理工学術院総合研究所(理工総研)の若手研究者育成・支援プログラム『アーリーバード』にとって後期活動はプログラムの本番ともいえる重大事案です。前期活動の終わり、8月5日にはこのために第11期初の対面ミーティングを行い、メンバーが希望する活動内容のアンケートをもとに、後期活動について議論しました。具体的な活動計画をたてるために9月末からオンラインミーティングを再開し、若手研究者の招待講演と共同研究計画の2本立てで臨むことになりました。
この招待講演は、アーリーバードの経験者を中心にメンバーが話を聞きたい若手研究者を提案し、提案者が講師依頼を行って実現しました。講師候補は多数挙げられたため、6名の講師を2回に分けて、3名ずつ講演をしていただくことになりました。第1回目の講演会は11月8日月曜日、18時からオンラインにて開催され、本編終了後も引き続きオンライン懇親会へと続きました。以下、幹事がこの講演会についてレポートします。
早大出身の若手研究者を迎えて:ベンチャーのリード・エンジニアの視点

今井さんのスライドより
今回は3人の研究者の方にお話を伺った.
今井良輔さんは,基幹理工/電子物理学専攻の山中研究室ご出身で、物性物理学の理論的研究で博士号を取得し,材料科学専攻の助教を経て,現在は量子コンピュータベンチャーのQunaSysにて,ソフトウェアエンジニアをされている.博士や助教の経験は研究や計画,マネジメントなど様々な面で活きているという.今井さんがベンチャーを選んだ理由は,小さな組織の方がいろいろなことを経験できると考えたためであり,他にも会社全体に関わりたい,失業リスクを許容できる,自分から動きたいという人はベンチャーに向いていると話してくださった.
航空宇宙学から外資系企業の研究所へ

小野崎さんのスライドより
小野崎香織さんは,基幹理工/航空宇宙専攻、吉村研究室のご出身で航空宇宙学の研究で博士号を取得し,現在は日本ミシュランタイヤで研究や開発をされている.大学と企業における研究を比較すると,大学は社会の役に立つ,専門性が高い,成功を発表するのに対し,企業は,製品に直結し,何でもやる,失敗も記録するといった特徴があるそうだ.個人的には,よく抱きがちな外資のイメージとは異なり,年収は日本企業の平均程度,タイヤ関係の人材育成はコストがかかるため馘にはなりにくい.残業なしで,フランス文化に習い休みを重視.といった点が興味深く感じた.
理論化学から実学思考へ

大越さんのスライドより
大越昌樹さんはアーリーバードプログラムの2期生で,先進理工/化学・生命化学の中井研究室のご出身であり、理論化学の研究で博士号を取得し,助教を経てパナソニック株式会社でリチウムイオン電池の開発等をされている.実学思考でチームで取り組みたいと考え,数年後自分の分野のニーズが大きくなると予想し,ポスドクを経て企業に就職したとのことだ.学生時代から学会等を通じて人脈を広く築いたおかげで,様々なところからオファーをもらったというのは,自分もぜひ見習いたいと感じた.
文責:基幹理工学研究科材料科学専攻 博士後期課程1年 佐藤峻