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「災害復興支援クリニック」 2026年3月 能登半島被災地活動レポート

「災害復興支援クリニック」 2026年3月 能登半島被災地活動レポート
Posted
Fri, 24 Jul 2026

早稲田大学法科大学院の「災害復興支援クリニック」は、2011年の東日本大震災発生直後に発足した復興支援プロジェクトを学生主体の活動へと発展させたものです。10年以上にわたり福島県の浜通り地域などで現地調査や復興支援に取り組んできた実績を有し、2024年の能登半島地震発生以降は、活動の拠点を能登半島へと移して継続しています。

災害復興支援クリニックでは、Global Citizenship Centerのビジョン共有型ユニットの1つとして、2026年3月1日から3月4日にかけて、石川県奥能登地域での調査・支援活動を実施しました。今回の活動には、法科大学院生(修了生含む)10名と教育学部生6名の計16名の学生が参加し、教員・弁護士5名を加えた総勢21名で現地での支援に取り組みました。

4日間にわたる活動では、各地で地域の課題に寄り添う多様なプログラムが実践されました。活動初日である3月1日と3日目の3月3日には、情報や移動手段、司法人材が不足する被災地を支援するため、巡回法律相談「おしゃべりカフェ」を実施しました。この活動は、仮設住宅に居住する住民の方々との世間話や、困りごとの傾聴を通じ、潜在的な法的課題を発見して必要な法的支援につなぎ、弁護士相談への心理的なハードルを下げることを目的としています。1日目の能登町では、学生が2グループに分かれ、4箇所の仮設住宅を訪問しました。3日目は穴水町の2箇所の仮設住宅を訪問し、地域の方々との交流の機会を設けました。

能登町内の仮設住宅では、永野海弁護士作成の被災者生活再建支援制度を紹介するボードゲームを実施しました[1]。モデル事例を題材にして利用できる支援制度を住民と一緒に見ていくことで、今後の生活再建について考える機会を提供するとともに、希望者に対しては相談支援団体への個別相談につないでいます。

学生は、住民の方々に説明を行うために事前に支援制度について学んだ上、苦労をしながらもわかりやすく制度の説明を行うことに挑戦しました。住民の方と学生が一緒にボードゲームのカードを切り貼りすることで会話が弾み、住民の方々との会話のきっかけとなった他、参加した方からは、家に帰って家族に見せて話したいなどと、前向きな反応が見られました。

この活動をとおして、学生は、難しいことをわかりやすく説明することや、課題を聴き取ることといった法律家にとって基本とも言えるスキルを養う機会を得ることができました。そして、何より訪問を喜んでくださった住民の方々の笑顔に私たちも強く勇気づけられました。

[1] ボードゲームは永野海弁護士が運営するウェブサイト「ひさぽ」で紹介されています。https://naganokai.com/hisapo/

2日目の3月2日には、新たな試みとして、「珠洲市子ども未来創造会議〜早稲田大学の学生と珠洲の未来を考えるワークショップ〜」を開催しました。このワークショップは、復興に向けたまちづくりについて子どもの意見を聴き取ることで、子どもの権利条約に定められた「意見表明権」の実現を目指すとともに、被災地や過疎地域における新たな住民参加のあり方を模索する取り組みです。

学生は、事前に弁護士のレクチャーを受けて子どもの意見表明権について学んだ他、司法面接の手法を基にした子どもから話を聴き取る際のポイントについて学習しました。その他、復旧・復興に携わる市職員に対するインタビューを実施するなどして準備を行い、ゼロからワークショップを作りました。このプログラムをきっかけに教育学部の学生がプロジェクトに参加することとなり、法科大学院生とともにアイデアを出し合い、プログラムの実現に至りました。

当日は小中学生に対して、珠洲市の復興計画を紹介した上で、「珠洲市に人を呼ぶにはどうしたら良いか」をテーマにした活発なディスカッションが行われました。参加学生は、子ども向けにわかりやすく説明を行うことや、子どもから意見を聴き取ることの難しさを実感していましたが、子どもたちからは率直な意見が飛び出し、有意義な機会となりました。

最終日である3月4日は、復興の現状や現地の課題、司法の現場を肌で学ぶ活動を行いました。午前中には「QUEST輪島」が主催する被災地ツアーに参加しました。震災から年月を経た今も残る傷跡やその時々の状況変化をたどり、現地が直面している課題への理解を深めました。

その後、午後からは輪島ひまわり基金法律事務所を訪問しました。被災地や司法過疎地域における法的ニーズの実態、法律家が果たすべき役割について現地で活躍する弁護士からお話を伺いしました。学生からは、震災後能登半島で調査・支援活動を行ってきた経験を踏まえた様々な質問がなされ、充実した意見交換の場となりました。

本クリニックは、被災地支援という「公益的価値」に加え、教室内だけでは得られない生身の人間と向き合う経験を得る「教育的価値」という2つの重要な意義を持っています。災害復興支援クリニックは、今後も被災地の人々の声に耳を傾け、どのような形で課題解決に貢献することができるか、模索し続けていきます。

文:法務教育研究センター助手・弁護士 尾川佳奈