東京理科大学・教授 椎名勇氏より「臨床試験を目指した全合成研究ならびに生命現象解析ツールとしての有機合成化学」の演題でご講演いただいた。椎名氏は、環状エステルのラクトンの合成に大学院生時代より取り組み、当時困難とされた8,9,10員環の合成に挑戦したアイディアと、脱水縮合剤のTFBAを見つけ実現した経緯が紹介された。続けて研究室を主催してからより実用的なマイルドな塩基性条件へ展開、MNBAを開発、多様な分子合成と詳細な作用機構が説明された。さらにMNBAが市販され世界中で多様な研究に利用されている現状、および抗がん剤開発の最先端の取り組みが紹介された。続けて質疑応答と討議がなされた。まず4名の学生より、MNBAの作用機構の詳細、抗がん剤としての作用機構および有効性評価の基準、社会実装時の希薄条件での反応の溶媒の環境負荷に対する対応、フロー合成による溶媒削減の可能性など、基礎、応用、実装の多面的な観点から質問がされた。また5名の教員より、反応や作用機構に関する詳細な質問に加え、最先端の創薬研究での守秘義務と学会・論文発表の両立の仕方、大学の研究の社会への波及の在り方、およびグリーンケミストリーの観点からの連携などの質問・発言がなされ、社会実装研究の在り方についても活発に議論がなされ、終了予定時刻の18:00を超過して閉会した。