Global Japanese Studies早稲田大学 文学学術院 国際日本学

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開催報告「学生によるシェイクスピア上演プロジェクト『十二夜』」&英語字幕付き動画配信開始

※ 2022年2月28日より英語字幕付きの映像配信を開始いたしました。

当日の動画はこちらから

2021年9月16日、本学在学生のみによるシェイクスピアの舞台上演(リーディング公演)を小野梓記念講堂にて行った。演目は喜劇『十二夜』で、文学学術院主催、スーパーグローバル大学創成支援事業 早稲田大学国際日本学拠点、および文化推進部の共催により開催したが、新型コロナウィルス感染症対策のため無観客にて収録し、録画を9月22日より1ヶ月間、申請者に限定配信をすることとした。

本シェイクスピア・上演プロジェクトは今回で5回目となるが、このプロジェクトはシェイクスピア没後400年の記念の年である2016年に、早稲田大学初の試みとして在学生のみによるシェイクスピア劇(リーディング公演・冬木企画)の上演を始めて以降、毎年上演を行ってきたものであり、本年は特に翻訳と上演の関連性を追求する目的もあったため、早稲田大学国際日本学拠点による共催として開催した。
舞台への準備として、6月に全学の学生に舞台の出演者の募集をし、7月にオーディションを行って13名の出演者を選抜した。その後、文学座の演出家・西川信廣氏の演出・指導のもとで18日間稽古に励み、最終的には予定通り9月16日に本番を迎えた。今回の『十二夜』はシェイクスピアの最高峰の喜劇と言われているが、セリフ面ではかなり難しい箇所もあり、途中で演出家を中心とする解釈についての議論も何度も必要となった。稽古が始まってから、出演者の学生に対する劇の解釈、原文と比較した場合の翻訳の問題点などについて、冬木がZoom上から解説を行い、学生からの質疑応答に答えるという機会を2度設けた。これにより、翌日からの演技が突然深まったものとなったこともあり、翻訳における解釈の吟味がいかに必要であるかを認識することができた。

本公演はリーディング(朗読劇)の形を取っており、全員が舞台両側の椅子に常に着席し、台本を持ちながらそれぞれの役のセリフを読み進めてゆく。しかしながら、全くの朗読ではなく、セリフは言う役者は前に出て、演技もしながら語り、対話する形を取っているので、通常の演劇に近い臨場感を与えることができたのではないかと思う。また、『十二夜』はシェイクスピア劇の中では最も多く音楽が挿入されている劇であるので、今回の舞台ではプロの作曲家であり演奏家でもある上田亮氏の曲と生の演奏による歌を入れることで、通常の舞台上演と遜色ない構成となった。さらに、照明もプロが参加を申し出てくれたため(塚本悟氏)、リーディングでは表現し難い、セリフの背後にある心情と人物間の関係を明確に示すことができたと思う。

上演への観客の反応は得られなかったが、オンライン動画の配信をする際にアンケートを視聴者に依頼しているため、アンケート結果を今後の企画に生かしてゆきたいと考えている。上演自体への評価はこれからではあるが、本番の舞台を実際に見る限りでは、学生の域を超えたレベルのリーディング公演になったのではないかと思われる。また、コロナ禍での上演の一つの形として意義あるものになったと思われる。

なお本公演は、すでに7月3日に開催されたオンライン・シンポジウム「シェイクスピアの翻訳と上演 — 舞台のための翻訳をめぐって」と一対になった企画であり、シンポジウムにおいて議論がなされたシェイクスピアの翻訳を上演に使う際の問題を、実際の上演に至る過程において再度議論・確認することを行なった。具体的には、上演に際してシェイクスピアのテクストのどこを削除することによりどのような効果やデメリットがあり得るか、さらにどの翻訳を使うのが適切かなどの問題を、舞台の稽古をしてゆく中で、少しずつ確認することができた。また、学生自身が翻訳におけるセリフの表現・意図と原文との違いを発見することが何度かあったことは大きな収穫であった。このようにシンポジウムと実際の舞台稽古を組み合わせた、翻訳研究から実際の上演へというアプローチが、日本では現在のところ看過されがちな翻訳の研究と実際の舞台との連携を深めることに若干なりとも貢献できたのではないかと思われる。さらに国際的な観点から、本公演を収録した動画は、英語字幕も付してイギリスの大学を中心に海外へも発信してゆく予定である。

最後に、学生の力について補足しておきたい。演劇を全くやったことのない学生が多い中で、学生たちは一つのチームとなって日々必死の稽古をし、セリフの受け渡しや言い方、動きなどを自発的、積極的に考えていった。短期間の中でこれだけの舞台を作り上げた学生たちのひたむきでまっすぐな思いと努力に賛辞を送りたい。

(文責・冬木ひろみ)

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