【社会科学部報 No.44掲載】障がい者スポーツを通じて
社会科学部4年 細川 将
幼い頃の記憶をたどってみても、常に身体を動かし走り回っていたイメージがある。それは無邪気さとはまた違った、確かに好きだという感情－。
七歳の頃に左腕切断という障がいを負ってからもそれは全く変わらなかった。小学校・中学校・高等学校と運動部に所属し、健常者の中に混じって負けまいとがんばってきた。
そんな私であるが、障がい者スポーツを始めたのは早稲田大学二年のときであった。競技は水泳である。これまで主に陸上競技を得意としてきた私にとって、これは色々な意味で大きな挑戦であった。障がい者スポーツということに関しても、はじめは抵抗があったが、大会に出てみると、健常者の大会となんら変わらない100分の1秒に凌ぎを削る過酷な勝負の世界である。このことはわたしに大きな驚きとともに、かすかな安堵の気持ちをもたらした。水泳はほとんど初心者であったが、次第にのめりこみ、パラリンピックを目指すようになり、今に至っている。
障がい者スポーツを通じて、普通に大学で生活していたら決してないであろう、様々な人達との出会いがある。私の所属している障がい者の水泳団体をはじめ、障がい者スポーツをしている人達は、それぞれに種々の障がいをかかえ、年代もばらばらで、勿論同年代もいれば、上も下もいる。スポーツに対する関わり方も 多種多様で、大会を目指してがんばっている人もいれば、リハビリとして嗜んでいる人もいる。しかし、共通して言えることは、障がいを悲観的にとらえている人は誰一人としておらず、皆いきいきとスポーツを楽しんでいるということだ。そして皆口を揃えてスポーツが「好き」だという。私はここにスポーツの原点とは何たるかを改めて実感したような気がした。もはや「障がい者スポーツ」とは呼べない純粋な「スポーツ」がそこにはあるのだ。また、多くのボランティアの方々が障がい者スポーツを温かくサポートしてくれている。障がい者は我々に助け合い寄り添うことの大切さを気づかせてくれる存在であるということを、我々は忘れてはならない。
わかふじ大会金メダルを手に（筆者：中央）
このように、障がい者スポーツを通じて、多くの人達に出会えるのは、とても貴重な体験であり、楽しみでもある。皆さんも大学という枠にとらわれず、様々なフィールドへ勇気を持って飛び出してみよう！きっとわくわくするような刺激的な体験があなたを待っているはず！
2003年の8月、二度目のジャパンパラリンピックに出場した。今回の大会は2004年のアテネパラリンピックの選考会を兼ねて行われた。結果は、出場した全ての種目でベスト3に名を連ねることはできたが、世界標準にはまだもう一歩という記録に終わってしまった。しかし勿論これであきらめたわけではない。パラリンピックという夢の大舞台目指して、これからも日々練習を積み重ねていきたい。
早稲田大学には自由が溢れている。無限の可能性を秘めた自由だ。しかし、一歩履き違えてしまうと、ただ徒に時を過ごしてしまって、悔いだけがのこってしまったということにもなりかねない。そうならないために、しっかりと未来の自分を見据え、大学生活の目標を立てよう。いや、それだけなら誰にでもできる。重要なのは、強い信念を持って、その目標に対する情熱を持続させることである。そして一日一日を大切に過ごし、毎日寝る前に、「昨日よりは成長した自分」を実感できれば最高なのではないか。その先に必ずや青春のゴールが見えてくるに違いない。がんばれ、早大生！
掲載：社会科学部報No.44 2004年春号
Profile
細川 将 （ほそかわ まさる）
1981年生まれ、岩手県立盛岡第一高等学校出身。
主な受賞暦（障がいの区分ごとに種目は分かれています）
2002年度
第12回ジャパンパラリンピック
50M自由形2位
100M平泳ぎ3位
第19回全日本身体障がい者水泳選手権大会
100M平泳ぎ3位
2003年度
第13回ジャパンパラリンピック
50M自由形2位
100M平泳ぎ3位
100M自由形優勝
第20回全日本身体障害者水泳選手権大会
50M自由形2位
100M平泳ぎ2位
第3回全国身体障害者スポーツ大会（わかふじ大会）
100M平泳ぎ優勝
50M自由形優勝［大会新］
