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開催報告:「日本からの声〜新英語文芸誌『MONKEY』刊行記念トーク+朗読」

「日本からの声〜新英語文芸誌『MONKEY』刊行記念トーク+朗読」

2020年10月10日、日本現代文学作品の英訳を中心に紹介する文芸誌『MONKEY: New Writing from Japan』の創刊を記念するイベントが早稲田大学で開催された。ウェビナー形式のイベントは二部構成で行われ、その後は視聴者からの質問に答えるQ&Aへと続いた。第一部は編集者によるパネルで、創刊者で編集者のテッド・グーセン氏と柴田元幸氏、編集主幹のメグ・テイラー氏、また編集に協力したローランド・ケルツ氏が参加した。第二部は作家と翻訳家によるパネルで、今まで数多くの賞を受賞してきた日本人作家の古川日出男氏、柴崎友香氏、きたむらさとし氏に加え、翻訳家のジョーダン・スミス氏とポリー・バートン氏が参加。また本イベントを企画し、自身も日本文学の翻訳家である由尾瞳氏が通訳とモデレーターを務めた。登壇者らが雑誌の編集過程について興味深い会話を交わし、作家や翻訳家が活気ある朗読を披露した後、それぞれの作品を深掘りするような議論が繰り広げられた。Q&Aでは、自分の作品に対する作家の見解や、作品を朗読することについて、翻訳する上でのアドバイス、海外での日本文学への見方における変化など、さまざまなトピックについてパネリスト全員が議論した。SGU国際日本学拠点が主催した本イベントには、早稲田大学のコミュニティーと世界中から集まった視聴者の総勢295名が参加した。

まず第一部では、『MONKEY』の編集者たちによるディスカッションが行われた。初めに柴田氏が、英語版『MONKEY』は、2013年に刊行された日本語の『MONKEY』に続く刊行物であり、本誌は日本文学の全景を紹介するものではなく、氏とグーセン氏とテイラー氏が最高に面白いと思った作品を選んで掲載していることを説明した。そして日本と北米の作家によって書かれた「作品と作品との間に対話が生まれたら嬉しい」と述べた。グーセン氏もそれに賛同し、本誌の前身である英語雑誌『Monkey Business』が、雑誌を通して、また北米やアジアで行ってきた数々の刊行記念イベントやツアーを通じて、日本人作家と英語を使用する作家との間で育まれてきた人間関係について思いを馳せた。またテイラー氏は、本誌の目的は、日本と英語圏の作家が翻訳を通じてお互いの作品を読み、それについて会話ができる環境を発展させることだと加えた。ケルツ氏は、『MONKEY』の驚くべき質の高さに触れ、英語の文芸誌がここまで高いレベルの翻訳を掲載するのは珍しいと述べた。ケルツ氏が編集者たちに、本誌はどの程度日本文学を代表していると言えるかと尋ねると、グーセン氏は『MONKEY』は特に日本文学を代表するものではなく、日本人作家の作品が収録されているか否かにかかわらず、文学を読むのは楽しいというシンプルなメッセージを伝えていると答えた。柴田氏は、英語の読者が自分たちの知っている文学と日本文学がどのように類似し、また異なるのかを見つける喜びに触れてもらえたら嬉しいと期待を口にした。

第二部では、3人の作家とその翻訳者が『MONKEY』に掲載された作品を紹介し、議論した。まず、古川日出男氏と翻訳者のスミス氏が「偽ガルシア=マルケス」を朗読。ケルツ氏によって、福島県出身の素晴らしい作家であるだけでなく、今日活躍する最も革新的な作家の一人と評された古川氏は、翻訳者は「外国の読者が触れて、感じて、味わえる第三のボイスを生み出す」という独自の見解について詳述した。ガルシア=マルケスの作品を翻訳で読んだ経験に触発されたという古川氏が、マルケスがメキシコで住んでいた場所を訪れた時のことについて触れると、スミス氏は、古川氏の作品に描かれる建物や土地から、氏とマルケスとの結びつきが見えてくるとコメントした。バイリンガル朗読の後、古川氏は世界中の才能ある作家、たとえばスティーヴ・エリクソンや中上健次にとって、マルケスは曽祖父のような存在だと述べ、古川作品はマルケスを追跡する推理小説のようだと表現したケルツ氏に対して、古川氏は「面白い物語の中核には、謎があるものだ」と答えた。

