2019年7月、参議院選挙を目前にしながら、日本の民主主義は末期的状況にあり、その土台となる日本国憲法も危機に瀕しているのが現状です。特にここ数年、日本では政治をつかさどる政治家のことばがどんどん虚しいものとなり、政治に対する絶望と無力感が蔓延して、私たちの日々の生活は民主主義とも憲法とも無縁であるような気にすらなっています。しかし、実際には、無縁であるどころか、民主主義も憲法も私たち一人一人の存在を支えるうえで大きな役割を果たしているはずです。
早稲田小劇場どらま館企画2019 「憲法と身体」は、私たちの存在そのものであり、形は違っても誰もが持っている身体を通して、民主主義、憲法のことを考える視点を探ってみたいと企画されました。3日間の様々なプログラムに参加して、憲法を通して身体のことを、また身体を通して憲法のことを考えてみませんか。
企画者:水谷八也(文学学術院教授)
【日程】
8月8日~10日
【場所】
すべて早稲田小劇場どらま館
【詳細】
【WS】 〈ドラマティーチャー・いしいみちこ〉先生によるワークショップ
「身体の声に耳すまし、個人の身体を取り戻す」
追手門学院高校表現コミュニケーションコースで表現教育を実践している石井路子先生のワークショップです。「身体はその人の歴史を背負っています。だから一人一人全く違う。現代はみんな一緒じゃなきゃいけないという感覚が強いけど、違っていいことがあるんだよ」(『すばる』2019年7月号より)と語りかける石井先生のワークショップは8月8日から10日までの3日連続のプログラムです。演劇の経験はまったく問いませんから、未経験者でも安心して応募してください。
【申込み方法変更のお知らせ】
1日、もしくは2日だけの参加の有無のお問い合わせが多かったので、
石井先生と相談のうえ、1日ごとのプログラムに変更しました。
日時:8月8日~10日 13:00~16:00
対象:3日連続して参加できる方 ⇒ 一日ごとの申し込みができるようになりました。
※複数日参加の場合、予約フォームの備考欄に参加するお日にちをご記入ください。
参加費:1日の参加費 早大生・早大サークル所属学生:500円 他大生:1,000円
※本企画は基本的に学生限定となりますが、状況に応じて一般の方も受け付けます。空き状況に関してはどらま館までお問い合わせください。
定員:15名 (早稲田の学生を優先します。)
また毎回5名まで見学者を受け入れます。見学の予約は[email protected]までメールでお申し込みください。
受付完了の連絡をもってご予約とさせていただきます。
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【TALK】 〈ドラマティーチャー・いしいみちこ〉が目指すもの
「私は身体から教育を変えたい。人と人との関わり方を知り、成長するための手段として、演劇をはじめとした身体表現を取り入れた授業をしているんです」(『すばる』2019年7月号より)日々の授業の中で知識(文字)よりも「身体知」を重視し、一人一人の身体に直接働きかける石井先生の授業は、現代の日本でどのような意味を持つのでしょうか。〈ドラマティーチャー・いしいみちこ〉先生に、表現教育の過去と未来について語っていただきます。
出演:いしいみちこ (聞き手:宮野祥子)
日時:8月8日 19:00~20:30
対象:どなたでも参加できます。(他大生、一般の方も歓迎)
参加費:無料
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【TALK】 〈『俺が代』と「憲法と身体」〉
日本国憲法や、1947年に発行された教科書『あたらしい憲法のはなし』、尾崎行雄、芦田均らの演説をテキストとして用いながら、日本国憲法の本質を浮かび上がらせることによって、改憲/護憲に囚われることなく憲法やこの社会についての問いを観客とともに共有するソロパフォーマンス『俺が代』を2015年から国内外で上演し続けてきた〈かもめマシーン〉の演出家・萩原雄太さんと、「見当識と素材を取り戻すための自主ゼミ」で憲法のことを扱ってきた文学学術院教授の水谷八也が「ことば」「音」としての側面から、大日本帝国憲法と日本国憲法を巡って語り合います。
萩原雄太(かもめマシーン) × 水谷八也 (文学学術院教授)
日時:8月9日 19:00~20:30
対象:どなたでも参加できます。(他大生、一般の方も歓迎)
参加費:無料
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【EVENT】 木野彩子 レクチャー・パフォーマンス『ダンスハ體育ナリ?其ノ二 建国体操ヲ踊ッテミタ』
