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未踏の領域に挑む、独創的で気鋭の研究者たち
統合報告書 -Vision Report- 2024-2025 #研究
Mon 06 Apr 26
統合報告書 -Vision Report- 2024-2025 #研究
Mon 06 Apr 26
答えのない課題に
果敢に挑む研究教育活動
早稲田大学の学術研究や教育は、そのどれもが人類社会に貢献するためにあります。世の中にインパクトをもたらす先端的・独創的な研究から、全学共通の文理を超えた教育への取り組み、そして学生たちがキャンパス内外で重ねる日々の挑戦まで、早稲田大学ではさまざまな活動が展開されています。その中でも社会的インパクトの強い活動内容とその成果を報告します。
PI飛躍プログラム
-独自分野の開拓を目指すPI-
2022年度より、早稲田大学では本学の次世代を担う初期段階の独立した研究室を主宰する研究者(Principal Investigator/以下PI)を重点的、かつ総合的に支援する「PI飛躍プログラム」を新設しました。失敗を恐れず、普遍的な知や社会的な価値の創造に資する挑戦的・独創的な研究に果敢に取り組み、独自分野の開拓を目指すPIを支援対象とし、研究者として世界に飛躍することを全学的に後押しすることを目的としています。効果的な支援制度になるよう、PIのニーズを丁寧に把握したテーラーメイド型の支援を行うことがこの制度の特長です。
2025年度支援対象者
- 細胞系譜を解明する新しい系統解析技術の創出
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応用数学の視点から、細胞系統の解析手法を構築
理工学術院 准教授 早水 桃子 2023年度~
細胞がどんな細胞を経て別の細胞に分化・成熟するか、その軌跡を解明し再生医療など生命科学の幅広い分野への応用を図っていきます。
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- 細胞系譜を解明する新しい系統解析技術の創出
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特殊なスピン状態をもつ人工積層構造の創成
理工学術院 教授 高山 あかり 2023年度~
物性測定と構造決定を両立できるシステムを開発し、特殊なスピン状態をもつテーラーメイドの積層構造において新たな物理現象を発見します。
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- 筋収縮運動の定量的理解を可能にする運動解析モデルの創出
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生体材料とデバイスの融合で、神経伝達のメカニズムを解明
理工学術院 教授 森本 雄矢 2024年度~
様々な条件での運動評価結果に基づき筋収縮運動を数理モデル化して、創薬や治療、リハビリへの応用を目指します。
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- 生命の起源における初期過程の実験的検証
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最初の生命はいかにして生まれたのか、その初期過程を探る
理工学術院 准教授 水内 良 2024年度~
生命の起源過程を実験室内で追体験する研究手法をより初期の段階に応用し、自己複製体が生まれる瞬間を直接検出することに挑戦します。
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- 応用研究における感情検出のための文脈的単語埋め込み
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デジタル・ヒューマニティーズの手法を用いて、言語による感情表現を分析
国際学術院 准教授 オーマン エミリー 2024年度~
文学やソーシャルメディアの書き込み、ウェブニュース記事などにおける感情表現を分析し、どのような感情表現によってプロパガンダが広がり、読む人に影響を与えるのかを分析します。
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- 身振りの発話促進機能に関する研究:行動・生理指標からの検討
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身振りが発話に及ぼす影響を認知科学の視点から解明
人間科学学術院 准教授 関根 和生 2025年度新規採択
言語、身振り、表情、視線など、人間がコミュニケーションで用いる多様な「モダリティー(伝達媒体)」を対象に、心理言語学や認知科学の観点から、メッセージの生成と理解のプロセスの解明を目指します。
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- 視線・脳波計測および計算モデルによるバイリンガル認知の解析
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人間に共通する言語理解のメカニズムをバイリンガル認知の解析から解き明かす
国際学術院 准教授 中村 智栄 2025年度新規採択
子どもが複雑な言語体系を獲得できる理由、成人の外国語習得が困難な原因、言語理解における言葉と思考の関係性を解明します。
