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是枝裕和監督、第71回カンヌ国際映画祭にてパルムドール受賞

AFP PHOTO / LOIC VENANCE

2018年カンヌ国際映画祭にて是枝裕和監督(理工学術院教授・’87年第一文学部卒)が最高賞であるパルムドールを受賞しました。

スーパーグローバル大学創成支援事業国際日本学拠点では昨年10月、柳井イニシアティブ活動の一環として、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(以下UCLA)との共催にて、是枝監督の過去の作品を振り返るイベント “Hirokazu Kore-eda Retrospective – Cinema from the Outside In” を現地で開催しました。

今回の受賞を祝福するメッセージがマイケル・エメリック上級准教授(UCLA)から早速寄せられました。

マイケル・エメリック准教授

パルムドール受賞に寄せて

2014年、柳井正氏(株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長)のご寄付により、教育と文化プログラムを主軸としながら日本学研究のグローバル化をめざす「柳井正イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクト(The Tadashi Yanai Initiative for Globalizing Japanese Humanities)」が、早稲田大学とカリフォルニア大学の連携のもと設立されました。

大変光栄なことに私はこの柳井イニシアティブのディレクターをお受けすることになったのですが、この重責を担いはじめた頃から、ロサンゼルスという映画の街で是枝裕和監督のこれまでの作品を振り返る企画ができないだろうかと考えておりました。これは是枝監督が早稲田大学の卒業生(第一文学部)であり、かつ現在、基幹理工学部教授として早稲田大学で教鞭を取っておられることを知っていたからですが、何よりも私自身が、大学院生のとき手伝っていた授業のシラバスに載っていた「幻の光」を観て以来の、是枝作品の熱烈なファンであることが大きな理由でした。

以来、私は長きにわたり学部生の授業で是枝作品について取り上げてきましたが、学生たちはいつも作品の持つ魅力に心を動かされ、考えさせられておりました。普段それほど映画について考えたりしない学生たちであっても、監督の作品に触れると、その卓越した音楽の引用、静寂、そしてのびのびとした描写やユーモアなどによって綿密に構成されたシーンに深く感銘を受けています。学生たちは是枝作品の持つ温かさや作品により投げかけられる倫理観に心打たれています。

2014年に、これまでの是枝作品を扱ったイベントを催したらきっと面白い企画になるに違いないと確信していましたが、実際これほどの成功を収めるとは予測できませんでした。上映会のチケットはほぼすべて売り切れとなりました。上映後、観客からの鋭く本質をついた質問に対し、監督は真摯にそして丁寧に答えておられました。事前の打合せでは上映後の討論は45分間のみと決めていたにも拘らず、監督は毎晩1時間半もの間、質問に答えてくださいました。

是枝監督が疲れ果ててロサンゼルスを発ったであろう頃、私はいかに彼が重要な監督であるか、すなわち多様なバックグラウンドを持つ世界中の観客の心に深く訴えることのできる監督であるかを以前にも増して強く感じていました。このイベントを通して、観客の心を揺さぶり、世界を新たな視点で見ることを教える作品を生み出す是枝監督の能力が、カンヌ国際映画祭の審査員によってあらためて認識されたことは喜ばしいことです。ここロサンゼルスの映画ファンは皆、カンヌ同様、パルムドールの受賞を祝福するとともに、再びこの地を訪れてくれる日を心待ちにしております。

マイケル・エメリック(UCLA 上級准教授・早稲田大学文学学術院准教授)

 

また、監督の学生時代を知る本学名誉教授の岩本憲児氏からもお祝いのメッセージが届きました。

岩本憲児早稲田大学名誉教授

“誰も知らない”? 監督の若き日

是枝裕和さん、カンヌ国際映画祭のパルムドール受賞、おめでとう!
私はたまたま貴君の卒論を担当したので、私的な回想から始めましょう。
貴君は学生時代には文芸科に所属しており、私は演劇科の教員だったのですが、私は文芸科の「シナリオ研究」を持たされていました。シナリオ作家でない私は、シナリオの歴史や形式の諸相に関する演習をやっていたと思います。私は個別のていねいな指導をやっていなかったので、出来上がった貴君の卒論のユニークさに驚き、その後ずっと記憶に残りました。それは日本映画の一般的シナリオ形式とはまったく異なる、独自の創作形式を採ったスタイルであり、アメリカのコンティニュイティ形式(撮影用台本)に貴君の絵や引用絵(だったかな?)をコラージュした、「読む+見る」、たいへん面白いシナリオだったからです。すでに監督の眼で書いていたのでしょう。
卒業後、テレビマンユニオンへ入った貴君は、ときおり自作番組の映像をテープ(VHSの時代!)で私に送ってくれました。社会の弱者へ焦点を当てた貴君のまなざしは以後も一貫しています。社会派の硬さやイデオロギーの押し付けはなく、優しく繊細な眼が背後にありました。その視線は最初の劇映画『幻の光』以降も続いていますね。
ところで数年前、私は世界的に知られる北京電影学院で集中講義をしたことがあります。大教室での質疑応答の時間、受講生たちから熱心な質問が集中したのは、なんと貴君に関することでした。中国で是枝監督は小津安二郎の後継者とも言われるが、私はどう思うかと。私は、戦後の小津監督は家族崩壊の予兆を描いたかもしれないが、是枝監督はそれ以後を描いている。崩壊後の家族のあり方を凝視し、社会の中での融合を問いかけているのではないかと。
私見がそれほど的外れではないことを望みつつ、貴君の今後のさらなる活躍を祈ります。

岩本憲児(早稲田大学名誉教授)

 

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