本セミナーは、早稲田大学高等研究所「人新世と人文学」セミナーシリーズと総合人文科学研究センター「環境人文学」セミナーシリーズの共同開催で実施した。
講演者として環境人文学の第一人者であるコロンビア大学シラネ ハルオ教授をお招きし、山という観点から、人間と環境との関係を捉え直すことを試みた。シラネ氏は、山、川、動物などの自然、また道具類等のnon-human(非-人間)に人格を与える(personhood)ことによって、畏怖が生じ、人間に対するのと同じような尊重やいたわりが可能になること、さらにはそれらの神格化や聖地化が果たされるという視点を提示し、人間とそれを取り巻く環境との関係性を多方面から論じた。
また、コモンズとしての里山においては「人間も自らの一部を放棄して共有する」という理念が不可欠であること、山を自然と人間の葛藤と大災害の場として探求する視点、人間やnon-humanの魂やafter-life(死後)の扱い、里山(人間の社会に近い)と奥山(相対的に遠い)の違い、山の浄化作用と修験道の関係など、多岐にわたるスケールの大きな問題提起がなされた。学内外の研究者に加え、学部生や大学院生も含む100名程の参加者を得、質疑応答も1時間近くに及び活発な議論が交わされた。
イベント概要
- 講演者:シラネ ハルオ(コロンビア大学東アジア言語・文化学部 教授、角田柳作記念国際日本学研究所招聘研究員)2022年より日本学士院客員
- コメンテーター:大西 健夫(岐阜大学教授)
- 挨 拶 / 司 会:河野 貴美子(早稲田大学教授、総合人文科学研究センター角田柳作記念国際日本学研究所 代表)、山本 聡美(早稲田大学高等研究所 副所長、文学学術院 教授)
- 日時: 2023年5月23日(火)17:00~19:15
- 会場: 早稲田大学小野記念講堂、対面開催(事前予約不要)
- 言語: 英語
- 対 象: 教員・研究者・大学院生
- 主 催: 早稲田大学高等研究所、早稲田大学総合人文科学研究センター角田柳作記念国際日本学研究所
共 催: スーパーグローバル大学創成支援事業早稲田大学国際日本学拠点、早稲田大学美術史学会