続いて柴崎友香氏が「うちの晩ごはん」を朗読し、その後でポリー・バートン氏が英訳を朗読した。エッセイや短編小説も手掛ける小説家の柴崎氏は、2014年に『春の庭』で芥川賞を受賞している。朗読の前に、柴崎氏は自分の作品に通底するテーマは「記憶」や「場所」であると説明した。そして、現在とは過去の経験が集まった場所であり、また他者の経験や記憶を共有する場所でもある。このエッセイにもそのテーマが含まれていると述べた。母親の話を他人の話のように聞いたという内容のエッセイだが、今回改めてこの作品を読み返した柴崎氏は、自分の書いた話というよりは、どこか他人が書いた話のように読んだという。バイリンガル朗読の後、父親について尋ねられた柴崎氏は、人というのは色々な面を持っているもので、その人がどう見えるかは、見る人によって変わる。まさに型からはみ出すようなところが人間の面白さだと思う。それ故、父親を描く際にはある特定の型に当てはめようとは思わなかったし、弟と自分のために父親が昼食や夕食を作ってくれることについて、彼が本当はどう思っていたのかは未だに謎で、謎だからこそ書きたくなると述べた。

最後にきたむらさとし氏が、『MONKEY』に掲載された自身の作品「The Heart of the Lunchbox」の予告編として、手作りの紙芝居を披露した。きたむら氏は受賞歴のある絵本作家・イラストレーターで、海外のブックフェアや国内の小学校などで紙芝居を披露している。今回の紙芝居には、残り物を詰めただけの地味なお弁当を恥ずかしく思っている男の子が登場する。彼は忙しい母親に、他の子供のような豪華なお弁当を作って欲しいと頼めない。でもある日、母親は彼の世界を根底から覆すようなお弁当を作る。この物語の続きはぜひ『MONKEY』で読んでいただきたい。紙芝居のパフォーマンスが終わると、ちょうどこの日が誕生日だというテイラー氏に、きたむら氏が作ったサプライズプレゼントを柴田氏が披露した。プレゼントを開けると、座って空を見上げている男の子が入ったお弁当箱が現れた。

イベントの終わりには、登壇者が視聴者からの質問に答えた。翻訳に関心のある学生たちへのアドバイスを求められると、スミス氏は経験のある翻訳者から指導を受けること、共訳することを勧めた。由尾氏は、素晴らしい編集者と仕事をすることの重要性について述べ、『MONKEY』では、柴田氏が日本語の原文と英訳とを徹底的に比較して見てから、グーセン氏が英訳をチェックし、最後にテイラー氏が出版に向けて最終調整をするというように、何人もの編集者の目を通って完成稿へと至るプロセスについて説明した。それに対して柴田氏は、良い翻訳者は編集されることを喜んで受け入れる傾向があり、往々にして謙虚だと答えた。二つ目の質問は、作品を音読することの重要性について。古川氏は自分の体を使いながら作品を生み出しているので、執筆は声を使って作品を朗読することと似ていると述べた。また柴崎氏は、人の行動として、書いたり読んだりするよりも以前から話すということは存在するので、声に出して読むと、人の語りに近い表現と思えるし、朗読している瞬間にしか表現されない何かがあるように思うとコメントした。海外における日本文学の受容についての三つ目の質問に対して柴田氏は、日本文学への理解は良い方向に変わってきているが、その理由として一つには翻訳の質が向上していることがあると答えた。また「読者は日本のことを知ろうとして日本人作家の小説を読んではいない。単に作品が面白いからという理由で読むようになった」とも述べた。コロナ渦ではあるが、今後さらに多くの朗読やイベントが続くことを期待する前向きな声とともにイベントは終了した。

動画全編についてはこちらをご覧ください。

 

イベント概要

開催日時:2020年10月10日(土)10:00-12:00
開催手法:Zoom Webiner
主催:スーパーグローバル大学創成支援事業 早稲田大学国際日本学拠点
共催
早稲田大学総合人文科学研究センター 角田柳作記念国際日本学研究所、「創作と翻訳の超領域的研究」研究部門、早稲田大学大学院文学研究科「国際日本学コース」(Global-J)
登壇者
Ted Goossen (翻訳者・York University教授)、柴田元幸(翻訳者・東京大学名誉教授)、Meg Taylor(編集者・Ryerson University)、Roland Kelts (ジャーナリスト・早稲田大学非常勤講師)、古川日出男(作家)、柴崎友香(作家)、きたむらさとし(絵本作家)、Polly Barton(翻訳者)、Jordan Smith(翻訳者・城西国際大学准教授)
オーガナイザー:由尾瞳(早稲田大学准教授)

 

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