【社会科学部報No.52掲載】「利他主義」のススメ。
4年 南波 優さん
Profile
南波 優(なんば まさる)
戸山高校出身
多賀ゼミ所属
AIESEC(アイセック)*に所属し、世界中のスタッフと共に海外インターンシップを実施、企業を招いてのEntrepreneurship、CSR、キャリアデザイン、HIV/AID・貧困・環境など、多種多様なセミナーを積極的に開催している。日本人の学生を海外に送り出すということを日常的に行っており、自身もマレーシアでの国際会議やポーランド、インドへの研修を経験。また、午前中には、小学校での学生ボランティアも週5日、行っている。
Q. アイセックに参加されたきっかけは?
A. 高校生のころはアメフトをしていて、都大会でも優勝をしたのですが、早稲田に入ったら、アメフトではなく、何かもっと社会に貢献するというか、還元できる活動をしたいと考えていました。小学校の恩師に、社学に合格したことを報告した際、学生ボランティアを紹介され、それをやっていたんですが、それだけだと何か物足りなくて。その時たまたま「国際ボランティア」という文字が書かれたチラシを見つけたんです。これだ!と思って。ラッキーでした。
Q. 早稲田に進学された理由は?
A. 高校が早稲田のすぐ近くで、いつの間にか早稲田志望になっていました。社学に合格できて、本当に嬉しかったです。社学じゃなかったら、ボランティアもしていないし、アイセックにも入っていないだろうし、多賀先生にもお会いしていないと思うと、ゾっとしますね。ゼミの内容も多種多様で、社学らしくて、面白い。
Q. 研修ではどのようなことをされたのですか?
A. ポーランドへはStowarzyszenieHandicapというNGOで知的障害児に対しての教育、教員の授業サポート、日本文化紹介をしました。インドへはSaheliというセックスワーカーのためのNGOで学校の調査や日系企業からのファンドレイズ、ウェブサイトの改良を行ってきました。自分が経験したことは多くの人に発信していきたいです。アイセックに参加した人の多くは経験を将来に活かしたい、と言いますが、僕は今すぐにでもできるんじゃないかと思っています。YouTubeに映像をのせたり、学校で講演したり。多くの人に知ってもらいたいことがたくさんある。インターン参加費も自分で、図書券を換金して、集めたんです。小学校のボランティアで図書券を毎回もらっているのですが、それを使ってしまうと、子どもと接していることが、換金されているような気がして、ずっと使えなくて。一年間で30万以上になった。使い道も図書館を開こうか、小学校に本を寄贈するか、ユニセフに渡すか、色々考えたのですが、このためのものだったんだ、って。人に頼んで、その都度、理由を説明して換金したんです。 僕は、なんというか、早稲田に入った人は、他の人たちに対して社会的責任があると思っていて、ここで学ばせてもらえている自分に何ができるかをいつも考えていきたいんです。たとえば、途上国のことを伝えたらフリーターの人が働こうという気になるかもしれないし、学校がつまらない、と登校拒否している子が学校に行くようになったり、勉強ができる喜びを知ったり。いじめや、自殺、そういうのが無くなる社会にしたい。
Q. 活動の中で苦しかったり、葛藤したこともありましたか?
A. 現地の人たちの価値観と、僕がこうしたほうがいいと考えていることが違ったり、葛藤はたくさんありました。「平和」を考えても、全然違う。非力な自分に何ができるんだと悩んだときも、ゼミの人が助けてくれたこともあったし、仲間が応援のメールをくれたり、アドバイスをくれたり・・・。そのひとつひとつが力になりました。英語も、インターンに行くために勉強しました。参加前はTOEIC580点くらいしかなかったのが、いまは800点以上あります。
Q. 心掛けていることは?モットーとしていることはありますか?
A. 「人生の価値というのはどれだけ自分が幸せかではなくて、どれだけ多くの人に幸せを与えられたかにある」ということです。単純に、途上国の人のために何かしたい、とか、障がいのある人たちにもっと住みやすい社会を作れないかな、とか思って行った結果、得られる成長があると思います。 以前、インドで働いている大手企業のビジネスマンと話したのですが、インドの貧困について知らなかった。ショックでした。それって、ただお金儲けのためだけなのか?それは違う、なんなんだろうなと。途上国の人ってかわいそう、っていうイメージがありませんか?実際にそこに住んでいる人たちは本当に強くて、むしろ、日本の方がかわいそうな部分ってたくさんあるんですよね。海外に行くことで自国のことを知ることになったし、日本のことをもっと知らないといけないと感じました。
Q. これから行っていきたいことはありますか?
A. 2回研修に行った経験を生かして、世界の現実を伝えるために、全国のアイセックの大学の委員会をまわりたい。北海道から九州の24大学です。アイセックで、人脈はもちろん拡がったし、世界全大陸に友達ができました。40カ国以上です!この間は国際郵便で誕生日プレゼントも届いたんですよ。離れ離れになって別れても、出会った人は一生心に残る。本当に、一生の友人を大学生活の中で得られたと思っています。
Q. 新入生、在学生に向けて。
A. 何でもいいから、一生懸命に何かをやってほしい。一生懸命であれば、絶対にかっこいい。そしてもっと利他主義になって欲しい。自分のためにしようとすることには限界があるけど、誰かを動かそうとか、他人のため、っていうのには限界がない。僕もいっぱい失敗しました。でもチャレンジをしないと失敗もしない。ぜひ何かにチャレンジをしてください。
*世界100カ国の地域にネットワークを持つ、世界最大の学生NPO。そのネットワークは年々着実に増加しており、そのすべての国において研修生として行くチャンスがある。日本国内においては24の大学に委員会があり、1000人近くの学生が活動を行っている。1948年の設立以来、一貫して海外インターンシップ事業を行い、国際社会を舞台に活躍しえる若者を育成している。
好きな映画は『Pay it Forward』という南波さん。他人から受けた思いやりや善意をその人に返すのではなく、周りにいる別の人へと贈る。「良いこと」を3人の人にして、それを「次の3人にしてあげて欲しい」と伝える。それが9人に、27人に・・・と広がってゆく物語。人が人のために動く世界を作りたい。そんな心の種が早稲田の学生5万人の心に撒かれたら、世界を変える力になるかもしれませんね。
(聞き手・構成:志熊万希子)
掲載:社会科学部報No.52