産業用のオープンネットワークは,フィールド機器から上位のマネジメント機能を担う,ISSA-95 モデルの Level 3 相当までが産業用 Ethernet ベースの物理接続が標準的な技術となりつつある.プロセス産業用特有の防爆対応だけではなく,オペレーションデータをさまざまな分析機能を利用することで,アセットマネジメントに有用な情報を抽出するような,データ価値の創出が可能になりつつある.
本シンポジウムは,毎年度末のこの時期に,産業用のデジタル通信規格を用いた現場の運用デー
タすなわちフィールドデータの利活用を中心に,ユーザ事例を交えて討論する場として設定している.
今回のテーマは,「オペレーションデータ連携を活用したスマート製造の事例紹介と考察」とした.Digital Twin 技術についての紹介が 1 件と,ユーザ事例が 2 件報告された.
株式会社オメガシミュレーション菅家 正幹氏からは, Digital Twin を実現する「ミラープラント」技術と、その適用事例を紹介された.IO-Link 技術を使った事例紹介としては,日本車輌製造株式会社 機電本部 開発技術部 制御グループの佐藤友治氏から事例紹介があった.大型くい打ち機のセンサー等とコントローラとの接続を標準化されたデジタル通信デバイスを利用することで,特注品の開発の手間とコストを削減し,システム拡張性も大きく広がった事が報告された.
ダイキン工業株式会社 鹿島製作所の吉田真澄氏からは,従来の DCS プロセス変数に加えて、HART 変数と AIを組み合わせることでモデル精度を向上させた異常予兆検知事例が紹介された.これらの事例紹介を踏まえて,パネル討論では,オペレーションデータ連携を活用したスマート化のこれまでの状況から,工場内,装置におけるデータ連携基盤の充実もあり,現実的に有効な事例が生まれ始めていることが認識された.