【教員便り】
開発途上国で広がる新たな環境問題―水銀汚染を前に学生に何ができるのか
セミナー&ワークショップ開催報告
佐野 洋輔 講師(平山郁夫記念ボランティアセンター)
2026年10月13日、早稲田大学ボランティア・アカデミー「開発途上国で広がる新たな環境問題―水銀汚染を前に学生に何ができるのか」を開催しました。早稲田大学内外から多くの方が参加し、開発途上国で広がる水銀汚染を前にして、日本に暮らす私たちがこの問題にどう関わることができるのかを一緒に考えました。

なぜいま水銀が問題なのか
冒頭では、私から「なぜいま開発途上国では水銀汚染が問題になっているのか」をお話ししました。まず、開発途上国で行われている零細小規模金採掘(個人や小規模な集団による金採掘)が世界中の人為的な水銀排出量の約4割を占めていることを紹介し、金の回収方法の実演や現地の映像を通じて、なぜ水銀が使われてしまうのかを示しました。
続いて、2017年に「水銀に関する水俣条約」が発効したものの、開発途上国では金採掘による水銀排出の勢いは収まっておらず、日本に住む私たちも、水銀汚染の潜在的な被害者として、また、水銀を使って回収された金を消費する加害者として、この問題とつながっていることを説明しました。そして、日本ではまだまだ認知度が低いこの水銀汚染の問題について、学生たちがアクションを起こす重要性を説きました。
![]() 筆者による水銀問題の解説 |
![]() カメラで投影しながら金の回収方法を実演する筆者 |
グローバルな環境問題への学生たちの取り組み
続いて、グローバルな環境問題の解決に取り組む学生2名を講師として招き、それぞれの活動を紹介していただきました。
一般社団法人Change Our Next Decade(COND)代表理事の多計和真さん(東京農工大学)からは、日本の若者の声を集めて国際会議の場で伝えてきたCONDのこれまでの活動と、日本の子どもたちに生物多様性の問題を伝えるカードゲームを紹介していただきました。実際にゲームを体験した参加者たちは、人や動物の行動が環境にもたらす意外な結果に驚いていたようでした。
ASGM絵本の会代表の竹中文香さん(国際基督教大学)からは、「悪者を作らない」をモットーに制作している水銀問題を伝える絵本とすごろくを紹介していただきました。実際にすごろくを体験した参加者たちは、ある行動が「〇〇的には良いけど××的には好ましくない」という環境問題の複雑さをうまくゲームに落とし込んだ設計に感心しているようでした。
![]() 多計さんが用意したカードゲームを体験する参加者 |
![]() 竹中さんが用意したすごろくを体験する参加者 |
自分たちにできるアクションを考える
その後、私の問題解説と登壇者たちの活動紹介をヒントに、開発途上国の水銀問題の解決に向けて学生に何ができるのかを考えるグループワークを行い、各グループで考えたアクション案を参加者全体に向けて発表してもらいました。(1)メチル水銀が魚介類に蓄積することに着目し、寿司店で家族が水銀問題を学べる機会をつくる案、(2)金のサプライチェーンに着目し、水銀を使わずに採掘された金の使用を大企業に働きかける案、(3)開発途上国の金採掘地を実際に訪れて問題を学び、現場の実情を発信する案など、さまざまな提案が出されました。

グループで考えたアクションを発表する参加者
最後に、水銀問題を現場で学び、実際の活動につなげる機会として、私から二つの取り組みを紹介しました。2027年2月にはインドネシアスタディツアーを開催し、同年4月からはインドネシアの大学生とともに水銀問題の解決に取り組むボランティアプロジェクトを始動する予定です。
おわりに
終了後のアンケートには、「ボードゲームを通じて問題を『自分ごと化』させる手法は新鮮であり、ユースならではの発想だと感じました。」といった社会人の方の感想や、「異なる立場から問題を捉える機会を得られる今回のイベント形式は、とても有意義だったと思います。」といった学生からの感想が寄せられました。
地球温暖化、生物多様性の消失、水銀汚染などのグローバルな環境問題は、関心があっても、何から取り組めばよいのか分からず、途方に暮れてしまうことがあると思います。しかし、こうした問題には、それぞれ具体的な現場があります。その現場を訪ねたり、人々の声に耳を傾けたりすることで、自分に何ができるのかが少しずつ見えてくるのではないでしょうか。本企画が、みなさんにとって、環境問題への自分なりの関わり方を見つけるきっかけになればと思います。








