Waseda Center for a Carbon Neutral Society早稲田大学 カーボンニュートラル社会研究教育センター(WCANS)

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学生と環境省、環境先進企業が対話

  • #ジェネラル

Fri 17 Jul 26

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Fri 17 Jul 26

2026年6月24日、早稲田キャンパス8号館にて、シンポジウム「未来世代と環境先進企業との対話」を開催しました。本学カーボンニュートラル社会研究教育センターと環境省の主催による同シンポジウムには、三菱UFJフィナンシャル・グループ、サントリーホールディングス、積水ハウスが参加。環境領域における企業の先進的な取り組みが共有されるとともに、学生の質問に答えるパネルディスカッションも行われました。本記事では、当日のレポートをお届けします。

※登壇者の発言は、抜粋や要約によるものです。

総合的視点が求められる、これからの環境施策

早稲田大学8号館106教室で開催された、全学生が参加可能である今回のシンポジウム。「エコ・ファースト企業」として環境省より認定される企業と、未来世代である学生との間で、「今後どのような取り組みが必要か」についてコミュニケーションを図ることを目的として企画されました。

冒頭では早稲田大学の田中愛治総長が登壇。挨拶とともに本学の方針を述べました。

田中総長「カーボンニュートラル社会の実現には、自然科学分野のみならず、人文・社会科学に至る総合知が求められます。環境・社会・経済の総合的な視点から、あらゆる国の社会問題と世界規模の自然環境問題を、同時に解決しなければなりません。本学は総合大学としての強みを生かし、文理の枠組みを超えた研究力を結集することで、カーボンニュートラルを目指す研究・教育・社会貢献を実践しています。本日は、我が国のカーボンニュートラルの実現をリードする環境省ならびに、先進企業の皆さまにお集まりいただきました。学生の皆さんには、多いに学び、対話をしていただきたいです」

早稲田大学 田中愛治総長

早稲田大学 田中愛治総長

つづいて、環境省 事務次官の上田康治氏が登壇。「地球環境保全と企業・未来世代への期待」をテーマに基調講演を行いました。上田氏は脱炭素先行地域の選定、GX製品・サービスの需要創出など、環境省の取り組みを例に、「サステイナブル・デベロップメント(持続可能な開発)」の重要性を説明します。

上田氏「企業・未来世代への期待という観点に立つならば、環境を守りながら経済や社会も良くしていく『サステイナブル・デベロップメント』は重要です。温室効果ガス削減とエネルギー対策は表裏一体の関係にありますし、産業部門のみならず、家庭や地域、中小企業を含む排出量削減も欠かせません。総合的なアプローチで必要なのは、参画する関係者のメリットです。法律や規制だけでなく、ビジネスやマーケットの観点を取り入れることで、隅々にまで施策が行き届き、課題解決は前進します」

また上田氏は、サーキュラーエコノミー(循環経済)やネイチャーポジティブにおいても、総合的視点が重要であることを伝えました。

上田氏「サーキュラーエコノミーでは、単一的な環境施策にとどまらず、資源の海外流出の規制、スクラップヤード周辺の近隣住民への影響など、さまざまな観点を取り入れることで、多くのステークホルダーより賛同を得ることができます。ネイチャーポジティブでは、『自然共生サイト(※)』の事例を募ったところ、たくさんの企業の参画がありました。これからの環境政策には、企業による経済活動をはじめ、多様なステークホルダーの視点を取り入れることがポイントになります。環境省は、環境・社会・経済の総合的視点から、関係各省や企業、地域との連携を通じ、各種の目標を達成していきます」

