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- 「比研共催講演会:安心安全なメタバースの実現に向けた『メタバースと法 』教育の実際と展望」2025年12月1日(月)開催されました
「比研共催講演会:安心安全なメタバースの実現に向けた『メタバースと法 』教育の実際と展望」2025年12月1日(月)開催されました
Dates
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MON 2025- Place
- 26号館地下多目的講義室
- Time
- 13:30-16:45
- Posted
- Wed, 12 Nov 2025
「安心安全なメタバースの実現に向けた『メタバースと法 』教育の実際と展望」
概要 【日時】2025年12月1日(月)13:00(開場)~16:45(終了予定) 【主催】早稲田大学 先端技術の法・倫理研究所 【共催】早稲田大学 法学部・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社・早稲田大学比較法研究所 【会場】早稲田大学 早稲田キャンパス26号館(大隈タワー)地下多目的講義室+Zoom <キャンパスマップ> https://www.waseda.jp/folaw/icl/assets/uploads/2017/01/acdca0061e81c078eb58ca92d9f4460d.pdf 【対象】主には早稲田大学生、教職員及び一般、その他 【開催方式】ハイブリッド方式 【参加登録】<必須>必ず参加登録をしていただきますようお願いいたします。 対面でご参加の場合、会場には収容人数上の制限がございます。対面でご参加の場合、先着順にて受付いたしますが、 収容人数を超過する場合は、オンラインに移っていただきますことを予めご承知おきください。 参加登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfKU5-dG0XU4EuAj86LzaH7dgNWi-TNBir7JHSDi78_cxBQsw/viewform?pli=1 プログラム 総合司会1:原田香菜 講師 早稲田大学 法学学術院 先端技術の法・倫理研究所員 13:30~ 開会の辞:下山憲治教授 早稲田大学 法学学術院 先端技術の法・倫理研究所所長(5分) 13:35~ 基調講演:「安心安全なメタバースの実現に向けての国の取り組み」 (30分) 演者:忍田茉優 主任研究官 総務省 情報通信政策研究所 調査研究部 14:05~ 特別講演:「メタバース利用者の身元確認とAIなりすまし防止」 (30分) 演者:石井夏生利 教授 中央大学 国際情報学部長 14:35~ 第1部:寄附講座「メタバースと法」と法学教育の新しい可能性 (30分) 14:35~ 報告1:田村達久 教授 早稲田大学 法学学術院 法学部長(10分) 14:45~ 報告2:土居崎寿滋 執行役員 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(10分) 14:55~ 対 談:コーディネーター 島岡未来子教授 早稲田大学 研究戦略センター(15分) 15:10~ 休憩 20分 総合司会2:内藤識 講師 早稲田大学 法学学術院 先端技術の法・倫理研究所員 15:30~ 第2部:寄附講座「メタバースと法」を受講して(45分) 15:30~ 報告1:2024年度受講生 江原碧人 早稲田大学大学院法学研究科修士課程(10分) 15:40~ 報告2:2025年度受講生 鈴木新平 法学部3年生(10分) 15:50~ 報告3:2025年度受講生 中澤渓太 法学部3年生(10分) 16:00~ 対 談:コーディネーター 肥塚肇雄教授 早稲田大学 法学学術院 先端技術の法・倫理研究所所員(15分) 16:15~ 第3部:メタバース教室構築とアバターの工夫ーー座学から実験的教育に向けてーー(15分) 16:15~ 報告1:新保正悟CEO 株式会社VLEAP(15分) 16:30~ 第4部:教科書『メタバースと法』の発刊によせて(10分) 16:30~ 報告1:下山憲治 教授 早稲田大学 法学学術院 先端技術の法・倫理研究所所長(10分) 16:40~ 閉会の辞:肥塚肇雄 教授 早稲田大学 法学学術院 先端技術の法・倫理研究所所員(5分)
【開催概要】
- 基調講演:「安心安全なメタバースの実現に向けての国の取り組み」
基調講演では、総務省情報通信政策研究所調査研究部の忍田茉優主任研究官より、メタバースの利活用促進と安心安全な環境整備に向けた総務省の取組が報告された。メタバースをVRに限らずAR・MRを含む広い概念として捉え、市場拡大の見通しやユーザー層の多様化・若年化の動向が示された。
また、「安心安全なメタバースの実現に関する研究会」を中心に策定・改訂された「メタバースの原則(第2.0版)」の概要が紹介され、ユーザーの自主・自律性の尊重やマルチステークホルダーへの対応等が主要論点として整理された。規制を先行させるのではなく、ソフトローを基盤に国際社会と連携しながら健全な発展を目指す方向性が示された。
- 特別講演:「メタバース利用者の身元確認とAIなりすまし防止」
