- 研究番号:16P18
- 研究分野:science
- 研究種別:プロジェクト研究
- 研究期間:2016年04月〜2019年03月
代表研究者

鳥居 祥二 教授
TORII Shoji Professor
先進理工学部 物理学科
Department of Physics
URL:http://www.crlab.wise.sci.waseda.ac.jp
研究概要
宇宙物理学における未解決な重要問題として、高エネルギー宇宙線の加速、伝播機構や暗黒物質の解明を行う目的で、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォーム(曝露部)において、大型観測装置(CALET:Calorimetric Electron Telescope)による観測を実施する。宇宙科学観測は電波、赤外線、可視光、X線、ガンマ線という全波長領域の電磁波観測がおこなわれ、宇宙の多面的な描像が明らかにされている。これらの観測では、新たな観測領域の開拓によって、しばしば物理学の新たな原理の発見が行われている。宇宙はこの意味で、物理学の巨大な実験室であり、地上では実現されない「長時間」かつ「大規模」な実験が行われているともいえる。宇宙科学の未解決な問題の多くは、、これまでのような電磁波観測だけでは解決の困難な課題が多く、本研究では、宇宙線観測によって宇宙初期の高エネルギー状態や非熱的宇宙の解明をめざす。
国際宇宙ステーションでは、日本実験モジュール船外プラットフォーム(JEM・EF)をよばれる宇宙空間に曝露された実験サイトが準備されている。このサイトでは、従来の衛星観測では不可能な大型観測装置による長時間の宇宙線観測が可能となる。本研究の目的である、宇宙線観測による非熱的宇宙の解明や暗黒物質の探索では、フラックスの少ない希少粒子(電子、ガンマ線)を高エネルギー領域で観測するため、面積が 2500cm2、重量が650kgに及ぶ大型かつ高性能な観測装置(CALET)を用いて、少なくとも2年間の観測が必要である。我々はこれまでに、財団法人日本宇宙フォーラム、三菱財団、科学研究費基盤Sなどの外部資金やJAXAとの共同研究資金により、装置開発を実施してきた。CALETは、JAXA-早大共同研究として平成27年8月に打ち上げられ、現在順調に観測を実施しており、5年間の予定で観測を実施する。打ち上げ後のサイエンス成果発信のためデータ解析センターの設置による運用・データ解析が、早大-JAXAの覚書により早大側の任務分担となっている。このため、本プロジェクトでは、平成26年度より理工研(喜久井町キャンパス)内に早稲田大学CALET運用センター(WCOC: Waseda CALET Operations Center)を立ち上げてデータ受信・解析のためのシステム整備により、現在リアルタイムの観測運用が実施されている。この研究は、CALETグループとしてこれまで共同研究を行ったメンバー(招聘・客員研究員を含む)を中心に、約60名の参加により24時間体制での運用を実施するとともに、観測データの解析により世界初の科学成果の発信を行う。
高エネルギー宇宙線(電子、ガンマ線)の飛翔体観測では、我々の研究は世界でも最高水準にあり、米国、イタリアから多くの研究者が参加しており、国際的に注目されるプロジェクトである。特に、我々が開発したシャワー解像型カロリメータは、宇宙線観測でもっとも優れた性能を有し、ISSでの観測が今後2-5年間に亘って実現すれば、世界に先駆けて宇宙科学における未知領域での新たな研究が展開により、近傍加速源や暗黒物質などの新発見が期待されている。これまでの観測において、新たに重力波との同時観測が実現されており、今後のさらなる観測によって、重力波の解明への貢献が期待されている。