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- 少子化日本における不妊、生殖補助医療、家族の多様化に関する研究
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現代社会の様々な問題を文化人類学の視点から解明
国際学術院 准教授 ガーニエ 大蔵 奈々 2025年度新規採択
生殖技術の医療化、家族やパートナーに与えるインパクトなどを調査し、生殖医療の意味や家族の多様性を考察します。
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研究内容紹介
―コモディティ価格報告機関の政治経済学 エネルギー資源の価格形成プロセスを膨大なデータから解き明かす―
政治経済学術院 准教授 セドン ジャック
2025年度新規採択
世界経済に影響する原油の指標価格の形成プロセスを解明
原油の価格は、PRAと呼ばれる価格報告機関の評価に大きく影響されます。原油取引の最も重要な指標価格には、北米ではWTI、欧州では北海プレント、アジアではドバイ原油があります。これらの価格がどのように形成され、どのように市場へと影響を及ぼすのかを解明するのが、私の主な研究テーマです。
エネルギーをはじめ広範な産業に関係する原油価格は、世界経済にも多大な影響を及ぼします。また原油自体に金融商品としての側面もあることから、価格は金融市場のトレンドの影響も受けやすくなっています。こうした複雑なメカニズムの中で、指標価格の形成プロセスを理解することを目標として研究活動を行っています。
指標価格は本来、経済やマーケットの動きが直接的に反映されるのが理想です。しかし、指標価格の形成プロセスは、それが反映しようとする市場そのものを形作る役割も果たしています。写真において、写し出されるイメージ(つまり指標価格)が、カメラの設計(すなわち指標の算出方法)によって変わるのと似ています。
主要PRAの指標価格を用いて研究を加速
指標価格の研究では、過去の価格推移、その基準となった情報収集プロセス、値付けと報告の方法など、膨大なデータが必要になります。また、本来は石油会社や金融機関と取引されるPRAの情報は、販売価格も高く、研究目的での入手は困難です。私はこれまで
の研究活動でデータの収集方法やネットワークを確立してきましたが、PI飛躍プログラムの支援を受けて、デー夕の総量やアクセスを増大させるとともに、指標価格を利用する関係者への取材や研究成果の発信も行うことで、研究活動を飛躍的に加速したいと考えています。
トレーダーから政府関係者まで、指標価格を利用するユーザーには、情報に対する尺度や視点がさまざまです。そのため、 それぞれの関係者へのインタビューを通じてニーズを正確に把握することは、価格形成プロセスの理解を深めるのに役立ちます。過去5年間、私はプラッツドバイ原油のレポートを徹底的に研究し、指標価格の進化と価格形成に影響を与える要因を分析してきました。この歴史的な背景に基づき、最近の取引データも解析できれば、長期的な視点から価格形成のメカニズムを明らかにできるはずです。
また、原油にとどまらず、さまざまな市場、コモディティも研究対象としており、今回の研究プロジェクトでは、コモディティ価格の形成プロセスを理解することも目的の1つとしています。
原油は最も重要なコモディティの一つであり、その価格は私たちの生活に大きな影響を与えます。指標価格の作成方法に完璧な方法は存在しませんが、良い指標価格を生み出す要因を理解することは重要です。最終的には、健全な市場メカニズムの創出に貢献したいと考えています。
研究者の育成・支援
―キャリアステージに応じた最適なプログラムの提供―
早稲田大学では、研究者の各キャリアステージに対して最適な支援策を実施することを目指し、戦略的に制度設計をしています。
近年では重点施策として以下の研究者育成・支援プログラムを企画・運営しています。
次代の中核研究者育成プログラム
国際研究大学としての地位確立の担い手となる中核研究者を育成することを目指し、研究の業績や内容を踏まえた厳しい審査により対象者を選定し、状況やニーズに応じた支援を行います。
PI飛躍プログラム
挑戦的・独創的な研究に果敢に取り組み、独自分野の開拓を目指すPIを支援対象とし、研究促進費の助成、研究ネットワーク拡大や大型外部資金獲得、産学連携、国際共同研究、アウトリーチなどの活動支援を通じて、研究者として世界に飛躍することを全学的に後押しします。
研究環境向上のための若手研究者(PD等)雇用支援事業※1
従来雇用関係を有していなかった特別研究員(PD・RPD・CPD)のうち雇用を希望する者を直接雇用することで、若手研究者への支援を拡充し、安心して研究に専念できる環境を整備します。
早稲田オープン・イノベーション・エコシステム
挑戦的研究プログラム(W-SPRING) ※2
経済的支援および、産業界で幅広く活躍するための素養を身に付けるためのキャリア開発・育成コンテンツの提供等を通じて、我が国の科学技術・イノベーションを担う優秀で志ある博士学生の多様なキャリアパスの確立を目指します。
早稲田次世代AIイノベーション・エコシステム
挑戦的研究プログラム(W-SPRING-AI) ※2
経済的支援および、次世代AI分野に関する高度な専門性と研究遂行能力を身に付ける機会の提供により、国家戦略分野に指定されている次世代AI分野を開拓・牽引する志と能力を持つ博士学生の育成を目指します。
※1: 2023年度に日本学術振興会の「研究環境向上のための若手研究者雇用支援事業」に申請し、本学は雇用制度導入機関として登録されました。
※2: 国立研究開発法人科学技術振興機構の支援を受けて実施しています。
