ロバンダ村・ミセケ村での“ゾウ害”調査報告 ~マジぱねぇゾウ害~(第2回/全4回)
執筆:文学部2年 中谷ひなの、教育学部3年 古川 将、法学部3年 松見 恭佑
編集:創造理工学部2年 大久保優哉
GEC科目「アフリカゾウとの共生を考えるボランティア」の海外実習として、タンザニアにて約2週間、岩井先生・二文字屋先生と履修生10人で、現地調査を行いました。全4回で配信している「マジぱねぇゾウ害」シリーズ、今回はその第2回としてロバンダ村、ミセケ村での調査内容を紹介します。
“ゾウ害”とはゾウが村の耕作地を襲撃し、村の住民が作物の収穫ができなくなる被害のことです。ゾウはタンザニアでは保護動物に指定されているため、住民は、ゾウが襲撃してきても反撃することはできません。この“ゾウ害”による被害がどの程度のものなのか、そしてどのようにすれば“ゾウ害”被害を抑えることができるのか調べるため、 私たちはロバンダ村とミセケ村で調査をおこないました。
ロバンダ村、ミセケ村はアフリカのセレンゲティ国立公園に隣接した村であり、どちらも人口は3,000人程度、その大半がイコマ民族です。どちらの村も農業(主にトウモロコシ、ソルガム、キャッサバ)や牧畜業(ウシ、ヤギ、ヒツジ)を営む人が多いため、“ゾウ害”対策が重要となっています。ミセケ村は、被害に遭っている農家全体が連携して対策する体制ができており、ワイヤーフェスの設置と管理、毎晩のゾウの見張りと追い払い活動を実施しています。一方で、ロバンダ村は連携体制がないため、個人でできる対策に留まっています。
下の表が調査結果をまとめた内容です。この結果で特筆すべき点は農業被害率がロバンダ村では57.5%であるのに対し、ミセケ村では17.3%と大きな開きがあることです。何故このような違いが生じたのでしょうか。その原因は“ゾウ害”対策にあります。
「“ゾウ害”対策を行っているか」という質問に対し、「はい」の割合がロバンダ村では64%であったのに対し、ミセケ村では92%でした。また、「“ゾウ害”対策を近所の人と協力していますか」という質問に対し、「はい」の割合がロバンダ村では73%であったのに対し、ミセケ村では92%でした。この“ゾウ害”対策の差が40%もの被害率の差を生じさせたのです。これは見方を変えれば、ミセケ村が行っている“ゾウ害”対策(ワイヤーフェンスの設置、パトロール)には大きな効果があるともいえます。
今回、私たちはロバンダ村で14件、ミセケ村で13件の調査をおこないました。その中には“ゾウ害”によって全ての耕作地が収穫不可能に追い込まれてしまう方もいました。また被害は少なくても被害を抑えるためにパトロールをし、1日の睡眠時間が3~4時間しかないという方もいました。“ゾウ害”の問題はこんなに深刻であるにもかかわらず、なかなか解決しません。この状況を改善するために私たちにできることはあるのでしょうか。それについては次回、述べたいと思います。