ASEPからその先へ
グローバル化が進む中、未来を担う大学生たちが、国境を越えて環境、経済、政治などについて意見を交わすことは、非常に大切なことである。公益財団法人イオン環境財団が主催す る 「ASEP」 というプログラムをご存知だろうか。このプログラムは、アジア各国から、国 籍も専門分野も様々な学生たちが一つの国に集まり、フィールドワークやディスカッシヨン を通じて、自然環境や生物多様性について考察するというものであり、 2012年から毎年行わ れている。早稲田大学はASEPの共催者兼日本事務局であり、毎年早稲田大学の学生が日本 代表として参加している。2016年のASEPは、日本で開催される。
ASEPに参加した早大生は何を感じたのか、そしてASEPを支えた人々の目には学生の活動は どう映ったのか、今回、過去のASEP参加者を中心に、参加から2 年、 3 年経った今、再び その声を聞いてみた。すると早大生たちは、ASEPを通じ環境について考察する機会を得た と共に、その過程で、国境を越えた友情や、その後の学びへのバネも得ていたことが見えてきた。
★初めに、早稲田大学の学生の声を紹介する。
まずは、2013年に日本で行われたASEPに参加し、大学のゼミでは国際法を学んでいた、法 学部の K さん。
「3 ヶ国の学生が集まり、世界共通の課題でもある「環境」というものに対して課外活動を しながら議論するということは私にとって非常に貴重な経験でした。約一週間、海外の学生 と寝食をともにするということは文化の違い、習慣の違いを感じることも多々あり、大変な こともありましたが一方で海外から見た日本という視点を得ることができたと考えていま す。」
次に、2014年、大学 3 年次にASEPに参加後、マラヤ大学ヘ半年間留学へ行った、理工学部 のA さん。
「ASEPはその後のマラヤ大学への留学を有意義にしたものだった!ASEPで‘出会ったマレー シア出身の友人には、マレーシアに行ってもお世話になった。留学前に参加したことで、留 学地で何をやりたいかも明確になった。日本という国が想像以上にプレゼンスが高いことも 驚きで、一方でそれが下がってきているんだなと思った。だからマラヤ大学では日本文化を 広めたいと思って、色々な学生と交流するようにしていた。
今後に活かせることとしては、ASEPに参加した経験が次に何かをやるときの自信になると いうこと。あんな機会はあまりないし、あの時頑張れたから次も頑張れる、留学先でも頑張 ろうと思えた!環境に関しても、ASEPに参加したことで知見が深くなったし、この前は富士山の環境プログラムにも参加させてもらった。今思えばASEPが起点だった。」
次に、2014年、大学 2 年次にASEPに参加後、香港と上海へ半年間ず、つ留学へ行った、商学 部の T さん。
「私は2014年度の8月に、ASEP2014に参加しました。中国各地を巡った 1週間は、環境問題について考えるいいきっかけになりました。また、このASEPを通じて親しくなった各国 の友人とは、今でも連絡を取り合う仲です。また、私はASEPの翌月から香港へ留学したの ですが、外国人と本気で議論するというASEPでの経験は、その留学生活でも活きてきました。」
続いて、ASEPに2014年、2015年と、2年連続で参加した、理工学部の S さん。
「ASEPでは普段の受け身の授業とは違い、フィールドワークやディスカッションといった 主体的な学習ができ、新鮮であった。しかし、英語もディスカッションも、海外の学生の能 力の高さに圧倒されてしまい、もっと努力していかなくてはならないと感じた。また、文化 や宗教の違いを直接体験でき、世界の多様性を意識するきっかけとなった。ASEPは全てが刺激的で貴重な経験であった。2014年は周りに圧倒されディスカッション等でほとんど何も できなかったため、2015年ではもっと積極的に挑戦しようと思えた。結果として、普段では 絶対にやらないグループのリーダーに立候補し、2回の経験を生かしてディスカッション・ プレゼンを進めることができた。」
★次に、マレーシアの学生の声を紹介する。
マラヤ大学の F さん。Fさんは2014年にASEPに参加し、今年、今度はスタッフとして再びASEPに参加する予定だ。今年のASEPは日本で開催されるため、彼女も来日する。
「First of all I think ASEP is a good platform to share your environmental issue and thought to other country. You also could learn new technology and remedy to solve environmental problem. From my previous ASEP experience as a participant and member staff of university I feel that this programme give you a lifetime experience to know more friends and being connected with one each other to change global environmental issue i.e. climate change, flash flood etc. Overall, in joining ASEP I had gained lot of environmental knowledge, networking and an opportunity to share my country environmental issue to the other country.
I will join ASEP 2016(held in Japan)as staff member university this coming August.」
★最後に、ASEPを支えた人々の声を紹介する。
2014年に5か国の学生を引率し、全8日間ASEPに同行した、添乗員のMさん。
「アジアを代表する5カ国の有名大学から選抜された学生さんたちが、環境をテーマにした 高度な議論や発表を英語で行い、異文化交流を通じてお互いを認め合い、刺激を受けて成長 し続ける姿を見て、純粋に感心して憧れました。自分も皆さんの姿を見て「何かを成し遂げ たい」という焦燥感も同時にありました(笑)
臨しい皆さんを見て「負けてられない! 」と励みになりました。近い将来を背負って活躍し ていく大学生たちが、自分の熱意と実行力と周りのサポートを受けながら成長する姿に感動 しました。」
早稲田大学留学センターでASEPを担当し続けている、Hさん。以下 2 つの質問に答えて頂い た。
Q1: 職員としてこのプログラムに参加し見ることが出来た、学生の成長、及び、学生の当 プログラムや国際交流に対する姿勢を教えてください。
A: 「学生が積極的に国際交流に関わる様子が窺えました。英語力の向上はもちろんのこと ですが、意見の衝突や考え方のぶつかりに恐れず、思いっきり議論に参加できたのが学生に とって一番の成長ではないかと思います。また、学生の成長は、プログラム最中だけではな く、ASEPをきっかけとして、国際交流に関心をもつようになり、留学やインターンシッブ に取り組みはじめた学生も多数いました。」
Q2:早稲田大学として、多国間プログラムで、新しくこのようなものを作りたい、という アイディアがありましたち教えてください。
A:「ASEPは学生を対象とした教育プログラムですが、SGU事業の採択に伴って、今後教員や研究者を対象とした多国間の研究プログラム・プロジェクトも大学内で検討しております。」
いかがだっただろうか。ASEPでのディスカッションを通じ、参加者たちは環境に関して知 見を深めたともに、国境を越えて意見を伝え合い、相互理解をし合う素敵な仲間を得たよう だ。また、ASEPはその後の学びへの意欲を高めるきっかけにもなったようだ。
政治的背景等を越え、大学生をはじめとした若者たちがグローバルに交流することは、今後 の社会を良い方向へ導く上でも、そして彼らの成長にとっても非常に大切なことだ。
今回は早稲田大学が共催するASEPを紹介したが、ASEPのようなグローバルフォーラムの開催、参加に、早稲田大学が今後も積極的に関わり、学生の成長に貢献していけたらと思う。