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無声映画の新たな可能性を世界に発信
無声映画のイメージを覆す弁士と楽士によるパフォーマンス
Mon 18 Mar 24
無声映画のイメージを覆す弁士と楽士によるパフォーマンス
Mon 18 Mar 24
本学とUCLAとの共同連携事業である柳井イニシアティブは、2024年4月26日に本学大隈記念講堂にて「The Art of the Benshi 2024 World Tour早稲田大学公演」を開催します。本公演は、声のない映画に語りを付ける「活動弁士」による無声映画の上映会で、4月5日のニューヨーク公演を皮切りに、米・日5都市を巡回する「The Art of the Benshi 2024 World Tour」の締めくくりを飾します。片岡一郎・大森くみこ・山城秀之ら日本を代表する3名の弁士による臨場感あふれる語りと楽団による生演奏とともに、新たに修復された作品を含め6本の無声映画を楽しむことのできるイベントとなります。
これに先立つ3月4日、本公演についての開催告知記者会見が行われました。
会見では、ツアーの中心を担う弁士・片岡一郎氏、および柳井イニシアティブディレクターMichael Emmerich UCLA/本学教授により、ツアーの趣旨や概要、上演プログラムや無声映画・活動弁士にまつわる文化的背景についての説明がありました。
The Art of the Benshiとは

血煙高田馬場-Blood Spattered Takadanobaba
Emmerich教授
「2017年にUCLAに片岡氏を招いて開催した、弁士による無声映画上映会が本ツアー開催の原点となっています。そのときの好評を受けて開催した2019年の第二弾公演では、現地有名新聞社からも取材を受け、満員御礼が続くほどの盛況ぶりでした。当時見てもらうことのできなかった観客も含め、より多くの地域で、より多くの人に弁士の世界の魅力を体験してもらおうと、今回はさらに大きな規模での開催を企画しました。」
片岡氏
「上演プログラムは、前回のアメリカ公演の直後から数年をかけて練り上げたものです。最新の技術を用いて修復されたものや、新発見のフィルム断片を組み込んだ日本初公開の最長版なども含め、史料的観点からも大変貴重なラインナップとなっています。ここ数年でデジタル技術が進み、解像度や回転数も含め、公開当時に限りなく近い状態でお見せすることができるようになりました。これまでの無声映画のイメージを覆すような体験になるはずです。」
「海外では、無声映画が上映される機会は現代の日本よりもずっと多いのですが、通常はピアノ伴奏などの音楽だけで楽しむもので、弁士の語りが付くことはありません。現在、日本で活動するプロの弁士は15名ほどという中で、この日本独特の芸能文化の魅力を世界に紹介する大規模なツアーを、柳井イニシアティブの全面的支援のもとに開催できるということは、とても大きな意義があると思います。われわれ弁士による海外公演を通じ、無声映画の新たな可能性を世界に発信することができるのではないかと思います。」
The Art of the Benshiツアーの概要
本ツアーは、ニューヨーク、ワシントンD.C.、シカゴ、ロサンゼルスのアメリカ4都市15公演および本学大隈記念講堂における最終公演を加えた全16公演を予定しています。
・Brooklyn Academy of Music (BAM) [NY]
・The National Museum of Asian Art, Smithsonian Institution [Washington DC]
・Gene Siskel Film Center [Chicago]
・United heater on Broadway [LA]
・Billy Wilder Theater [LA]
・大隈記念講堂 [早稲田大学]
全公演の観客動員数は最大で5000~6000人に及び、活動弁士に関するイベントとしては、国内外を含めて史上空前の規模となる見込みです。
The Art of the Benshi 公式サイト
公演では、弁士による語りの台本を事前にすべて翻訳し、上映中に英語字幕を表示します。本ツアーで上映する全18作品の翻訳字幕用パワーポイントのスライドは、前回のアメリカ公演時の1万枚をはるかに超えることになります。こうした手厚いサポートにより、観客は言語の壁を越えて、弁士によるパフォーマンスを存分に堪能することができます。

弁士 片岡一郎
早稲田大学公演(4/26)の概要
上映作品
■ 本ツアーを機に新たにデジタル化された『生さぬ仲』(1916年/18分)
■ 日系移民により製作された最古の映画『刀の誓い』(1914年/31分)
■ 今回のためにUCLA Film and Television Archivesにて修復された『Sweetie』(1923年/21分)
■ 2023年に発見された最長版となる小津安二郎作品『突貫小僧』(1929年/21分)
■ おもちゃ映画博物館および本学演劇博物館にて新発見されたフィルムを組み入れた『血煙高田馬場』(1928年/12分)
■ 1910年代の無声映画の特徴を示す貴重な現存例である『豪傑児雷也』(1921年/21分)
プログラム
3名の弁士によるトークショー
* 16:00-17:00 詳細は後日当ウェブサイトにて公開
The Art of the Benshi 2024 World Tour at 早稲田大学
* 18:00 開演 開会の辞
* 18:12 『生さぬ仲-Not Blood Relations
* 18:35 『刀の誓い-The Oath of the Sword』
* 19:11 『Sweetie』
* 19:35 休憩
* 19:55 『血煙高田馬場-Blood Spattered Takadanobaba』
* 20:12 『突貫小僧-Straightforward Boy』
* 20:40 『豪傑児雷也-Jiraiya the Hero』
* 閉会の辞
『生さぬ仲』と『豪傑児雷也』では3名の弁士がそれぞれの役を受け持ち同時に演じる「声色掛合」での上映となります。前回のアメリカ公演で初めて取り入れられ、少しずつ日本でも広がりを見せているこの「声色掛合」も本公演の見どころのひとつです。
会見の最後に
Emmerich教授
「日本でもまだ弁士によるパフォーマンスを見たことのない方がたくさんいます。アメリカだけでなく日本の多くの方にもぜひこの魅力あふれるパフォーマンスを体験していただきたい。」
今回のツアーに合わせ、無声映画や活動弁士にまつわる貴重な資料を多数盛り込んだ書籍『The World of the Benshi』も制作しています。

片岡一郎(左)Michael Emmerich教授 (右)
お申込方法
早稲田大学公演は4月21日まで下記ウェブサイトより申し込みを受け付けています。入場無料。