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「暑すぎる」「寒すぎる」…不満を解消する空調制御の実現で新指標 早大と三菱電機 など国際共同研究

  • #研究活動

Mon 06 Jul 26

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Mon 06 Jul 26

オフィスが「暑すぎる」「寒すぎる」といった不満は、多くの職場が共有する課題だ。社員が快適に働ける環境づくりの重要性は増している。早稲田大と三菱電機は、デンマーク工科大とシドニー大と共同で、人間の感じ方の違いを反映した空調制御を目指している。
その基盤となる新たな温熱環境指標の開発について、建築環境学の第一人者として知られる早大の田辺新一教授と、三菱電機で事業を主導する研究開発本部プリンシパル・エキスパートの浮穴朋興氏に話を聞いた。
※本記事はDOW JONES 読売新聞 Proに掲載された記事を転載したものになります。

インタビューに答える三菱電機研究開発本部の浮穴氏(左)と早大の田辺教授(東京都新宿区で)Photo:読売新聞社・竹下真介撮影

インタビューに答える三菱電機研究開発本部の浮穴氏(左)と早大の田辺教授(東京都新宿区で)Photo:読売新聞社・竹下真介撮影

■人体情報や外気温を利用

――オフィスの温熱環境をテーマに、共同研究を始めた背景は何か。

田辺氏 「省エネを実現するだけでなく、快適性や健康性を維持することも目指している。10年ほど前に三菱電機から、どのように実現したらいいかと相談を受けたことがきっかけだ」

浮穴氏 「空調業界は長年、省エネ性能を競ってきた。各社の技術が一定の水準に達すると、差別化が難しくなった。加えて、快適性という新たな競争軸に取り組みたいとの思いが、共同研究につながった」

――快適性を向上させる中で、新たな指標を作ろうとしているのはなぜか。

田辺氏 「人が暑い、寒いと感じる要因は主に六つある。物理的要素である空気の温度と壁や窓、天井からの放射。気流に湿度。人側の要素である着衣量と活動量だ。これらから算出した快適さを表す指標として、PMVが世界各国で活用されている」
「PMVは平均的な在室者を想定して設計されており、個々人の違いは反映されにくい。実際には暑がりの人もいれば、寒がりの人もいる。男性と女性でも代謝量が変わるので、同じ環境でも感じ方は異なる。個人やグループの特性や状態に合わせて、空調を制御する指標が必要だと考えた」

浮穴氏 「神奈川県鎌倉市に建設した、当社の関連技術の実証棟『SUSTIE(サスティエ)』で、従業員を対象に調査を実施したところ、以前のオフィスでは温熱環境に約6割が不満を持っていたことがわかった。PMVに基づく制御を導入すると、不満は2割に低下した。作業内容なども異なるため、個々の状況を追っていかないとこれ以上の不満を解消することは難しいと思っている」

――指標の開発に向けて、昨夏からサスティエで三菱電機の社員約130人を対象に実証実験を続けている。

田辺氏 「新たな指標で重視しているのは、人側の情報を活用することだ。熱画像センサーを使い、個人が特定されない形で皮膚の表面温度を測定したり、動きから代謝量を推定したりしている。一部の方に人体の皮膚温を再現する『サーマルマネキン』も使って環境を詳細に評価している。実際に働いている人たちの状態を指標に反映させることで、より多くの人に適した環境づくりが可能になる」

浮穴氏 「人側の情報や外気温を活用して設定条件を算出し、空調制御の検証を進めている。PMVよりも不満を感じる人を減らせることがわかってきた」

サーマルマネキンの説明をする田辺教授(東京都新宿区で)= Photo:読売新聞社・竹下真介撮影

サーマルマネキンの説明をする田辺教授(東京都新宿区で)= Photo:読売新聞社・竹下真介撮影

■快適性と生産性

――新指標はどのように活用していくのか。

浮穴氏 「実証実験を重ねながら、順次成果を発表していきたい」

田辺氏 「将来的には指標から、個人やグループの行動データや好みなどに応じて空調や照明の最適な条件を提案するような仕組みを構築することも考えている」

――オフィスの快適性は、生産性にどのように影響するのか。

田辺氏 「過去にコールセンターで行ったわれわれの研究では、快適温度から1度高くなるごとに電話を受ける件数が2%減ることが明らかになっている。快適性は、生産性を支える重要な要素だ」

――大学と企業が連携する意義をどのように考えているか。

浮穴氏 「カーボンニュートラルやウェルビーイングなど、社会課題は多様化、複雑化している。早大と三菱電機は包括連携協定を結び、複数の研究を進めている。互いの持つ知見やネットワークを生かせば、より大きな成果につながるはずだ」

――今後の展望は。

浮穴氏 「利用者が特別なことをしなくてもオフィスが快適になるのであれば、提供できる価値は大きく変わる。研究成果を市場に届けやすい形にしたい」

田辺氏 「ビル単体の快適性向上にとどまらず、周辺環境やコミュニティ、都市へと対象を広げていくことが重要だ。三菱電機とともに取り組みを発展させたい」

田辺新一氏(たなべ・しんいち)

 1987年早稲田大大学院博士課程修了、工学博士。デンマーク工科大、カリフォルニア大バークレー校、お茶の水女子大助教授などを経て、早稲田大創造理工学部建築学科教授。専門は建築環境学。2025年11月に紫綬褒章を受章。福岡県出身。

浮穴朋興氏(うきあな・ともおき)

 1990年青山学院大理工学部卒、三菱電機入社。コンピューターの電気設計や携帯電話の開発に携わる。2018年から情報技術総合研究所の監視メディアシステム技術部長などを歴任し、24年に同研究所副所長。26年4月から研究開発本部プリンシパル・エキスパート。神奈川県出身。

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