- 研究番号:25C15
- 研究分野:science
- 研究種別:奨励研究
- 研究期間:2025年04月〜2026年03月
代表研究者

西村 好史 理工総研が募集する次席研究員
NISHIMURA Yoshifumi Junior Researcher
理工学術院総合研究所 中井 浩巳 研究室
Waseda Research Institute for Science and Engineering
URL:https://w-rdb.waseda.jp/html/100001416_ja.html
研究概要
申請者らが開発した大規模量子分子動力学計算手法とDcdftbmdプログラムは、数千~数万原子からなる複雑系を用いて電子移動や化学反応が関与する現象を原子・分子の運動として理解することを可能とする計算化学技術である。本技術の社会実装を推し進めるための取り組みとして、これまでに他の計算化学ソフトウェアと連結して高度なシミュレーションを実行するための枠組みの開発や化学反応イベントの加速サンプリングアルゴリズムの拡張、プログラムマニュアルの整備充実などを行ってきた。最近報告された計算パラメータの拡充によって本手法で計算可能な元素は周期表の第6周期まで網羅され、Dcdftbmdに基づく大規模量子分子動力学計算の適用範囲は今後ますます広がると予測される。本研究では、多岐にわたる計算内容に対応できるようにDcdftbmdの機能を強化し、他の研究者でも容易に利用できるように整備することを一つ目の目的とする。また、計算結果から所望の知見・物性値を引き出すための方法が未確立なものについて解析手法を考案し、手順の標準化に貢献することを二つ目の目的とする。
最終年度となるプロジェクト研究・奨励研究の集大成として、所属研究室で理論発展がなされてきたシミュレーション機能の統合を完了させる。具体的には、平均場近似に基づく非断熱分子動力学法やスピン軌道相互作用を考慮した励起状態計算手法について、単なる移植にとどまらずプログラムの実行速度の向上やメモリ使用量の削減などを意識した最適化を施す。最終的なプログラムを成果物として公開するためのパッケージ更新作業についても対応する。
・解析手法の開発
Dcdftbmdプログラムには、反応空間の周期的な圧縮・緩和により化学反応を効率的に見出すことが可能なシミュレーション手法が実装されている。化学反応の熱力学的性質を理解する上で、反応経路に沿った自由エネルギー変化の算出は重要である。本研究では、反応空間の周期的な圧縮・緩和という非平衡過程の自由エネルギーを系になされた仕事のアンサンブル平均から求める方法の開発を目指す。化学反応の効果的な加速と自由エネルギー解析の両立により、化学反応探索と反応経路計算を別々に実行する従来のアプローチと比較して計算コストの削減が期待される。