日本語教育研究センター(Center for Japanese Language;以下、CJL)は早稲田大学における日本語教育を一元的に担う機関です。本学には5,783名の外国人留学生が在籍し、そのうち2,441名がCJLで日本語を学んでいます(2018年春学期実績)。大学の国際化を軸に、国内で最大規模の留学生の受け入れを継続しているところです。
国際化の推進は、留学生数の増加だけではなく、その内実の多様化をもたらします。世界115カ国から、学部や大学院に正規生や交換留学生として、また短期プログラムの履修生として、様々な目的と動機を持った学習者が本学を訪れます。こうした留学生を対象に、CJLのプログラムは大規模な量と多様な質を支えることを目指し、次のように構成されています。
◆「総合科目群」と「テーマ科目群」の設置
総合科目群/初級~中級対象/標準化されたシラバスと教科書/四技能をバランスよく学ぶ
テーマ科目群/初級~超上級/個性的なシラバスと教材/テーマに沿った多様な内容を学ぶ
総合科目群では、あらかじめ標準化されたシラバスと教科書に基づいた授業が提供され、日本語を「話す」「聞く」「読む」「書く」練習ができます。テーマ科目群は、担当教員が策定したテーマに沿って提供される科目です。例えば、「新聞を読む」「アニメで学ぶ日本語」「自分史を書く」等のタイトルが示され、学習者がそれぞれの興味や関心に応じて科目を選択できるようになっています。
◆学習環境の整備
ティーチングアシスタント(TA)/日本語授業ボランティア/「わせだ日本語サポート」
学習者の増加と多様化に対しては、前述の科目内容の他にも、オンデマンド型の授業などのクラス設定を行うことで対応を進めていますが、さらに、必要なのが環境整備だと考えています。ティーチングアシスタント(TA)や日本語授業ボランティアとして、多くの日本人学生が日本語の学びの場に参加します。さらに「わせだ日本語サポート」というサポートシステムもあります。学習者一人ひとりの日本語学習について一緒に考え、一人ひとりに合った学習を進めていくための支援を行っています。スタッフはCJLの教員と大学院生や学部生で、学習者が自律的に自分の日本語学習を行っていけるようになることを目指しています。
教員や教材だけではない日本語学習のための「リソース」と教室に限定されない学びの「場」も、学習者の増加と多様化を支えるための重要な学習環境であることを意識しなければなりません。
◆日本語教育はだれのためのものか
ここまで、外国人留学生の増加と多様化に対応する内容を述べてきました。しかしながら、多様化の内実を見れば見るほど、「日本語学習が必要なのはだれか」つまり、「日本語教育はだれのためのものか」を再考する必要があると思います。日本国籍を有する日本語科目の履修生がいたり、留学生への支援を通して自身の学びを深める日本人学生がいたりするからです。全学的な教育機関としてのCJLは、日本語教育の専門性を以て全学の教育に貢献できるでしょうか。「リソース」と「場」をキーワードに、日本語教育への参加者が外国人か日本人かという境界を取り払うことで、答えが見えてくるのではないでしょうか。
約200名のティーチングスタッフによって展開される毎週650コマの授業を核とし、CJLを学びの場とする全ての人にとって豊かなリソースを提供することが求められています。本学の日本語教育の「質」を支えるために、学内他箇所や社会とも連携し、CJLの使命を果たしていきたいと考えています。