- 研究番号:17C15
- 研究分野:environment
- 研究種別:奨励研究
- 研究期間:2017年04月〜2018年03月
代表研究者

脇田 健裕 理工研が募集する次席研究員
WAKITA Takehiro Researcher
理工学研究所 曽田 五月也研究室
Research Institute for Science and Engineering
研究概要
薄板軽量形鋼造は各部の仕様が簡素かつ省資源であり、設計・生産・施工が簡易で、高い経済性・耐久性を発揮する等の特徴を持つが、わが国では未だ一 般的な認知度は低く普及には至っていない。2012年の国土交通省告示第1641号の改定により、薄板軽量形鋼造は4階建て迄の建築が可能となった。しか し、現行の耐力壁(合板+石膏面材)を用いて、4階建て建築物の試設計を行うと、低層階には相当量の壁数が必要となるため、建築計画の自由度は大きく阻害 されることが予想される。また、従来のような剛性・強度型の耐力壁を用いて4階建て建築物の耐震性能を確保しようとすると、加速度応答が過大となるだけで なく、耐力壁を支えるたて枠や金物、基礎に作用する応力が非常に大きくなるため、これに対応するための各部仕様が大型・複雑化することとなる。その結果、 生産性・施工性の大幅な低下とコスト増大が避けられないものとなり、スチールハウスの省資源かつ簡素な仕様という長所を大きく減ずる結果となる。
そ こで、本研究では摩擦式エネルギー吸収機構を内蔵する薄板軽量形鋼造耐力壁を用いることで、地震時に建築物各部に生ずる応力及び損傷を合理的に抑制しなが らも、耐震性能を飛躍的に向上させて中層建築物にも適用可能な建築構造システムを開発することを目的とする。提案する建築構造システムは高減衰であるた め、過酷な地震動の入力に対して変形と加速度の応答を同時に抑制し、かつ余震等の繰り返しの振動に対しても高い耐震性を維持することが可能である。本研究 成果により、これまで低層建築物のみに用いられてきた薄板軽量形鋼造を、中層建築物に対しても合理的かつ経済的に適用することが可能となる。本研究では、 提案する構造システムの理論的な提案に留まらず、具体的かつ実用的な耐力壁及び各種接合金物の開発を行い、その性能について解析と実大試験体による実験的 な検証を重ねた上で、構造設計法の構築までを行う。持続可能な社会の実現において、建築物の地震時の安全性向上及び省資源化・長寿命化は外すことの出来な い重要なテーマであり、本研究で提案する構造システムの実用化が、その実現に大きく寄与するものである。