※ネイチャーポジティブ実現に向け、企業の森や里地里山、都市の緑地など民間の取り組みなどによる生物多様性を増進する活動計画を、国が認定する制度

環境省 事務次官 上田康治氏

環境省 事務次官 上田康治氏

企業の先進事例から学ぶ、課題解決の視点

カーボンニュートラル社会研究教育センター(WCANS)で所長を務める林泰弘教授は、早稲田大学の取り組みを紹介しました。

林教授「WCANSは、研究・教育・社会貢献の三位一体の視点で、キャンパスおよび社会全体のカーボンニュートラルに取り組んでいます。次世代人材の育成においては、全学部の学生が参加できる『カーボンニュートラル副専攻』で、実践型かつ異分野融合の教育を推進しています。また、キャンパスでは電力、ガス、省エネの各数値目標を立て、カーボンニュートラルに向け取り組むとともに、学生のアイデアコンテストを実施し、大学を舞台にカーボンニュートラルの実現策を考える機会を創出しています。そして私たち研究者は、太陽光発電の余剰エネルギーを公共交通で効率的に活用し、クレジット売却により自治体が財源を得る仕組みづくりを、宇都宮市をフィールドに試みてきました。内閣府や環境省、自治体と大学が連携する同プロジェクトでは、若手の研究人材も活躍中です」

早稲田大学カーボンニュートラル社会研究教育センター所長 林泰弘教授(理工学術院)

早稲田大学カーボンニュートラル社会研究教育センター所長 林泰弘教授(理工学術院)

「エコ・ファースト企業による取組紹介」では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、サントリーホールディングス、積水ハウスの3社が、環境分野における先進事例を紹介。三菱UFJフィナンシャル・グループの村松美名子氏は、カーボンニュートラルに向けたグループの取り組みを伝えました。

村松氏「金融機関が取り扱うお金は、単体で脱炭素を実現するものではありません。多様なお客さまと一緒に、融資や支援を通じてアプローチしていくのが、MUFGが考える社会課題の解決です。2021年のカーボンニュートラル宣言では、当社自らのGHG排出量ネットゼロとともに、投融資ポートフォリオのGHG排出量ネットゼロの達成も宣言しました。また、気候変動には“緩和”のみならず、被害を最小限に抑える“適応”の視点も重要です。当社は気候変動適応ファンド『GAIA気候ローンファンド』を通じ、新興国・途上国における気候変動“適応”支援などに取り組んでいます。私たちは企業である以上、利益創出も不可欠です。社会的価値と経済的価値をつなぎ、MUFGとお客さまの企業価値を相乗的に高めていく方針です」

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部サステナビリティ企画室上席調査役 村松美名子氏

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部サステナビリティ企画室上席調査役 村松美名子氏

サントリーホールディングスの北村暢康氏は、サーキュラーエコノミーの取り組みを紹介しました。

北村氏「自然の恵みを商品という価値に変え、社会へと提供するサントリーは、サステナビリティ経営の実践が企業理念の実現につながるといっても過言ではありません。サーキュラーエコノミーでは使用済みペットボトルを新たなペットボトルに再生する『ボトルtoボトル』水平リサイクルに注力しており、新規化石由来原料の使用ゼロを目指しています。自治体や学校などとの連携にも取り組んでいますが、最も重要なのは、この資源循環ループのカギを握っているのが消費者の皆さまご自身であると、気づいていただくことなのです。そのため、メディアでのリサイクル訴求、ブランド横断によるラベルでの分別促進訴求にも、私たちは積極的に取り組んでいます。企業理念が商品・ブランドに昇華するサステナビリティ経営の実践により、環境・社会・経済がつながりながら向上する。そうした「三方よし」の実現にサントリーは貢献できればと考えております」

サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進部シニアアドバイザー 北村暢康氏

サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進部シニアアドバイザー 北村暢康氏

積水ハウスの井阪由紀氏は、ネイチャーポジティブの取り組みについて共有しました。

井阪氏「生態系全体の健全性は大きく低下していますが、自然資本なくして私たちの生活や企業活動は成り立ちません。生物多様性の損失を止め、反転させるネイチャーポジティブに対し、企業のアプローチも活発化しています。こうした中で積水ハウスが推進しているのが、『5本の樹』計画です。お客さまの庭に在来樹種を植え、住宅と里山を緑のネットワークでつなぐ取り組みであり、都市部における生物多様性の回復効果も実証され始めています。さらに、緑がもたらすウェルビーイング効果など、環境価値を住まい手の価値に変えることにも挑戦していきます」

