School of Social Sciences早稲田大学 社会科学部

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【社会科学部報No.55掲載】「ダブルディグリー・プログラム」を修了して

【社会科学部報No.55掲載】「ダブルディグリー・プログラム」を修了して

2010年卒 佐々木 香恵さん

Profile
佐々木 香恵 (ささき かえ)

創設者の大隈重信が掲げていた「東西文明の調和」という思想に基づき、早稲田大学が目標としているひとつが、「アジア太平洋地域における知の共創」です。これは、アジア太平洋地域に根ざした人や知識の交流によって、新しい理解・考え・国際的な潮流を創り出そうとすることです。その実現に向け、海外大学と教育面での連携を促進すべく新しい共同教育プログラムの実施を検討し、生まれたのが「ダブルディグリー・プログラム」です。 これは、相手大学への留学を通じ、卒業時に、当学の学位と相手大学の学位を取得できる教育プログラムです。 プログラムの基本構成は、当学・相手大学とも、原則として、既存のカリキュラムに基づいています。つまり参加学生は、相手大学の正規学生とともに机を並べて科目を履修し、定められた学位授与要件を満たすことが必要です。相手大学が使用する言語での高度な読解力・聴解力・会話力が求められますが、その分、専門的・集中的な知識を得ることができるでしょう。努力の結果は、相手大学の学位取得という目に見えた形で現れます。参加した一人ひとりが、「知の共創」の主役になるのです。 このプログラムへ参加した社会科学部OGに、入学から卒業、現在に至るまでを語っていただきました。

Q. 早稲田大学の社会科学部を選び、入学されたのはなぜですか?
A. 学部名を知った当初は、何を学ぶ学部なのかまったく想像がつきませんでしたが、「スペシャリストではなくジェネラリストを養成する」という学部のコンセプトに、とても憧れた記憶があります。今起こっている社会現象を、1つだけの学問的視野からではなく、総合的に考えられる、広い視野を持った人間になりたい、という理由から、社会科学部を選んで入学しました。

Q. どのような学生生活を過ごされましたか?
A. 社会科学部は、他の学部と比較して、とても自由度が高い学部だと思います。必修科目やクラス単位の授業もほとんどなく、4年間という時間を自分の判断で自由に使うことができました。もちろん自由に選び取ることができる分、選び取るまでの手段や方法は自分で動いて探しにいかなければ何も与えられませんし、責任もすべて自分に降りかかってきます。そのような自由と責任の伴う環境の中で、自分が興味を持ったことに自由にチャレンジできた4年間でした。

「民族与国際政治(民族と国際政治)」クラスのみんなと。前列左から3番目

「民族与国際政治(民族と国際政治)」クラスのみんなと。前列左から3番目

たとえば、授業で国際協力に興味を持ち、友達と、自分たちでも参加できるボランティアはないか探して、ベトナムの農村まで車イスを運んでみたり、留学中も、現地に駐在しているOBの方にお願いして、新聞取材の通訳のバイトをさせてもらったり、振り返ると、学生でなければできないような体験をしていたと思います。

Q. ダブルディグリー・プログラムに参加しようと思ったキッカケはなんですか? A. ダブルディグリー・プログラムは、語学留学と異なり、現地の学生とほぼ同じカリキュラムで勉強します。一緒に机を並べて勉強し、テストを受け、単位が基準を満たせば学位が授与される仕組みです。参加しようと思ったキッカケは、語学だけでなく、学位も貰えるという「お得感」に惹かれたこともありますが(笑)、北京大学という中国トップの名門大学で、未来のエリートたちがどのような教育を受け、どのような考えを抱いているのか、私も体験してみたいと強く興味を持ったからです。

西蔵旅行にて

西蔵旅行にて

Q. ダブルディグリー・プログラムに参加してみて、愉しかったこと、苦しかったことなど、エピソードがあれば教えてください。
A. 先述のように、一石二鳥のプログラムだと思って参加しましたが、もちろん甘い話で終わるプログラムではありませんでした。苦しかったことで真っ先に思い出すのは、二週間毎日教科書を暗記し続けた試験前です。北京大学では文献丸暗記型の筆記試験が多く、現地の学生と一緒に、朝から晩まで図書館や寮にこもって泣きながら暗記した記憶があります。
愉しかった、というより興味深かったことになりますが、中国の多元性を直に感じられたことです。日本では「中国は」や「中国人は」と一言で語られることが多いですが、漢民族や少数民族、また、都市出身者や農村出身者などの違いによって、思想やその背景にある社会環境も大きく異なります。たとえば、都市出身の学生では、民主化というキーワードに対してもリベラルな見方が多かったですが、すぐさま農村出身の学生が「地方の実状をわかっていない!」と反論しているのが印象的でした。また、中国外交史の講義では、教授がチベットと中国(政府)の歴史に触れた際、チベット族の友達が「侮辱された!許せない!」と、身体を震わせて怒っているのを目の当たりにし、あらためて「中国」の多元性、複雑さを痛感しました。

北京大学卒業式 左から3番目

北京大学卒業式 左から3番目

Q. ダブルディグリー・プログラムに参加して、得られたものはなんですか?
A. このプログラムでないと得られないわけではありませんが・・・このプログラムに参加した一年での最大の収穫は、「キャパシティは創り出すもの」というチャレンジ精神だと思います。このプログラムで、勉強に追われて一年を終えることもできるでしょう。でも、「これ以上やれば自分のキャパシティーを超えてしまう」と、手を伸ばすことをあきらめたりせず、自分のキャパシティーを拡げる機会を持つことも大事だと思います。実際、通訳の仕事を通じて、多くの専門用語を学ぶと同時に、留学生という肩書きでは会えないような方と話す機会をいただくことで度胸もつき、自分のキャパシティーが拡がりました。

学位授与式 前列右端

学位授与式 前列右端

Q. 現在のお仕事をご紹介ください。
A. 住友林業株式会社の木材建材商社部門で、主に経理の仕事をしています。

Q. 社会科学部での学生生活が今に活かされていることがあれば教えてください。
A. 社会人としては新米なので、学生生活の何が活かされているか痛感するような経験をまだ積んでいないとは思います。ですが、社会科学部で培った積極進取の姿勢やかけがえのない人脈(友人や先輩、教授)に支えられていると感じることは多く、非常に感謝しています。

Q. 仕事での今後の目標や展望を教えてください。
A. まずは、経理の業務をちゃんとこなせるようになることです。長期的な目標としては、経理で学んだ知識も活かしつつ、海外事業を推進できる人材になりたいと思っております。

Q. 受験生・新入生にメッセージをお願いします。
A. 四年間という時間が与えられ、自分の裁量でどんな学生生活にもなる。そういう意味では、社会科学部生は、一番自立が求められているのだと思います。自分が一歩踏み出せば、結果は2倍にも3倍にもなって返ってきますし、それだけの環境が整っている学部です。みなさんも是非、自分に妥協しない学生生活を送ってください!

お忙しいところ、ありがとうございました。

(構成 大山雄一郎)
掲載:社会科学部報No.55

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