Waseda CJL日本語教育スタンダーズは、早稲田大学日本語教育研究センター(Center for Japanese Language:CJL)が提供する「留学生向け日本語教育」の各レベルの目標を、日本語を使って「何ができるか」という観点から記述したものです。レベルは0から8まで9つのレベルに分かれています。このスタンダーズの作成にあたっては、CEFR(Common European Framework of reference for Languages: Learning, teaching, assessment)およびJF日本語教育スタンダーズの言語教育観、能力記述を参考にしました。
作成の目的と経緯については、『早稲田大学日本語教育実践研究』バックナンバー第10号の「「CJLスタンダーズ」の開発-「ことばの学びの中継点」の役割を果たすために-」をご参照ください。CEFRの各レベルとの関係性は図1のようになっています。
図1 CJLスタンダーズとCEFRの各レベルの関係性
Waseda CJL日本語教育スタンダーズについては、以下の簡易版(日本語学習者向け)、詳細版(技能別目標)の記述をご確認ください。
レベル | 説明 |
0 | ・あいさつをすることができます。 ・かんたんな質問にこたえることができます。 ・メニューや看板の文字を,絵や写真をみながら読むことができます。 ・ ひらがなとカタカナで名前や住所など,かんたんな情報を書くことができます。 |
1 | ・ かんたんな日常会話をすることができます。 ・単純な情報交換をすることができます。 ・ 身近なことについて書かれた短く簡単な文章を読むことができます。 ・自分のことを短い文章で書くことができます。 |
2 | ・ 日常のことについて情報交換ができます。 ・ 自分の希望や気持ちを伝える,お願いする,ことわるなど, 基本的なことを日本語で伝えることができます。 ・ 自分の経験について話したり書いたりすることができます。 ・ 身近な話題について書かれた文章を読んで内容を理解することができます。 |
3 | ・ 身近な話題についての会話や説明を聞いて,要点を理解することができます。 ・ 身近な話題について書かれた文章を読んで,要点を理解することができます。 ・相手や場面を考えながら,表現を選んで会話をすることができます。 ・ 出来事や夢,希望などについて, かんたんな文章を書くことができます。 |
4 | ・ 身近な話題, 一般的な話題についての会話や説明を聞いて, 要点を理解することができます。 ・ 身近な話題, 一般的な話題について書かれた文章を読んで, 要点を理解することができます。 ・ 意見や計画の理由などを短く述べることができます。 ・ 目的や相手に合わせて, ふさわしい文体で文章を書くことができます。 |
5 | ・自分の仕事、専門や社会生活に関わる話題について、会話や説明を聞いて、内容を理解することができます。 ・現代の問題について書かれた 長い文章や記事を読んで要点を理解することができます。 ・根拠を示して自分の考えをはっきりと説明することができます。母語話者と自然に対話をすることができます。 ・様々な情報に基づいたエッセイやレポートを書くことができます。 |
6 | ・社会問題や時事的な問題について話される長い会話やプレゼンテーションを聞いて,内容を理解することができます。 ・社会問題や時事的な問題について書かれた長い複雑な文章を自分の力で読み、重要な点を理解することができます。 ・ 幅広い話題について,流暢に,正確に話し、効果的に 自分の考えや意見を述べることができます。 ・ 論点を整然と展開して,レポートを書くことができます。 |
7 | ・社会、学問、仕事の世界で普段出会う様々な話題について話された内容を聞いて理解し、話し手の姿勢までも把握することができます。 ・一般的な分野の抽象的な話題に関して、複雑な話を読み, 重要な点を理解することができます。 ・活発な議論をしたり、効果的なインタビューをしたり、臨機応変にスピーチをしたりすることができます。 ・ジャンルにふさわしい文体で詳細な文章を書くことができます。 |
8 | ・非標準的な表現があっても様々なメディアからの情報を聞き、理解することができます。 ・ あらゆる分野の,長い, 複雑な内容を読んで、含意された意見も含めて詳細な点まで理解できます。 ・複雑な話題について,明確なきちんとした構造を持ったプレゼンテーションができます。 ・読者にあわせて, 明瞭かつ詳細な創作文を書くことができます。 |