1940年、皇国2600年を祝うべく企画された幻の東京・札幌オリンピック、万博。戦争の影響により中止となったものの明治神宮外苑競技場の建設は続きました。代わりに国のために体を鍛える様々な体操が大流行。体操大会が多数開かれるようになります。健康=美という価値観の中、建国体操は1937年紀元節(2月11日)に披露され、全国的に流行しました。一方ダンスは敵国のもの、娯楽と禁止されダンスホールは閉鎖されていきます。慰問公演などに協力する舞踊団を除いて。
女子体育と呼ばれた舞踊教育と体操を比較しながら、当時の世相を学んでみましょう。
2020年明治神宮外苑競技場跡に建設中の国立競技場で開催される東京オリンピックを私たちは目前にしています。今だからこそ、あえてスポーツではない、芸術としてのダンスを考えてみます。
80年前に起きたことを再び起こさないために。元体育教師であり、ダンサーであり、大学で教職に就く当事者である木野彩子が当時の写真、映像、新聞記事などを踏まえ行うレクチャーパフォーマンス。2018年初演。
*アフタートーク 木野彩子 × いしいみちこ (進行:呉宮百合香)
日時:8月10日 19:00~
対象:どなたでも参加できます。(他大生、一般の方も歓迎)
参加費: 一般=2,000円 学生=1,000円
定員:座席数は30席。埋まり次第、受付終了とします。
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協力:ダンスアーカイブ構想
【プロフィール】
石井路子
ドラマティーチャー。福島県立いわき総合高等学校教諭として高校生とプロの演劇人の協働を通じ、飴屋法水作『ブルーシート』(第58回岸田國士戯曲賞受賞)など多数の作品を世に送り出した。2014年度より大阪府追手門学院高等学校表現コミュニケーションコース教諭。著書に『高校生が生きやすくなるための演劇教育』(立東舎)。木野彩子
幼少より能藤玲子創作舞踊研究所にてモダンダンスを始める。お茶の水女子大学舞踊教育学科卒業。大学卒業後、中学・高校の非常勤講師として保健体育を担当し、体育の中のダンスを模索する。横浜ソロ×デュオコンペティション2003で横浜市文化振興財団賞を受賞後、2004年文化庁在外研修で渡仏、その後Russell Maliphant Companyでダンサーとして活動。その間に振付家として、日英仏韓各国で公演を行う。09年に帰国後、自らの生活をもとに問いかけるセルフドキュメンタリーの手法を用いて、言葉で語り、踊り始める。16年筑波大学人間総合科学研究科スポーツプロモーションコース修了、鳥取大学地域学部附属芸術文化センター講師として赴任。現在、教職と舞踏家の二足のわらじを履く。生きることが全てダンスとなりつつある最近。(Dance New Air 2018@Aoyama紹介ページより)呉宮 百合香
ダンス研究。現在、早稲田大学文学研究科博士後期課程在籍、(独)日本学術振興会特別研究員。ダンスフェスティバルや公演の企画・制作に多数携わるほか、公演評の執筆も行う。萩原雄太
83年生まれ。07年よりかもめマシーンを設立し、東京都を中心に活動。個人の身体と社会との関わりに焦点を当て、11年には、福島第一原発事故の避難区域から数百メートルの場所で『福島でゴドーを待ちながら』を上演。日本国憲法を扱った『俺が代』は、17年ルーマニア国際演劇祭Temps dʼImages Festivalに日本の劇団として初めて招聘される。第13回AAF戯曲賞、利賀演劇人ンクール2016優秀賞受賞。2018年、シアターコモンズ’18、TheatreTreffen International Forum(ベルリン)参加。水谷八也
1953年生まれ。早稲田大学文化構想学部(文芸・ジャーナリズム論系)教授。専門は20世紀英米演劇。編共著に『アメリカ文学案内』(朝日出版)、訳書にアリエル・ドルフマン『谷間の女たち』(新樹社)、『世界で最も乾いた土地』(早川書房)、また上演台本翻訳にソーントン・ワイルダーの『わが町』(新国立劇場)、アーサー・ミラーの『るつぼ』など。宮野祥子
専門は教育学(国際理解教育、演劇教育)。大学卒業後、渡英し修士号(教育学)取得。早稲田大学大学院文学研究科満期退学。博士(文学)。早稲田大学文学部助手を経て、現在、千葉大学非常勤講師。教職関連科目を担当。演劇ワークショップのファシリテーターも務める。
【お問い合わせ】
早稲田小劇場どらま館
Twitter:@waseda_dramakan