Waseda Center for a Carbon Neutral Society早稲田大学 カーボンニュートラル社会研究教育センター(WCANS)

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「事業創造演習α」受講学生インタビュー

「大学院カーボンニュートラル副専攻」における中核的な科目である「事業創造演習α」を受講した3名の学生に、インタビューを行いました。「事業創造演習α」は企業の第一線で活躍している方を講師として招聘し、企業が実際に抱える社会課題を題材に、講師らとの議論および交流を通して社会的なニーズとシーズへの理解を深め、より実践的な視点からカーボンニュートラル社会実現に向けた事業創造について考察する科目です。「大学院カーボンニュートラル副専攻」および「事業創造演習α」の履修を検討されている方や興味のある方は参考にしてください。

【2025年度現在 連携企業】
みずほフィナンシャルグループ、PwCアドバイザリー合同会社、野村證券株式会社、野村不動産株式会社、デロイトトーマツコンサルティング合同会社、SMBC日興証券株式会社、SOMPOケア株式会社、株式会社大和証券グループ本社

【インタビュー協力学生】

○商学研究科 林 之航さん ○基幹理工学研究科 塩谷 麻紀子さん ○経営管理研究科 齋藤 有さん

■まずは、ご自身の研究内容について教えてください。

林:CEOのアイデンティティが企業のCSR活動やサステナビリティ投資にどのような影響を与えるのかを研究しています。

その関連からカーボンニュートラルにとても関心があります。

研究テーマ名を付けるなら「CEOのナルシシズムが企業のパフォーマンスとCSRに与える影響」です。

塩谷:プライバシーに関連した内容を研究しています。自分のアイデンティティ(個人情報)、具体的には氏名、住所、生年月日などをオンライン上で企業に提示する機会があると思います。

例えばGoogleに自分の情報を登録していて、何かのサービスにログインする時に、Googleと連携してログインすることがあります。しかしそれだとGoogle側に自分がどのようなサービスにログインしたかが分かってしまう。それを問題視して、一企業や政府等に依存しないかたちで自分のアイデンティティを証書付きで示す方法を研究しています。

研究テーマ名を付けるなら、信用できる機関から発行された個人情報・アイデンティティを自分が保持し、電子証書付きで示す技術、「選択的開示の技術について」でしょうか。

齋藤:電気自動車の充電インフラについて研究しています。テーマは「EV充電インフラの業界標準はどのようにして形成されるのか」というものです。

例えば家庭用コンセントの形状が国によって異なるように、EVの充電規格も国ごとに異なり、充電速度にも差があります。現在はアメリカを先行事例に研究を進めています。そこではテスラが新たな規格を開発し、他メーカーにも開放したことで、多くの自動車メーカーがテスラの規格を採用しました。その結果、米国内充電インフラ普及が加速しています。研究では、日本でも同じような現象が起こり得るのか、そして日本のユーザーが求めている利用価値は何なのかを明らかにしようとしています。

商学研究科 林 之航さん

■どのような思いやきっかけがあり、事業創造演習αを受講されましたか?

齋藤:私は経営管理研究科に所属しており、前職はメルセデス・ベンツ日本で商品企画を担当していました。当時は電動化を推進する立場であったことからもカーボンニュートラルに興味がありました。

大学から配信された紹介メールでこのプログラムを知り、履修しました。最初は仕事に活かそうという気持ちで受講しましたが、現在は広い視野でカーボンニュートラルに関わりたいという考えです。

塩谷:情報系を学んでいることもあり、AIやクラウドサービス、データセンターの電力消費が大きくなっている、といったことから環境問題に関心を持っていました。しかし、自分で学ぼうとするといろいろな情報がバラバラに入ってきてしまい、一度体系的に学びたいと思っていたときにこの科目を見付け、企業の視点から話を聞けるならと思い魅力的に感じました。

林:大学からの紹介メールでこの科目を知りました。

CSRを研究していることもあり、サステナビリティ課題を企業がどのように解決しているのかを知る機会だと思いました。また、コンサルティングにも興味を持っており、デロイトトーマツによる講義もあるということで受講しました。

■事業創造演習αを実際に受講されて、どのようなことを感じましたか?

林:企業ごとにサステナビリティの課題に対して違うアプローチをしていることが確認できました。自分の研究では理論が多く抽象的な表現になっていましたが、企業の実践的な取り組みを知ることにより具体的なイメージが沸きました。

塩谷:まず事例についてインプットがあり、その後グループワークでトピックを与えられ、各グループに企業担当者も入ってアドバイスをくれるので、企業の方とコミュニケーションできる機会が多くありました。

齋藤:名刺交換の機会や、施設への招待を提案してくださった企業もあったことから、企業の方々とのコミュニケーションという点で有意義な科目でした。こうした繋がりは授業後の長期的な観点でも価値を持つと考えています。

塩谷:先にレクチャーがあって議論をするのですが、レクチャーの時に自分だったらどうするかを考えながら聞くことで「問題を自分事にする」と言う感覚が得られました。はじめは自分の専門とは異なる分野で、自分の将来に関わる話では無いと思って聞いていましたが、身近になりました。