積水ハウス株式会社 業務役員・環境推進部長・環境マネジメント室長  井阪由紀氏

積水ハウス株式会社 業務役員・環境推進部長・環境マネジメント室長  井阪由紀氏

未来世代の疑問に、エコ・ファースト企業が応答

後半のパネルディスカッションは、「エコ・ファースト企業 VS 未来世代」がテーマ。ファシリテーターを法学学術院 森本英香教授が務め、参加学生の率直な質問に、登壇者が答えました。

質問:エコファーストを導入することで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

井阪氏「認証のロゴマークを名刺やパンフレットに載せ、企業としての取り組みを皆さまに訴求することができます。また認証がきっかけとなり、さまざまな企業と交流が活発化するため、連携や情報共有につながる点もメリットです」

質問:一般消費者の行動のハードルを下げ、環境へのアクションに巻き込むための工夫を教えてください。

北村氏「BtoC企業にとって、一番の訴求につながるのが商品接点です。例えば当社では、『伊右衛門』のラベルにおみくじの機能を加える工夫を施しています。ゲーム感覚でラベルを剥がすと、実はリサイクルが一歩進むという仕組みです」

質問:顧客ともに社会課題解決に取り組む上で、もしも利益が生まれず、経済的価値につながらない場合は、どうするのでしょうか。

村松氏「考え方は二つあるかもしれません。一つは、MUFGの事業として成立しない場合や、MUFGのビジネスで解決できない課題である場合、寄付やボランティアなどの社会貢献活動として取り組む方向です。もう一つは、時間軸です。短期的に経済的価値につながらなくとも、長い目線で課題解決に向け行動することで、5年、10年先にリターンが生まれる可能性があります」

パネルディスカッションでは、QRコードを通じて質問が寄せられた。パネルディスカッションのファシリテーターは法学学術院 森本英香教授(写真左から2番目)。

パネルディスカッションでは、QRコードを通じて質問が寄せられた。パネルディスカッションのファシリテーターは法学学術院 森本英香教授(写真左から2番目)。

質問:未来世代に期待することを教えてください。

北村氏「サステナビリティに取り組まなくてもよい人や企業、業界、国は、一つとしてありません。ただし個の力だけでは限界が生じます。いろいろな特技を持った人・組織体が知恵を出し合うことで、未知なる課題の解決は前進するはずです。大学で文理の壁を越え、さまざまな関係者を巻き込むアクションは、課題解決の練習となり、社会で必ず役立つでしょう」

村松氏「サステナビリティを特別なものだと思わず、当たり前に考えなければならないテーマと捉えていただきたいです。私自身の究極の目標は、所属するサステナビリティ企画室という部署がいつか必要なくなることです。一人一人が当たり前に取り組んでいれば、本来は特別な部署など必要ないはずで、そうした感覚を、皆さんにも養っていただきたいです」

井阪氏「サステナビリティへの取り組みは、ここ10年が勝負といわれています。一方で日本は、危機感の点では世界との乖離も存在します。学生の皆さんにとって、具体的に取るべき行動を選ぶのは難しいかもしれません。まずは、日常生活にあるもの、例えばお家の電力の由来など、さまざまな興味を育んでいただき、自分ごととして見つめてほしいと思います」

林教授「トップレベルといえる3社の取り組みに触れた皆さんは、世界が少し変わったと思います。この『わかる』というのは、大切な第一歩です。次のステップは、今日の話を友人や家族に『伝える』こと。そして最後に『動く』にチャレンジしてください。自ら見聞きした情報を、自分の感覚を研ぎ澄ましながら整理し、他者に貢献していく。すると将来の人生も、生き生きと輝くものになると思います」

撮影=早稲田キャンパス8号館106教室

撮影=早稲田キャンパス8号館106教室

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