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弁士による映画上映イベントおよび国際シンポジウムをUCLAにて共催

開催報告 

映画上映会”The Art of the Benshi”

国際シンポジウム”Talking Silents: New Approaches to Early Japanese Cinema and the Art of the Benshi”

2019年3月1日~3日、ロサンゼルスのカリフォルニア大学ロサンゼルス校(以下、UCLA)のBilly Wilder Theaterを会場に、柳井イニシアティブグローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクトの一環として、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館(演劇博物館)協力の下、UCLAと早稲田大学スーパーグローバル大学創成支援事業国際日本学拠点との共催にて、映画上映会「The Art of the Benshi」および国際シンポジウム「Talking Silents: New Approaches to Early Japanese Cinema and the Art of the Benshi」が開催されました。

このイベントは、サイレント映画の時代に日本で独特の発達をみせた弁士(サイレント映画に声をつける語り手)に様々な角度から光を当て、Wall Street JournalLos Angeles Timesなどの新聞からMovie Walkerなどのウェブサイトまで、各種メディアからも大いに注目を集めました。

■映画上映会「The Art of the Benshi」

3日間にわたり開催された映画上映会「The Art of the Benshi」では、4プログラム11本(のべ15本)の貴重なサイレント映画が上映され、片岡一郎氏、坂本頼光氏、大森くみこ氏という3名の弁士、湯浅ジョウイチ氏、鈴木真紀子氏、古橋ゆき氏、丹原要氏、堅田喜三代氏という5名の音楽家が集い、鮮やかなパフォーマンスで観客を引きつけました。すべての作品に弁士の語りと音楽家の生演奏がつく日本でも類を見ない豪華な催しにのべ約750名の観客を集め、会場は熱気に包まれました。

この上映会は、演劇博物館の演劇映像学連携研究拠点で行われてきた共同研究と参考上映――演劇博物館所蔵のサイレント期の映画伴奏楽譜資料「ヒラノ・コレクション」の調査、およびこれを活用したサイレント映画の活弁・音楽付上映――を発展させるかたちで実現され、時代劇映画の巨匠・伊藤大輔の『忠次旅日記』、『斬人斬馬剣』、『血煙高田馬場』、2016年に発見された『サイレンス』、UCLA映画テレビアーカイブが一大研究拠点であるローレル&ハーディ作品の一本『リバティ』、演劇博物館が所蔵する初期の日本映画『生さぬ仲』、日本映画の巨匠である小津安二郎の『非常線の女』および溝口健二の『東京行進曲』など、邦画・洋画、短編から長編までを織り交ぜた多彩な11作品が毎回3~4本上映されました。

今回の催しの第一の特色は、たんに弁士が語りをつけるだけではなく、どのプログラムにも3名の弁士が登場して弁士の個性を体験できるようにしたことにあります。時には同一作品を異なる弁士によって上映し、弁士のちがいによって映画体験がいかに異なるものになるのか、そしてそれによっていかに各作品の可能性が引き出されるのかが示されました。また、3日目には『生さぬ仲』と『豪傑地雷也』の2作品が3名の弁士の掛け合いによって上映されました。1920年代から現代まで、多くの弁士の語りのスタイルはひとりの弁士がト書きと台詞を語るものですが、こうした掛け合いは1910年代の古い語りのつけ方であり、日本でもほとんど実演機会のない貴重な試みとなりました。

さらに、上映作品のうち時代劇を中心とする4作品(『血煙高田馬場』『斬人斬馬剣』『忠次旅日記』『生さぬ仲』)については、ヒラノ・コレクションにふくまれる歴史的な楽譜から選定された伴奏曲によって演出されました。一方、残る7作品については、カラード・モノトーンの湯浅ジョウイチ氏や丹原要氏によって即興演奏を織り交ぜた伴奏が試みられました。通常の欧米のサイレント映画伴奏と異なる三味線や鳴り物をふくむ音楽と、現代の日本の感性による音楽が響きあい、観客を魅了しました。

現代の弁士の語り、現代の音楽家たちの音、歴史的な楽譜の響き、そして貴重な歴史的な映画作品、そしてアメリカの観客たちの反応が重層的に響き合い、上映会は来場者の熱烈なスタンディングオベーションによって幕を閉じました。

 

■国際シンポジウム

さらに、3月2日には国際シンポジウム「Talking Silents:New Approaches to Early Japanese Cinema and the Art of the Benshi」が開催されました。マイケル・エメリック(カリフォルニア大学ロサンゼルス校上級准教授)、および山﨑順子氏(同大学助教授)の司会のもと、上述の上映会の主題である弁士、音楽伴奏、映画館、前史となる写し絵、歌舞伎、トーキー以後の映画、さらには資料のデジタル公開をめぐる取り組みまで、多角的に議論が行われました。

まず日本の無声映画の前史ないし背景を形作る写し絵と歌舞伎の文化と無声映画とのかかわりが論じられました。草原真知子氏(早稲田大学名誉教授)は、映画前史となる日本の写し絵・幻燈文化について、貴重な資料・映像の紹介を交えて説明され、映画以前の視覚文化と語りの関係について考察されました。歌舞伎については、児玉竜一氏(早稲田大学教授・演劇博物館副館長)より、日本の無声映画と歌舞伎の連続性について、江戸文芸、語り物、歌舞伎の下座音楽といった複数の観点からの考察が示されました。次に、日本映画と声の関係をめぐる議論が行われました。まず、デヴィッド・デッサー氏(イリノイ大学名誉教授)によって、弁士を兄にもつ黒澤明による『野良犬』などの作品群から弁士の語りを思わせるナレーションなど映画における語りの問題について考察が加えられました。さらに近藤和都氏(早稲田大学・日本学術振興会特別研究員PD)は、映画館で配布されたプログラムを取り上げ、映画館が増加して館毎の差別化が重視された1920年代に、このメディアを介して映画館と観客の「声」が行き交うことにより各映画館固有のコミュニケーションが発達していたことを示しました。

 

午後の部では、サイレント期(およびその後)の映画館の音響実践/音楽実践に注目した議論が行われました。まず大森恭子氏(ハミルトン大学教授)によって、弁士をふくむサイレント映画上映の歴史的資料を複合的にデータベース化し、映画館の空間を提示する3Dデータなど様々な成果発表のかたちが紹介され、研究資料の現代的な利活用の可能性が提示されました。次いで、柴田康太郎氏(早稲田大学演劇博物館研究助手)は、映画の伴奏実践が1910年代以後どこでも一種の「西洋化」を遂げるなかで、日本では西洋音楽、歌舞伎の下座音楽、および琵琶唄といった多様な音楽実践の折衷化が展開したことを考察しました。また、笹川慶子(関西大学教授)は1930年代の浪曲映画を中心に、サイレント期の弁士らの語りがトーキー以後にも浪曲映画というかたちで継承され、独特の展開を見せたことを指摘しました。最後に白井史人(京都大学・日本学術振興会特別研究員PD)は、上映会でも取り上げた「ヒラノ・コレクション」の研究資料を事例として、輸入伴奏譜がいかに日本に受容され、いかに日本の楽器や楽曲と組み合わせれて使用されていたのかを論じました。

日本とアメリカで活躍する研究者たちの集ったこのシンポジウムでは、弁士の語りを中心としながらもさまざまな視点から多角的に発表と議論が行われました。このシンポジウムでは、弁士の語りをふくむ日本の映画文化の諸相に光を当てるとともに、映画上映会と併せて学問的知見を討議することで、この領域がはらむ更なる様々な研究の可能性を浮かび上がらせることができました。

 

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