関西蓄電池人材育成等コンソーシアムの取り組みより、教材制作や教育プログラムの普及を共に進めていただきました。そして、日本の電池研究をリードする大学の先生方にも、今後ご参画いただく方針です」(好田氏)
BATONに参画する大学の一つが、早稲田大学です。本学は2025年度、BASCとの協力講座「電池工学概論〜日本の電池産業の未来を考える〜」を導入。4月から7月にかけ、産官のさまざまな関係者を招致する形で、全14回の講義を実施しました。
「早稲田大学との協力講座では、電池サプライチェーン全体を俯瞰したものづくりの現在と今後の進化、世界を俯瞰したビジネス構造の解説など、幅広い視野でのプログラムが実現しました。この先行事例を一つのモデルケースとし、今後他大学への展開を進めていきたいと考えております」(好田氏)
発表会ではその後、BATON事務局を担う一般社団法人 電池工業会会長の只信一生氏、BATONを支援する独立行政法人 国立高等専門学校機構 学務統括参事の小林幸人氏、経済産業省 商務情報政策局長の野原諭氏が、それぞれコメントを述べ、今後の期待や展望が共有されました。
BATONに貢献する、早稲田大学の分野横断型教育
早稲田大学からは、創造理工学部長・創造理工学研究科長の所千晴教授が登壇し、本学における蓄電池人材育成について報告。2021年の「Waseda Carbon Net Zero Challenge」宣言以来、最先端研究や人材育成など、全学体制でカーボンニュートラル社会の実現に取り組んでいることが説明されました。

早稲田大学 創造理工学部長・創造理工学研究科長 所千晴教授
「早稲田大学は、社会に役立つ人材の教育、社会に役立つ研究の推進を、創立以来のミッションとし、高等教育を担ってきました。『研究の早稲田』『教育の早稲田』『貢献の早稲田』を実現すべく、現在はさまざまな学部を横断する形での改革にも注力しています。なかでも『教育の早稲田』においては、『カーボンニュートラル社会研究教育センター』を設置し、学術院横断型の『カーボンニュートラル副専攻』を構築することで、研究人材や学生を結集。カーボンニュートラルにおいても重要な位置づけにあるバッテリー人材の育成は、本学の方向性と一致することから、『電池工学概論〜日本の電池産業の未来を考える〜』の開設が実現しました」
自身も「電池工学概論」の教壇に立った所教授は、2025年度の成果を振り返ります。
「学科を超えて単位を取得できるプログラムにより、さまざまな学生が参加。各領域のトップの方々による講演、先輩社員との語り合い、グループワークなど、多彩な形式の授業が行われました。特に印象的だったのは、ものづくりの現場に目を輝かせる学生の姿が見られた工場見学です。アンケートの結果からも、多くの項目で好意的な反応が見られており、早稲田大学としても好調なスタートを実現できたと考えております」(所教授)

早稲田大学では2022年より学部副専攻として「カーボンニュートラルリーダー」制度を、2024年からは大学院でカーボンニュートラル社会の実現に資する副専攻を導入し、企業との連携科目を展開している
今後、さまざまな企業、教育機関の参画が予定されるBATON。早稲田大学の先行事例が全国へと展開され、人材育成を通じて電池産業が活性化することが期待されます。

左から好田氏、只信氏、小林氏、所教授、野原氏
撮影=幕張メッセ