科目情報
- 科目名 :中世文学ⅠA
- 科目区分:2~4年選択科目
- 執筆者 :北崎花那子 (国語国文学科)
古典和歌の歴史と魅力を、多様な切り口から学ぶことができる授業
皆さんは和歌にジェンダーがあったことを想像したことはありますか?古典和歌に使われてきた歌ことば、特に『古今集』以降の王朝和歌の歌ことばには、男性歌人が多く使うもの、女性歌人が多く使うものといった違いが存在していました。例えば「女郎花」という歌ことばは、男性の視点で捉えた女性性を表しており、艶やかで誘惑的なものとして描かれることが多いです。女性は特別な場合を除いて、「女郎花」と詠むことはほとんどありません。「恋」「恋し」などの歌ことばも、『古今集』において男性歌人の歌が百十四首、女性歌人の歌が四首と、男性に偏っています。『万葉集』にはこの傾向は見られないことから、時代背景も関わっていることが読み取れます。
このように、こちらの授業では、古典和歌の面白さと魅力を、専門的な視点・角度から学ぶことができます。和歌の歴史や技法だけでなく、先に述べたジェンダ―という面白いテーマや、勅撰和歌集の配列の妙、素晴らしい歌人たちが遺した和歌の精読まで幅広く扱います。先生のいきいきとした語りからは、和歌の魅力が存分に伝わってきます。ただ楽しむだけでなく、より深く和歌について「学ぶ」ことで、和歌というものに編み込まれた膨大な意図や配慮を理解することができます。そして、理解した先には、複雑で美しい繊細な和歌世界が広がっているのです。
伝統と革新、貴族社会との関わり、その機能。ひとくちに和歌と言っても、様々な側面があります。文化として競われ、論じられ、今日まで伝え続けられてきた和歌という存在は、どのように切り込んでも味わい深く、私たちに先人の見た景色を、抱いた感情を教えてくれます。和歌という、時代を超えたはるかな文学の世界への扉となる授業です。和歌が好きな人には探究の道しるべに、まだ和歌についてよく知らないという人には新たな興味のきっかけになるかもしれません。
受験生の皆さんへ:学びの存在する場所--変化する時代にあって
皆さん、このように大変な状況の中で、本当によく頑張られていることと存じます。例年通りとはいかないことも多く、気持ちが沈んでしまうこともあるでしょう。大学自体に対して、不安に思うこともあるかもしれません。ですが、皆さんの学びたいという気持ちが報われるよう、努力してくれるのが、大学という場所だと思っています。現在のような状況でも、オンラインで講義は行われ、ZOOMなど様々なツールを駆使して演習授業も行われています。ご紹介した授業も、オンラインでの受講となりましたが、満足のいく学びの体験を得ることができています。また、講義を受け新しく生じた疑問や、深く研究したい内容は、決して失われることはありません。今の状況でも、知りたい、考えたいものに手を伸ばすことは必ずできます。皆さんが大学に求める学びは、きちんとここに存在しています。何を学びたいかが定まっていないという方も、きっと大学という場所で、興味が、世界が広がっていくと思います。それはとても価値のあることです。
手を伸ばせば、どんなものとの距離も縮まります。大学でしか学べないなどということは決してありません。しかし同時に、ここで得られる学びも必ずあるということを、お伝えしたいと思います。皆さんの未来が明るいものとなりますよう、お祈りしております。