陰山晴香(エーザイ株式会社)
私が美術史学コースを志望した理由
もともと広く歴史に興味があり、大学1年生の時にオムニバス形式の美術史の講義を受講しました。その講義で、作品に何が描かれているのか、どんな手法が用いられているのか、さらに当時の思想・文学・政治などを踏まえて深く考察していく美術史に面白さを感じ、当時文化構想学部に所属していましたが、文学部へ転部し美術史コースに進学しました。転部後、3年生の時期は卒業論文の研究が楽しく、就職活動に時間を割くのが惜しく感じられました。現在のテーマをもう少し継続して研究したいという気持ちと、将来の選択肢として学芸員も視野に入れたいという思いがあり、美術史学コースを志望しました。
美術史学コースの雰囲気、教員・学生などとの交流
美術史学コースは学生同士および教授との距離が近く、先輩の調査に同行させていただいたり、教授を含めた研究室のメンバーで作品を見に行ったりと、交流が深かったように思います。また、研究室のメンバーはそれぞれが異なる研究テーマを持っていたため、同期や先輩の研究発表を聞く機会が良い刺激になったのはもちろん、自身の研究に対して多角的な視点からアドバイスを受けることができ、非常に学びの多い時間を過ごしました。
大学院での生活を振り返って
修士課程では学部から引き続き俵屋宗理という画家をテーマに研究を行いました。宗理は琳派という流派に位置づけられます。琳派というと俵屋宗達や尾形光琳などが有名ですが、宗理については先行研究が少なく、どんな人物なのか、どんな作品を描いていたのか興味が湧き、俵屋宗理の画家研究というテーマを設定しました。
宗理の作品や関連資料が少なかったために行き詰まることも多かったですが、その分些細な疑問を大切に、一見関連が無さそうに思えることにも調査や勉強の時間を費やしました。調査したことを並べ、そこから宗理が身を置いた文化圏や交流関係などを考察する過程が面白く、研究テーマに向き合い試行錯誤した修士課程の2年間はとても濃密で、あっという間に過ぎていった感覚があります。振り返ると、一つの事柄にこれだけ向き合える時間というのはとても貴重なものでした。
美術史学コースへの進学は卒業論文での研究の継続と就職の選択肢として学芸員を検討していたためでしたが、卒業後は学芸員ではなく、製薬会社に就職しました。現在は医薬品の価格設定等に関連する業務を行う部署で働いています。美術史とは全く異なる領域ですが、研究を通して学んだ物事に対して好奇心を持つ姿勢、疑問を持ち深く考える力というのは自身の大きな支えとなっています。また、今でも修士論文の続きとして調べてみたいことは沢山あり、修士課程で広がった興味関心によって日々が豊かなものとなっていると感じます。修士課程の2年間がこれだけ充実したものとなったのは、先輩方や教授など周囲の方々の支えによるところがとても大きく、先輩や教授との距離が近く、活発な意見交流のある環境で学べたことはとても貴重な経験となりました。
プロフィール
東京都出身。早稲田大学文学部美術史コース卒業後、早稲田大学大学院文学研究科美術史学コースに進学。在学中は俵屋宗理の人物史をテーマに研究。修士論文の題目は「俵屋宗理研究」。現在はエーザイ株式会社にて、薬価関連業務を担当。
(2022年2月作成)