The Hirayama Ikuo Volunteer Center (WAVOC) 早稲田大学 平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)

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タンザニアで世界の見え方が変わった~マジぱねぇゾウ害~(第4回/全4回)

タンザニアで世界の見え方が変わった~マジぱねぇゾウ害~(第4回/全4回)

執筆:参加者一同
編集:創造理工学部2年 大久保優哉

GEC科目「アフリカゾウとの共生を実践するボランティア」では、ゾウが農村を襲う“ゾウ害”について学び、実際に現地に赴き、その実態を調査しました。全4回で配信している「マジぱねぇゾウ害」シリーズ、今回はその最終回としてタンザニアでの現地実習を通じて私たち学生が学んだことを紹介します。

村人との交流会では日本の歌を一緒に歌った

以下は、現地実習を終えた後に、私たちが書いた報告書の要約です。テーマは、“タンザニアで一番印象に残った経験を一つ取り上げて、それについて掘り下げて考察する”というものです。ここから、タンザニアの現地の雰囲気、そして私たちが現地で何を思い、何を考えたかを感じてください。

「2つの速度」(教育学部2年 伊藤河聞)

タンザニアにいても世界の情報が簡単に手に入る世の中において、人間社会を取り巻く社会環境はすぐに変化します。一方で、サバンナなどの自然環境は果てしなく長い時間をかけないと変化しません。日本人とタンザニア人は社会環境においては異文化という壁で隔てられていますが、自然環境においてはどちらも同じ「種・ヒト」です。私は今まで発展途上国でのボランティアを考える際に、異文化という障壁を隔てて向き合ってきました。しかし、それは本質的ではなく、重要なのは隣人として向き合うことだと気がつきました。

「本当の問題は“ゾウ害”なのか」(創造理工学部2年 大久保優哉)

この授業で“ゾウ害”という問題があると知り、この問題を調べていく中で、「現地の方々よりも最新の技術や知識を有する私たちなら、被害を軽減する方策を簡単に思いつくことができる」と渡航前は思っていました。しかし、実際に現地に赴くと、彼らは彼らなりの事情の下で、日々より良くなる方法を模索していることを知りました。日本人の常識と照らし合わせると考えられないようなことも、彼らの止むを得ない事情に基づいているのだと気づかされました。今回の経験から私は、当事者の事情を知らずに物事を判断することの危うさを学びました。

アフリカの夕陽

「意外と身近?アフリカ」(社会科学部2年 岡山慶太)

今回が初の海外であった私にとって、この渡航は価値観を変える大きな契機になりました。渡航前の私はアフリカに対して「荒涼とした土地が広がっている」「動物がいっぱいいる」という漠然とした印象を抱いていました。実際に訪れると、サバンナやステップ、森林など多くの植生を目の当たりにし、アフリカが多様性に富んだ場所であることを実感しました。この渡航で私は、未体験のものへの想像と実際の印象は時に大きく乖離することがあることを学び、初めてのことに挑戦しなくては、と思い直すようになりました。

「おもてなし民族のアフリカ人」(文化構想学部4年 小池真依)

「KARIBU」は「ようこそ」という意味のスワヒリ語です。タンザニアでの日々は盛大な歓迎を浴びる毎日で、「KARIBU」で表される歓迎の気持ちを多くいただきました。日本の「おもてなし」はさりげない気遣いを言葉や形で表現するのに対し、「KARIBU」は歓迎の意を直接的に全力で伝えるものです。今回の出来事を踏まえて私は、日本人はTOKYO2020に向けて、形式化された「おもてなし」ではなく、「KARIBU」のように気持ちのこもった「おもてなし」を、日本らしく行えるよう考えていく必要があると思いました。

最終日には感謝の気もちをこめてカレーライスをふるまった

「タンザニア人間観察」(教育学部2年 康一炜)

私が最も印象に残ったことは、タンザニア人の社会性です。彼らは私の要求や表情に敏感で、「心の理論(人の頭の中の信念と要求を読める能力)」が発達しているのではないかと思いました。しかし、彼らは高い社会性の一方で、国と社会の新しいルールには鈍感です。他方で国家のルールに敏感な先進国では、核家族化など近隣の交流が減少し、社会性が弱くなっています。このことから社会や科学技術の発達と人間の社会性には関係があるのではないか、社会の発達とともに古い伝統や社会性が必要なくなるのではないかと考えました。

観光客の目の前を通り過ぎるゾウ 観光客に慣れている

「観光資源と害獣というゾウの矛盾」(社会科学部2年 高谷健人)

