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第五回(2015年度) 早稲田大学坪内逍遙大賞選考委員会

【委員長】
巽 孝之 慶應義塾大学教授

【副委員長】
田中 光子 株式会社文藝春秋文藝局第一文藝部副部長
渡部 直己 文芸評論家、早稲田大学教授

【選考委員】
鵜飼 哲夫 読売新聞文化部編集委員
加藤 典洋 文芸評論家、早稲田大学名誉教授
高橋 源一郎 小説家、明治学院大学教授
松永 美穂 早稲田大学教授

受賞者

【大賞】:伊藤 比呂美(いとう・ひろみ)
1955年東京都生まれ。青山学院大学卒業。1978年現代詩手帖賞、1999年小説「ラニーニャ」で野間文芸新人賞、2006年「河原荒草」で高見順賞、「とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起」で2007年萩原朔太郎賞、2008年紫式部文学賞を受賞。ほかに「良いおっぱい悪いおっぱい」「読み解き般若心経」「父の生きる」「女の絶望」「女の一生」などがある。

【伊藤比呂美氏受賞理由】
伊藤比呂美氏は、1978年のデビュー詩集以降、一貫して女性詩を牽引してきた。そして80年代以降、伊藤氏は二つの分野に進出する。それは(子育てを中心とした)エッセイ、さらに小説だ。そのどちらの分野においても、伊藤氏は、それまでになかったことばの世界を作り上げ、いまはまた説教節など古典をもとにした日本語の新しい「語り」に向かっている。伊藤氏の出現は、日本語の表現の世界を新しいステージに押し上げたのである。

 

 

_DSC0052【奨励賞】:福永信(ふくなが・しん)
1972年東京都生まれ。京都造形芸術大学芸術学科中退。1998年、短編「読み終えて」で第1回ストリートノベル大賞受賞(リトルモアによる)。2001年、特殊な横組みのレイアウトによる短編集『アクロバット前夜』(造本装幀・菊地信義)で単行本デビュー。2006年、柴崎友香、名久井直子、長嶋有、法貴信也とともに同人誌『Melbourne1』を刊行。2007年、先のメンバーとともに同人誌第二弾『Иркутск2』を刊行。2012年、『一一一一一』で第25回三島由紀夫賞候補。2013年、『三姉妹とその友達』で第35回野間文芸新人賞候補。

【福永信氏受賞理由】
福永信氏は、すでに十年を超える作歴のなかで、たえず大胆な、いわば一作ごとに「実験的」な書き手として、現代小説に得がたい生気を吹き込んできた作家である。わけてもここ二、三年、『一一一一一』、『三姉妹とその友達』などにおける斬新な達成には、目を瞠るものがあるが、日本文学はまだ、この点に十分には気づいていないようだ。 よって、本選考委員会はここに、この作家の得がたさを顕揚し、奨励するものである。

 

 

記者発表(2015年9月17日)

9月17日(木)16時から大隈会館において授賞者発表記者会見が開かれました。委員が出席し、多くの報道関係者が集まりました。

第五回早稲田大学坪内逍遙大賞授賞式・祝賀会(2015年 11月16日)

11月16日(月)18 時30分からリーガロイヤルホテル東京において、授賞式・祝賀会が開催されました。

【授賞式 受賞者挨拶】

【大賞】:伊藤 比呂美(いとう・ひろみ)さん
どうもありがとうございます。だいぶ前に早稲田大学を落ちた者なので、このような賞をいただいて、とても光栄です。あの時、早稲田大学に入れてもらっていたら、もう少し違った人生を送っていたかもと思いつつ、忸怩たる思いで、他大学に行きまして、こういう人生を送っておりました。

今回は、いままで頑張ったで賞という感じで、賞をいただいたと思っておりますが、とてもうれしいです。私は日本の中心から遠ざかったところにいつも住んでおり、熊本に長いこと住み、現在ではアメリカのカリフォルニアに住んでおります。それでも私の作品を読んでくれている人がいたんだということをとてもうれしく思っています。賞をいただく前に高橋睦郎さんから坪内逍遙は面白いから買いなさいと言われ、坪内逍遙全集のような本を注文したら、この賞の受賞が決まりました。

私は坪内逍遙の「マクベス」に興味がありました。というのもオペラにはまっていまして。「マクベス」だったらコンピュータで検索して読むことが可能だったので、読んでみましたところ、素晴らしい翻訳なんですよね。私も詩人なので、何らかの翻訳をずっと続けており、「説経節」や「お経」なども翻訳しておりますが、時代が違うとはいえ、坪内逍遙のように自分の言葉で翻訳ができれば、こんなにうれしいことはないです。言葉の絢爛豪華な「マクベス」を今、読んでいます。先人というのはおこがましいかも、遠くから後姿を見ながら、これからも精進していきます。本日はありがとうございました。

【奨励賞】:福永 信(ふくなが・しん)さん
ありがとうございますとしかいえません。その言葉しか出てきません。

自分がこの場所にいるのは編集者の方のおかげだと思っています。

早稲田文学の編集者の方たちは、デビューしたてのころから声をかけてくださいました。

私は、リトルモアという出版社でデビューし、もう17年の月日が経っています。最初の短編を書いたのもリトルモアでした。リトルモアの編集者の方に昨日連絡したにも関わらず、来てくれないんです。「ちょっと用事がある」らしいです。その編集者の方は早稲田大学出身なので、照れくさいのでしょう。彼がいないと僕の最初の本は出ていなかったです。

自分はいたるところで、自分の最初の本は菊地信義さんに僕からアピールした、菊地さんを僕が選んだと言ってきました。実はリトルモアの編集者の方が複数のデザイナーの案の中でも菊地さんが良いのではないかと言ってくれました。その一言が僕の最初の本を菊地さんがデザインしてくれたきっかけにもなりました。僕の手柄ではなくて、リトルモアの編集者の方の手柄だと思います。

また、もう一人の編集者を紹介します。僕はリトルモアの「アクロバット前夜」という菊地さんの装丁の本でデビューしたのですが、その本を読んだ福音館書店の編集者の方が「福永君、子ども向けの現代美術の本のコラムを書かないか」と連絡をくれたんです。僕は、全く子ども向けの文章を書くという経験がなく、驚きましたが、その編集者の方にも感謝しています。この編集者の方にも昨日連絡したにも関わらず、来てくれないんです。彼がいたから僕は「アクロバット前夜」を出した後に、子どものことをすごく考えるようになりました。僕の本に子どもが出てくるのも、子ども向けのコラムを書かないかと誘ってくれたからだと思っています。

本当でしたら、直接お礼を言いたいのですが、もし知り合いの編集者の方やご友人の方がおられましたら、ぜひ僕の代わりに伝えてください。また僕にこんな機会があったら、直接言うつもりだし、来てもらうつもりですけど。僕のことだけ話してしまい、すみませんでした。ありがとうございました。

 

 


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