レベル | 説明 |
0 | はっきり,ゆっくりとした発音で話され,なおかつ視覚的な情報などの助けがあれば, 日常生活でよく耳にしたり目にしたりするやりとりの中で, ごく身近な語や一部の具体的な情報( 基本的なあいさつ, 数字,値段,場所, 曜日・時間など) を聞き取ることができる。また, 簡単な質問を理解することができる。 |
1 | はっきり,ゆっくりとした発音で話されれば, 日常生活でよく接する身近な話題のやりとりや会話( 個人や家族, 買い物に関するものなど) の中から, 具体的な情報を聞き取ることができる。 |
2 | ・はっきり,ゆっくりとした発音で話されれば, ごく身近な話題の会話( 個人や家 族, 買 い 物, 地理, 仕事に関するものなど) の中から,基本的な情報をつかむことができる。 ・短い,はっきりとした簡単なメッセージやアナウンスの要点が聞き取れる。 |
3 | ・標準的なことばで話されれば, 仕事, 学校, 余暇などの身近な話題について, その会話や語りの要点が理解できる。 ・はっきりとした簡単なメ ッセージやアナウンスの要点が聞き取れる。 |
4 | ・自分の仕事や身近な社会生活に関わる話題で, 簡潔な話であれば, 事実関係や重要な情報をつかむことができる。 ・背景知識のある身近なテーマや自分の専門の範囲で,簡潔で明確な構成を持ったプレゼンテーションであれば,その講義や話を理解することができる。 |
5 | ・自分の仕事, 専門や身近な社会生活に関わる話題で, 話の構成がはっきり示されていれば,内容を理解することができる。 ・標準的な表現で話されるものであれば,さまざまなメディアから発信されるほとんどの音声素材の内容を理解できる。話し手の心情や調子などが聞き取れる。 |
6 | ・社会問題や環境問題などの時事的な話題について,内容を理解することができる。 ・社会,学問,仕事の世界で普段出会う,様々な話題について, 長い会話やプレゼンテーションを理解できる。 |
7 | ・社会,学問,仕事の世界で普段出会う, 様々な話題について, 内容的にも言語的にも複雑な講義,話,報告, 学問的・専門的なプレゼンテーションの要点が理解できる。 ・情報を取ったり,内容を理解するだけでなく,事柄に対する話し手の, 言葉に表われない姿勢が把握できる。 |
8 | ・講義や議論,ディベートなどの複雑な展開を持つ情報を比較的容易に理解できる。 ・いくつか非標準的な表現があっても,テレビ,ラジオ,ネット放送など, 様々なメディアから発信されるあらゆる分野の音声素材を理解できる。 |
レベル | 説明 |
0 | ・写真やイラストなどがついていれば,メニューや掲示などにある身近な語が認識できる。 ・日常のよくある単純な状況であれば, 非常に短く簡単で基本的な表現を, 読み直したりしながら, 一文一節ずつ理解することができる。 |
1 | 日常のよくある状況で, 短く簡単で基本的なことばで書かれていれば, 身近な 事 柄( 家 族, 食べ物, 趣味など) の短く単純な内容が, 必要であれば読み直したりしながら, 理解することができる。 |
2 | ・よく使われる語で書かれていれば, 身近な事柄( 家族の情報や買い物など) の短く単純な内容が理解できる。 ・身近な話題で, 簡単な内容であれば, 必要な情報を取り出すことができる。 |
3 | ・背景知識のある専門分野や興味のある話題について, 事実関係が簡潔に書かれているものであれば,重要な点を十分に理解できる。 ・身近な話題について書かれた文章であれば,それを読んで理解し, 新しい情報を得ることができる。 |
4 | 身近な社会生活に関わる話題や背景知識のある話題,あるいは自分の専門分野の話題について,主張のはっきりした論説的な内容であれば,主要な結論を把握できる。 |
5 | ・必要な情報を見つけるために, 長い文章にざっと目を通し,特定の課題遂行のための情報を収集できる。 ・特別な立場や視点から書かれた, 現代の問題に関する内容(記事やレポート)を理解できる。 |
6 | ・長い複雑な文章を独力で読み解くことができる。 ・さまざまな目的に合わせて,適切な情報源の素材を(見出しや要旨などを読んで)集めることができ,情報素材の種類に合わせて読み方を変えながら,独力でポイントを理解することができる。 |