特別講演では、中央大学国際情報学部の石井夏生利教授より、メタバース利用者の身元確認とAIによるなりすまし防止をめぐる法的課題が報告された。メタバースの特徴である「アバターによる活動」により、アカウント管理やアバターの模倣を通じたなりすましが生じ得ることが示され、プラットフォーム事業者によるルール形成および運用の重要性が指摘された。
また、なりすましが人格的利益を侵害し得るとの問題意識の下、名誉毀損、プライバシー、肖像権、パブリシティ権、氏名権、アイデンティティ権、声の権利等の観点から整理がなされた。あわせて、没入性ゆえに生じる評価の難しさや、表現の自由との調整の必要性が示され、認証・登録等の事前対策と処罰・利用停止等の事後対策を組み合わせた対応の方向性が提示された。
- 第1部:寄附講座「メタバースと法」と法学教育の新しい可能性
第1部では、早稲田大学法学学術院・法学部長の田村達久教授より、寄附講座「メタバースと法」の法学部カリキュラム上の位置づけと教育目的が説明された。本講座は「先端科学技術と法」コースの一環として設置された3年次以上配当科目であり、メタバースに伴う倫理的・法的課題を検討することを目的とする。あわせて、「正義と衡平」の具体化および未知のリスクへの法的対応を担う人材の育成が掲げられ、VR機器を活用した実験的授業の実施状況が紹介された。
続いて、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社の土居崎寿滋執行役員より、損害保険は社会変化と新技術の普及に伴い新たなリスクに対応して発展してきたことが示され、メタバースについても普及拡大と同時に新たなリスクが生じ得るとの観点から、法的課題の整理と保険による支援の可能性を探る姿勢が示された。あわせて、DXを通じた社会課題解決(CSV×DX)やテレマティクス保険の取組が紹介された。
両者の対談(コーディネーター:早稲田大学研究戦略センター・島岡未来子教授)では、メタバース空間を「実験場」として活用することで、アバター接近等によるハラスメント、死者の再現に関する倫理・法的論点、VR酔い等の身体的影響など、机上検討では捉えにくい課題が具体化することが確認された。また、現地現物の体験に基づく課題抽出が、制度検討や保険アイデア創出に資する点が共有され、今後も産学連携の下で教育・研究の往復を通じた発展が期待されることが述べられた。
- 第2部:寄附講座「メタバースと法」を受講して
第2部では、寄附講座「メタバースと法」の受講生3名が、受講動機、授業体験、学びの内容、将来への示唆について報告した。
修士課程の江原碧人氏は、VR機器を用いた実体験により、メタバース空間におけるハラスメント等の不法行為を「体感」しながら法的検討を行える点を本講座の特色として挙げた。また、アバター利用により発言の心理的ハードルが下がり、受講生の反応も把握しやすいなど、教育手法としての利点が示された。
学部3年の鈴木新平氏は、没入感と臨場感により集中しやすく、移動や身振りを含むコミュニケーションが促進される点を指摘した。あわせて、場所の制約を緩和しつつ学習環境を柔軟に設計できる可能性が示された。
同じく学部3年の中澤渓太氏は、対面・オンライン・メタバース授業を比較し、没入感による集中の一方で、VR酔い・眼精疲労等の負担も課題として挙げた。さらに、匿名性の利点とリスク、バーチャル資産や権利侵害等の新たな論点を踏まえ、保険を含む制度的対応の必要性に言及した。
受講生との対談(コーディネーター:早稲田大学法学学術院・先端技術の法・倫理研究所所員・肥塚肇雄教授)では、メタバース教室がZoom等のオンライン授業と異なり、「同じ空間に他者が存在する」感覚を伴うこと、視点移動や距離調整が自由であることなどが共有された。また、現行法の枠組みを参照しつつ「答えのない問い」に取り組む過程自体が法学学習に資する点が確認され、契約関係や責任主体の捉え方等についての思考訓練として有益である旨が述べられた。なお、「安心安全なメタバース」の実現に向けては、ハラスメント発生時の離脱・遮断等の機能、通信環境を含む基盤整備、なりすまし対策などの課題が示された。さらに、本講座の経験が、研究における「実際に試す」姿勢や、将来の進路・関心領域の拡張につながったとの発言があった。
- 第3部:メタバース教室構築とアバターの工夫―座学から実験的教育に向けて―
第3部では、株式会社VLEAPの新保正悟CEOより、寄附講座を支える「メタバース教室構築とアバターの工夫」が報告された。35名同時接続による全13回の授業実施を前提に、教室ワールドの設計・軽量化、複数種のアバター作成、出欠管理やグループ分け機能の実装など、技術的対応が紹介された。
あわせて、HMDの事前準備や初回レクチャー、接続・音声等のトラブル対応、授業録画体制の整備といった運用面の課題と工夫が共有され、メタバース教育の実現には関係者の連携と継続的な改善が不可欠であることが示された。
- 第4部:教科書『メタバースと法』の発刊によせて
第4部では、早稲田大学法学学術院・先端技術の法・倫理研究所所長の下山憲治教授より、教科書『メタバースと法』の編集・出版計画が紹介された。本書は、寄附講座およびメタバース法研究会の教育・研究成果を基礎とし、社会・技術・倫理・法の各側面を横断的に整理するものである。
内容としては、アバターと現実主体の関係、権利主体・著作権等の法的論点、ソフトローからハードローへの展開、民事責任やリスク管理、越境問題等を扱い、実務と理論を架橋する構成が示された。今後も研究成果を教育へ還元し、社会に資する人材育成を進めていく方針が述べられた。
(文:杜 雪雯 比較法研究所助手)