「野生の王国」の動物は確かに “野生”ですが、観光客との接触が多く、人に慣れていました。このことによって生じているのが、野生のゾウが農村を襲う“ゾウ害”です。つまり「野生の王国」という商品は国家収入の柱である一方で、“ゾウ害”の原因でもあるという矛盾を孕んでいます。タンザニアにとってこの商品を失うことは現実的ではないため、この矛盾を根本的に解決するのは不可能です。だからこそ、“ゾウ害”の一因となっている観光客側にもこの事実を知ってもらい、外から“ゾウ害”への対策や被害への補助を増やすことが必要です。

「私たちが目指す“在るべき形”」(文学部2年 中谷ひなの)

自然かつ伝統的な共存とは何か。以前の私はこの問いの“在るべき姿”に対して非当事者の理想(自然や伝統とは元来の姿である)を反映していました。しかし、今回の渡航で、当事者が今の状態を最適だと思うなら、今存在している姿が元の姿から変化していても、それは“在るべき姿”だと思うようになりました。また、同時に生存するという意味の“共存”よりも、助け合って生活するという意味の“共生”の方が相応しいと考えました。そして、“共生”するには誰もが違う立場の声に耳を傾ける姿勢が必要不可欠であると思いました。

伝統文化の弓矢大会にも参加した

「都市と地方の生活を経験して地方が豊かになる方法を考える」(教育学部3年 古川将)

実際にアフリカの貧困地域に行ってみて、彼らが経済的に豊かではないからといって不幸せではないことに気がつきました。なぜなら、陽気な挨拶と力強い握手という人との距離を縮めるコミュニケーションを通じて、彼らは精神的に豊かであると感じたからです。しかし、精神面だけではなく経済的にも彼らが豊かになるには、“ゾウ害”に苦しみゾウ退治に奔走している現地の暮らしを多くの人に知ってもらい、関係人口を増やすことが重要だと考えます。それによって現地の人たちのゾウ退治に対するモチベーションも上がり、より効力のあるゾウ退治を行うことができるようになると思います。

「宗教のありかた」(法学部3年 松見恭佑)

かつての私は宗教とは敬虔なものであり、日本のクリスマスのように複数の宗教的活動を取り入れる文化は、国際的にみて特殊だと思っていました。しかしタンザニアの村では、十字架も聖書もない教会が、キリスト宗派の一つだと認識されていました。このことから、土着の個性的な文化に合わせた形で宗教も形を変えているのだと気がつき、文化的・俗的な部分を含んだのもまた宗教であるとわかりました。今回の経験から、私の中での“宗教とは何か”という問いに対する答えは、“宗教とは判然としないものである”と確信するに至りました。

音楽に合わせて歓迎のダンスをしてくれる人々

「十人十色を楽しむ」(文学部2年 涌井陽)

タンザニアでは、私が辛いと感じる環境を現地の人々が楽しんでいることに驚きました。当たり前のことですが、幸せの基準は人それぞれだと改めて実感しました。その一方で、タンザニアでの地域開発の在り方には疑問を抱きました。というのも、何が重要であるかは人それぞれなのに、セレンゲティ県の副知事は“ゾウ害”に苦しむ村人たちの意見に傾聴することなしに、ゾウの観光資源としての重要性だけを主張していたからです。その経験から私は、「外部からの刺激を許容する寛容さ、謙虚さ」を持つことの大切さを知りました。

畑の中にあるゾウの見張り台

これで、全4回で配信している「マジぱねぇゾウ害」シリーズは終わりです。最後まで読んで下さり、本当に有難うございました。読んでくださった方が、「野生の王国」タンザニアという“明”の側面の裏には、“ゾウ害”で苦しんでいる人々がいるという“暗”の側面があるということを、少しでも知っていただけたのであれば幸いです。いつの日かこの問題が解決することを願って、本シリーズの締めくくりとさせていただきます。

 

*報告書の全文はこちら からダウンロードできます。

 

LINEスタンプ「うざいゾウ」

私達はゾウ害を伝えるツールとして、またその収益を“ゾウ害”で苦しむ方々に寄付することを目的として、LINEスタンプを作成しました!「うざいゾウ」というスタンプです。

ぜひ、LINEで検索して、友人とふざける時などに使ってみてください!このスタンプを使いながら“ゾウ害”問題を思い出してもらえれば嬉しいです。さらには、使った相手に、この問題のことを伝えてもらえたら最高です。この問題を知る人が増えていけば、やがては問題の解決につながると私たちは信じています。

タンザニアの観光施設への違和感 ~マジぱねぇゾウ害~ (第1回/全4回)

ロバンダ村・ミセケ村での“ゾウ害”調査報告 ~マジぱねぇゾウ害~(第2回/全4回)

ゾウ害を防ぐために私たちにできること~マジぱねぇゾウ害~(第3回/全4回)

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