7 | ・自分の専門分野に限らず一般的な分野で,抽象的な話題,内容的にも言語的にも複雑な話を読み, 重要事項を把握することができる。 ・自分の専門分野に関しては,非常に専門的な資料から,情報, 考え, 意見を読み取ることができる。 |
8 | あらゆる分野における,ある程度長い, 複雑な内容を詳細な点まで理解できる。意見表明だけでなく,含意された意見や立場も含めて詳細な点まで理解できる。 |
レベル | 説明 |
0 | ・簡単なあいさつを交わすことができる。 ・短く基本的な言い回しを使って,日常や自分のことについて,聞いたり答えたりすることができる。また, 情報の不足している場合は,それをジェスチャーなどで補いながら,聞いたり答えたりすることができる。相手からの協力が得られれば,短いやり取りをすることもできる。 |
1 | 日常の会話場面で, 相手からの協力が得られれば,学んだ語句や表現を使って,簡単なやり取りをしたり,単純な情報交換をしたりすることができる。 |
2 | ・短い社交的なやりとりができる。 ・日常的で,予測可能な身近な話題について, 単純な考えを伝えたり,情報交換をしたり,質問に答えたりすることができる。 |
3 | 日常生活に関連する話題( 家族,趣味,仕事, 旅行,時事問題) について個人的な意見を表明したり, 情報を交換したりすることができる。 |
4 | 自分の関心のある話題, 背景知識のある話題, あるいは自分の専門に関する話題について, 自信を持って話すことができ, それらについて情報交換をすることができる。 |
5 | ・個人的に重要な出来事や経験を強調しながら,関連説明をしたり,根拠を示して自分の見方をはっきりと説明したりすることができる。 ・母語話者を相手に, お互いにストレスを感じさせることなく,普通の対話や関係が維持できる程度に,流暢に自然に対話できる。 |
6 | ・幅広い話題について,流暢に,正確に, 効果的に言葉を使い, 自分の考えや意見を説明し,主張することができる。 ・複雑な筋立ての議論に対し, 説得力をもって見解を提示し, 対応できる。 |
7 | ・活発な議論についていき,賛成側と反対側の論理を的確に把握して,自分の意見を述べることができる。 ・インタビューを滑らかに効果的に行うことができる。相手の興味深い返答を取り上げ, 用意した質問を臨機応変に変えるなどして,さらに興味深い答えを引き出すことができる。 |
8 | ・グループで計画や方針を決めるために議論を組み立て, 他の人が言ったことを報告し, 複数のポイントを要約し,まとめ, 評価することができる。 ・抽象的かつ複雑で身近ではない話題でも,ディベートについていくことができる。 |
レベル | 説明 |
0 | ・基本的な情報(名前,住所,家族, 国籍) など, 自分に関することについて, 短い語句を並べて述べることができる。 ・人物や場所などについて, 学んだ語句や文から必要なものを選択して, 簡単に述べることができる。 |
1 | ・あらかじめ準備をすれば, 人物や場所,これからの行動や希望など身近な話題について,短く説明することができる。 ・話し終えた後, いくつかの簡単で単純な質問に答えることができる。 |
2 | ・リハーサルをすれば, 身近な話題について,短い基本的なプレゼンテーションができる。 ・意見や,計画, これからの行動について,事柄を列挙したり,簡単な理由を挙げて短く述べることができる。 ・話し終えた後, いくつかの簡単な質問に対処することができる。 |
3 | 背景知識のある自分の専門に関連する話題や自分の生活に直接関連のある話題について, 事前に用意すれば, 簡単なプレゼンテーションができる。 |
4 | ・自分の関心のある話題, 背景知識のある話題, あるいは自分の専門分野に関する話題について,練習しておけば,文章構造を持つある程度の長さのプレゼンテーションを行うことができる。 ・準備したプレゼンテーションの中で,物,国,地域, 計画などの類似点と相違点を説明することができる。 |
5 | ・自分の関心のある分野に関連した, 広範囲の話題について, 自分の考えや意見をはっきりと説明し,主張できる。 ・ある見方に賛成,反対の理由を挙げて, いくつかの選択肢の利点と不利な点を示すことができる。 |
