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特別授業:映画『スウィート・カントリー Sweet Country』鑑賞と2人のオーストラリア先住民映画監督をお迎えして

報告:澤田敬司(法学学術院)

11月25日、GEC「オーストラリアの文化(応用)」(文化構想学部「英語圏文化研究2」、国際コミュニケーション研究科「Diversity Studies」と合同)の特別授業を行いました。本授業では、在日オーストラリア大使館のご尽力により、オーストラリア外務貿易省「先住民スピーカー・シリーズ」プログラムとして、ウォリック・ソーントンWarwick Thornton監督、スティーブン・マックグレガーSteven McGregor監督という二人の先住民映画監督をお迎えすることができました。ソーントン氏が監督しマックグレガー氏が共同で脚本を書いた映画『スウィート・カントリー』を上映し、その後両氏から作品についてお話を伺い、受講生からの質問に答えてもらいました。

両監督は、近年充実の度を増し世界的に注目を浴びている、オーストラリア先住民による映像作品の代表的な作り手です。ソーントン監督は長編デビュー作『サムソンとデリラ』が2009年にカンヌ映画祭カメラドール賞を受賞したのを皮切りに、国際的な評価を確実にしてきました。マックグレガー監督もドキュメンタリー映画『クロッカー島からの脱出』(2012年】を監督したほか、脚本家としてオーストラリアの人気テレビドラマ『ミステリー・ロード』や『レッドファーン・ナウ』の脚本で多くの賞を受賞しています。

2017年にヴェネツィア国際映画祭審査員特別賞やトロント国際映画祭プラットフォーム賞を受賞するなど、国内はもとより国際的にも高い評価を得た『スウィート・カントリー』は、1920年代のオーストラリアのフロンティアを舞台とした作品です。白人農場主を殺害して奥地に逃げ込んだアボリジナルのサムとその妻、それを異常な執念で追跡する白人警官。サムは妻を伴って自首し、フロンティアの町で裁判が開かれ、殺人は正当防衛であったことが認められますが、それに納得しない何者かによるサムへの恐ろしい報復が待っています。

今回の特別授業では、受講生からの質問が数多く投げかけられ、それに対して時には専門的な立場から、そして時にはなぜいま自分たちが歴史と真実に基づいた物語を語らなければならないのかという点について、両監督が丁寧にお話をしてくださり、とても充実したディスカッションが展開しました。

以下に、授業参加者からの声を掲載します。

(文化構想学部 高原歩希)

現代でもまだ完全になくなったとは言えない肌の色や出身地での差別が恐ろしく、悲しいと考える映画だった。立場の弱い者が強い者に対抗したことで立場が同等となった瞬間がとても印象的だった。これによって主従関係が崩れ、その関係が立ち消えたときも、追われる身となったサムの苦難も印象的。決してハッピーエンドではないし、残酷なシーンも多々あるのに、「スウィート・カントリー」という主題にしたというのはとても考えさせられた。

監督は、映画を作るにあたり最も意識していることは、お金よりストーリーをきちんと伝えることだとおっしゃっていた。現在の日本ではつい興行収入などピックアップしがちだが、このような人種差別の映画や古い時代を描いた映画などは、風化していかないうちに多くの人々の元へ届けるべく上映すべきだと思う。監督もおっしゃっていたように、歴史を振り返らずに前を向けと言っている人は一定数いるが、歴史を語ることで、忘れたくないこと、忘れてはいけないことを忘れないように届けることは大切だと思う。

(文化構想学部 見浪花梨)

映画最後の「この国に希望はあるのか?」というせりふが印象的でした。特にオーストラリアという国は、元々先住民族であるアボリジニが住んでいたところへ白人が移住してきて、その後白人による支配や差別が行われるという、アボリジニの人々にとっては非常に理不尽で、後世に語り継がれるべき負の側面を持つ国です。現在ではそれなりの共存が出来ているとはいえ、当時のアボリジニの人々や彼らに理解を示す一部の白人にとっては本当に希望の見えない絶望の日々だったのだろうなと感じました。お話にもありましたが、声なき者の声に耳を傾ける、また勝者の歴史ではなくその裏にある負の歴史にフォーカスするということがいかに重要であるかがわかります。映画など映像作品というのは、一般人が一番接触しやすい形であると思うので、そうした隠れた歴史・事実に目を向け、作品に変えるという役目は非常に重要であるなと感じました。こうした機会を通して、自らが関心を持ち何かしらの行動に移し考えるということが今を生きている私たちがやるべきことで、後の世代の人々へ伝えなくてはならないのだろうと思いました。

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