- 研究番号:25C04
- 研究分野:bio
- 研究種別:奨励研究
- 研究期間:2025年04月〜2026年03月
代表研究者

神平 梨絵 理工総研が募集する次席研究員
KAMIHIRA, Rie Junior Researcher
理工学術院総合研究所 中尾 洋一 研究室
Waseda Research Institute for Science and Engineering
URL:https://w-rdb.waseda.jp/html/100003235_ja.html?k=%E7%A5%9E%E5%B9%B3++%E6%A2%A8%E7%B5%B5
研究概要
ヒストン修飾は、DNA配列の変化を伴わないエピジェネティックな遺伝子発現機構の一つである。真核生物の核内では4種類のコアヒストン(H2A,H2B,H3,H4)が2分子ずつからなる八量体にDNAが巻き付くことでヌクレオソームを形成している。ヒストンのN末端領域はヒストンテールと呼ばれ、リジン残基などはメチル化やアセチル化のような化学修飾を受けて、遺伝子の転写調節を行っている。ヒストン修飾の部位と修飾の種類、そして修飾レベルは、組み合わせとなって機能するというヒストンコード仮説が提唱されており、細胞の分化、慢性疾患等、生命現象に関わることが示唆されている。しかしながら、ヒストン修飾の複雑なパターンと生物学的意義については未解明な点が多い。
そこで本研究では、独自のセルベースのヒストン修飾評価系を用いて、ヒストン修飾レベルに変化を起こす機能性成分の探索や、ヒストン修飾パターンを検出することにより、ヒストン修飾と機能性の関連性を明らかにすることを目的とする。
本研究ではヒストン修飾パターンと機能性の関連性を解析するためのデータベース構築を目的に、機能性関与成分や生物活性を有する化合物などのヒストン修飾パターン(パネル)を取得する(方法①)。一方、食品および化粧品成分によるヒストン修飾変化を検出して、機能性成分の機能解析を行う。ヒストン修飾レベル調節活性を有する成分を明らかにすることで、成分による新たな機能性を見出す(方法②、③)。
【研究方法】
- ヒストン修飾パターン(パネル)の取得とデータベース化
機能性成分によるヒストン修飾パターンを取得し、プロファイルとしてデータベース化を進める。
- 食品由来の成分および化粧品向けエキスからのヒストン修飾調節活性成分の探索と同定
食品や化粧品向けのエキスに関してはヒストン修飾調節活性の変化をもたらす成分探索を行う。活性の認められたサンプルについては、各種クロマトグラフィーによる分画により、活性本体の同定を行う。
- ヒストン修飾レベルの変化の見られた領域の解析
ヒストン修飾レベルの変化の起こる遺伝子領域をChIP-seqによって解析する。
ヒストン修飾パターンと機能性の解析は複雑なため、AI解析や機械学習を用いる予定である。
近年、生物学的な老化の指標の一つにエピゲノム変化が挙げられるように、ヒストン修飾を調節する化合物は慢性疾患の予防や健康寿命の伸長に繋がる可能性が期待される。将来的にはヒストン修飾パターンと機能性を紐づけた独自のデータベースを構築して、ヒストン修飾パネルを用いた機能性予測システムの開発を試み、化粧品やサプリメント開発における新たな機能性の発掘に貢献したい。