6 | 社会問題や時事問題に関して,はっきりとした,体系的に展開したプレゼンテーションができる。重要な点や,関連する詳細事項を補足しながら, 主張を強化できる。 |
7 | あらかじめ用意された内容から臨機応変に離れて, 聴衆が喚起した興味ある事柄に, 流暢な表現で楽に対応できる。 |
8 | ・複雑な話題について,明確なきちんとした構造を持ったプレゼンテーションができる。関連する事例や補足事項, 理由などを詳しく説明し,論点を展開し, 立証できる。 ・聴衆からの不意の発言(難しい,あるいは敵意すら感じられる質問など)にも対応することができる。ほとんど苦労せずに自然に反応できる。 |
レベル | 説明 |
0 | 辞書を使いながら, 基本的な情報(名前,所属, 専門,学年,家族, 好き嫌いなど) を, 短い句や文を使って伝えることができる。 |
1 | 基本的な情報(名前,所属,専門,学年,家族, 好き嫌いなど) を, 短い句や文を使ってやりとりすることができる。 |
2 | メールや SNS で, 必要な情報を, 短い句や文を使ってやりとりすることができる。 |
3 | 相手にふさわしい文体で, 必要な情報を過不足なく書いてメールを出すことができる。相手からの返信に対して適切に返信することができる。 |
4 | SNS やメールで, 相手にふさわしい文体で必要な情報を問題なくやりとりできる。さらに社交的なやりとりもすることができる。 |
5 | ・依頼や詫びなどの機能で, 待遇表現に配慮したメールを書くことができる。 ・エッセイやレポートの抽象的な話題について簡単な情報を求めたり,自分の意見をつたえたりするメモを書くことができる。自分が重要だと思う点を相手に理解させることができる。 |
6 | 他者のレポートを読んで, 事実や重要な視点を効果的に要約し, 対照的な観点や主なテーマについてコメントしたりすることができる。コメントを相手に理解させたり, また意見を求めたりすることができる。 |
7 | 感情の度合いを伝え,出来事や経験の持つ個人的な重要性を強調しながら,相手の近況や考え方などに言及するメールや手紙を書くことができる。 |
8 | 個人的な通信の中で,自分が伝えたいことをはっきりと正確に表現することができ, 感情表現やほのめかしや冗談を交えながら, 柔軟で効果的な言葉遣いができる。 |
レベル | 説明 |
0 | ・辞書を使いながら,名前,住所, 国籍などの基本的な情報を書くことができる。 ・自分のことについて, 単純で簡単な文を使って書くことができる。 |
1 | 自分のことについて, 簡単な文を書くことができる。自分や身近な人々,自分の部屋などについて,ごく簡単な表現で描写することができる。 |
2 | 自分の興味のある身近な主題について, 平易な接続詞(「そして」「それから」など) を使って簡単な文章を書くことができる。 |
3 | ・写真と短い情報の断片を使用して,短いレポートや資料をつくり, 話題を提示できる。 ・日常的な事実について内容を要約して伝えたり, その事実についての考え(他者との相違など) を, 文章構造のフォーマットに沿って書くことができる。 |
4 | ・関 心 を 持 つ話 題 に つ い ての中程度の長さのエッセイやレポートを書くことができる。 ・自分の得意な分野, あるいは自分の専門に関連する内容について, 集めた事実情報をもとに, 総括し, 報告できる。 |
5 | ・いろいろなところから集めた情報や論拠をまとめることができる。 ・エッセイやレポートを書くとき,根拠を示しながら, ある観点への賛成や反対の理由を挙げることができる。また,様々な利点と不利な点を説明することができる。 |
6 | ・様々な考えや問題の解決方法を評価したり,根拠を示しながら,自分の主張をまとめることができる。 ・論点を整然と展開し,レポートを書くことができる。重要な点や関連する補足事項の詳細を, 適切に強調することができる。 |
7 | ・複雑なプロセスの詳細を記述できる。 ・実際,もしくは想像上の出来事や経験について,そのジャンルに相応しい文体で, 明瞭かつ詳細に記述文を書くことができる。 |
8 | ・複雑な話題について,明瞭な構造で,きちんと記述し,重要な関連事項を強調しながら,書くことができる。 ・読者として想定した相手にあわせて,自信を持って, 明瞭かつ詳細で,的確な構成と展開を持つ記述文や創作文を書くことができる。 |