齋藤:理論と実践のバランスが取れていた点が印象的でした。アカデミアでは理論を前提に議論の抽象度が上がりますが、この科目では実践ベースで具体的な事例を学ぶことができました。

また、情報の鮮度という観点でも魅力的でした。経営管理研究科もケースを扱いますが、その多くは90年代や2000年代が中心で、熟成された事例として活用されています。一方、この授業に関しては最新の事例が扱われ、時には前日に使われたプレゼン資料が翌日の授業で取り上げられることもありました。

また、早稲田のMBAは学術出身の教授と企業出身の教授でバランスが良いことで有名ですが、この授業も同様に早稲田の良さを体現していると感じました。

基幹理工学研究科 塩谷 麻紀子さん

■授業で役立ったことや印象に残ったことを教えてください。

■事業創造演習は、ご自身の研究活動(または仕事)によい影響を与えそうですか?

齋藤:はい、この科目を通じて多角的な視点を養うことが出来ました。私は仕事柄EV推進に携わることで、考えが自動車業界に偏りがちです。この科目では異なる業界の方々からインプットをいただき、視野を広げることができました。私の研究も往々にして視野が偏りがちですが、この授業を経て、俯瞰してテーマを考えることが出来るようになったのは大きな成果だと感じています。特に印象に残っている企業はPwCアドバイザリー様の講義です。自動車業界を含め、カーボンニュートラルを幅広く網羅的に学べた点が印象的でした。

塩谷:野村證券さんによる核エネルギーについて扱った講義があり、原発のライフサイクルコスト等について学びました。

以前SNS等で電気代が高騰したことで、原発を再稼働すれば電気代が安くなるのでは、というのが話題になりましたが、講義で学んでみると原発はそんなに安い発電方法では無いことが分かりました。このことからも自分が見えている範囲ではトータル的なコストは見えていなかったことが分かりました。EVにおいても製造過程でのカーボンエミッション、ランディング時のCO2排出量も含めて考えないといけない、ということから多角的な視点が得られました。その他の講義からもライフサイクルコストは意識するようになりました。

他にも野村不動産さんの講義で、建築において木材を上手く取り入れることでカーボンニュートラルに貢献できるという話も新鮮でした。

林:アカデミアは理論の話が多いですが、企業の実践的な立場・視点を研究に加えることができればより良いと感じました。印象に残ったのは野村不動産さんの講義の中で、目隠しをして触った物が何かをあてるというインクルーシブデザインについて学ぶ機会があり、ダイバーシティという視点でユニークでした。

研究分野はESGのマクロ的な話なので直接的に役立つかは分からないですが、企業の実践事例は役に立っています。

齋藤:もちろん講師の方々も魅力的ですが、共に受講している学生からも刺激を受けました。各学生は異なる研究科から参加しており、最後にグループディスカッションを行う機会があります。各分野の専門家に囲まれた環境で議論できたことは、視野を広げる上で有益でした。

経営管理研究科 齋藤 有さん

■受講してみて、もう少しこうしてほしかったなと思うことはありますか?

林:与えられた課題について、企業の立場ではどのように解決するかの事例をもう少し知りたかったです。

塩谷:1つの分野について1つの企業が講義してくれましたが、同じ分野について複数の企業からのお話を聞いてみたかったです。被るジャンルの話を複数企業から聞けたら比較出来て面白いと思います。

齋藤:非常に満足度の高い科目であることは大前提ですが、多様な人材が集まるクラスであるからこそ、授業後のつながりを継続できる仕組みがあればさらに価値が高まると感じました。

■「事業創造演習α」の受講を検討されている方へのメッセージをお願いします。

塩谷:企業の方や受講生にも社会人の方がいて関ることができたりなど、自分の視点を広げるという意味で受講すると良いと思います。

林:研究者を目指す場合でも受講をお勧めしたいです。この科目は企業の方と直接コミュニケーションが取れる機会があり、企業が実際に取り組んでいる研究課題にどのような考え方があるのか理解し、直接議論できる絶好機会なので。

齋藤: 他研究科の皆様と議論ができる点も授業の魅力なので、多くの方に受講していただきたい科目だと思います。

私が特に印象的だったのは、最優先利益の定義づけでした。環境を優先すれば、カーボンニュートラルは不可欠である一方、経済的合理性の観点では高コストであり、推進が容易ではありません。この対立構造を如何にして紐解くかという点が興味深く感じました。カーボンニュートラルに特段の関心がなくとも、戦略的思考を養うという観点で受講を強くおすすめできる科目です。

以上

2025年7月18日

早稲田大学 早稲田キャンパスにて

【参考】

「大学院カーボンニュートラル副専攻 概要」

https://www.waseda.jp/inst/wcans/hr-development/minor-2

「大学院カーボンニュートラル副専攻 カリキュラム」

https://www.waseda.jp/inst/gec/graduate/minor-3/

事業創造演習α シラバス

https://www.wsl.waseda.jp/syllabus/JAA104.php?pKey=9S910200480120259S910200489S&pLng=jp

https://www.wsl.waseda.jp/syllabus/JAA104.php?pKey=9S910200490120259S910200499S&pLng=jp

https://www.wsl.waseda.jp/syllabus/JAA104.php?pKey=9S910200520120259S910200529S&pLng=jp

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