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能を英語で上演――”Blue Moon Over Memphis” UCLAにて共催

能を英語で上演――”Blue Moon Over Memphis” UCLAにて共催

 

2018年10月15日から2日間にわたり、日・米の研究者、能楽師、能面師がカリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles 通称UCLA)に一堂に会し、「能」に関するイベント、「英語能-2Days of Noh」が開催されました。

このイベントは、2017年春に同地にて開催された「狂言の夕べin Los Angeles-5 Days of Kyogen」に続くシリーズとして、現地の人々に日本の伝統芸能に触れる機会を与えるべく、UCLAと本学スーパーグローバル大学創成支援事業国際日本学拠点とが連携して推進している、「柳井正イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクト」の研究活動の一環としておこなわれました。

イベント初日の15日には、これから開催されるイベントの導入として、「能とは何か-What is Noh」と題した竹本幹夫教授(本学文学学術院)による講演がおこなわれました。講演では能を理解するためにはその歴史を知ることが大切であるとし、能の源流である芸能から能楽が分岐し、観阿弥、世阿弥による能の大成を経て、それぞれの時代にいかに能が発展してきたかにつき、その変遷を歴史的背景とあわせて解説しました。また、源流となった古芸能から現代に至まで、全時代を通じて変わらずに共有されてきた「能の本質」について触れ、現代の能で本質とされている要素の多くが実は江戸時代に起源するものであること、この芸能の基本は歌(音楽)と舞踊(舞)にあり、この2つの要素が満たされている限りにおいては、どのような言語で演じられ、また舞や謡のリズムが変更されようともそれは能であるとし、このイベント中に披露される英語能については、日本語によるイタリアオペラの上演と似た現象であると語りました。

英語能の今後については、今回の演目”Blue Moon Over Memphis”のように、伝統的な演目を英語に翻訳したものではなく、英語によって書き下ろされた作品であるがゆえに、先に述べたような意味で、能の歴史上大変重要な意味をもたらすと捉えており、伝統的な能とどのように共存してゆくのか見守っていきたいとし、講演を締めくくりました。

UCLAの学生、研究者はそれぞれ熱心にメモを取りながら耳をかたむけていました。なお、講演会は日本語でおこなわれ、英語字幕にてその内容を逐次スクリーンに流す手法がとられました。

*英語翻訳:マイケル・エメリック(Michael Emmerich UCLAおよび早稲田大学)准教授

同日夜、UCLA内の施設Kaufman Hall にて200名を超える学生、教職員、一般の観衆を集め英語能”Blue Moon Over Memphis”が披露されました。これを演じたのは、日本語を母語としない能の研究者を中心に結成されている「シアター能楽」のメンバー(囃子方には日本人が参加)でした。この演目は、アメリカ人の劇作家デボラ・ブレヴォート(Deborah Brevoort)氏が日本の伝統芸能である能に刺激を受け、エルビス・プレスリーを題材に書き下ろした作品で、プレスリーのファンにとって聖地となっているテネシー州メンフィスにある、かつての邸宅グレイスランドを訪れた熱烈な女性ファン、ジュディの前にエルビスの霊が現れるというあらすじで構成されています。

プレスリーを題材に、能を演じるという大胆な発想は、先の竹本教授の講演で指摘された2つの要素、歌と舞踊によって見事に融合され、しかも現代劇の要素を取り入れたコトバ(セリフ)の部分では観衆の笑いを取るシーンもあり、これは観阿弥時代の初期の能が持っていた、現代ではもはや感じられなくなってしまっている笑いの要素と共通する現象として、日本人には大きな驚きを感じさせるものでした。このことにより、従来の能の概念にとらわれない、まさに新しい演劇のスタイルを築いていると感じたシーンともなりました。観衆は今までに体験したことの無い舞台に魅了されていました。

公演には地元の有力紙「LA TIMES」の記者も来場しており、翌日の紙面にこの公演についての記事が掲載され、現地での反響の大きさを示すこととなりました。

最終日には、”This is Noh”と題した、北澤秀太氏による能面の制作、および松井彬・大島衣惠師による能の衣裳の着付けの実演や「高砂(半能)」上演ワークショップが行われました。ワークショップには演劇を学ぶ院生が多数参加し、熱心に見入るとともに、最後に設けられた時間が足りなくなるほどに、質問を投げかけていました。

続くディスカッション・セッションでは演者、能面師、そして日・米の研究者がテーブルに着き、英語能の魅力と可能性について、またこれからの伝統芸能としての能の課題について、ラウンドテーブル形式のシンポジウムが行われ、それぞれの立場からの熱心な議論が展開されました。

竹本教授は、能にとっての二大要素である歌と舞踊は伝統的に守らなければいけないと考えるが、その他の付帯的要素である構えや言語は異なっているものの、今回上演された英語能は観客と融合した新しい能の形態として捉え、育てていっても良いのではないかとの見解を示しました。また、登壇者の一人であり、今回の公演を実現したシアター能楽(前出)の主宰である、リチャード・エマート(Richard Emmert)教授(武蔵野大学)は、この演目のスクリプトは1990年代に能に着想を得てかかれたものであり、元の台本はより劇的で、show的あるいはミュージカル的な要素が含まれていたが、変更を重ねて現在に至ることを紹介したうえで、英語能が発声の仕方、囃子の訓練を受けた演者により表現されている点を強調し、新たな能の展開として発展させていきたいと抱負を述べました。

伝統的な能も、新たな形態としての英語能も、ともに良い作品を演じるためには後継者を育てることが共通の課題であるとし、2日間にわたるイベントは締めくくられました。ただし両者を比較すると、日本の伝統演劇では、観客は役者の芸を見に行くのに対し、英語能では、観客は作品を楽しみに行く点に大きな違いがあります。従って英語能では、次々に良い作品を発表していくこともまた、大きな課題になろうと考えられます。

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