早稲田小劇場どらま館(以下、どらま館)は、演出家・鈴木忠志氏(1964年政経卒)らが現在の場所に創設し、1960~70年代の小劇場運動の拠点となった「早稲田小劇場」と、その後、森尻純夫氏が運営した「早稲田銅鑼魔(どらま)館」にちなんで名づけられ、2015年に開館しました。遡ること3年、耐震強度不足のため閉館、取り壊しとなった「早稲田芸術文化プラザどらま館」の再建を当時の演劇学生が大学に対し提案したことがきっかけとなっており、本学が創立150周年を迎える2032年までの行動計画を定めた「Waseda Vision 150」において、「ワセダ演劇の発信力強化プロジェクト」として位置づけ、どらま館のさまざまな企画・運営により、新たな文化の創成、地域活性化に貢献していきます。
どらま館の理念は、「ワセダ演劇」を継承・発展させ、優れた演劇文化を発信し、学生を中心に次代を担う演劇人や演劇を通して広く社会に活躍できる人材を育成していくことにあります。学生演劇を母体として多くの実演家、舞台制作者、技術者等が輩出されてきたことは早稲田文化のおおいなる伝統ですが、演劇の分野にとどまらない多様な人材が行き交う早稲田大学の強みと、教育・研究の優れた資源を最大限に活かし、多彩な挑戦が実践される価値創造の場を提供します。
2019年度からは、学生が単に演劇公演を行うだけでなく、次なるステップとして主体的に劇場運営に携わる制作体制への転換をはかりました。その後、コロナ禍の影響により当初の計画は大きな変更を余儀なくされましたが、オンライン上で学生発信の企画を多数実施しました。今後も学生を基軸とし、どらま館を早稲田の地域に根ざす劇場とするべく、その在り方を模索していきます。
既存の価値が揺らぐこの時代に、さまざまな人が訪れるどらま館が舞台となり、多くの試み、深い語り合い、新たな交流が生まれることで、この小さな劇場が遠く大きな時空に繋がっていくことを願ってやみません。
早稲田大学文化推進担当理事
渡邉義浩