第一期プロジェクト期間で展開した以下のラボ(グローバルバイオメディカルグリーンサイエンスラボ、ブロックチェーン研究教育ラボ、SDGs フロンティアラボ、企業変革・スタートアップイノベーションラボ、早稲田リサーチフロントラボ)の活動を継続し、さらにメンバーを増員して、それぞれのラボ間の連携により、未来社会における課題、超高齢化社会における課題、SDGs 実現に向けた課題を解決するため、well-being を踏まえた新しい科学知を創出する融合研究とイノベーション人材育成に国際共同研究などを通してグローバルな視点で取り組む。それ故、研究所名は第一期と同名とする。また、第二期では、とくに 産学官連携のプロジェクトや共同研究をいくつも新たに立ち上げ、それぞれ推進する。
第一期と同様、公的外部資金のみならず民間との共同研究費など外部資金を獲得して、国際共同研究、先端研究、総合知を活用した研究および人材育成に取り組み、基礎研究のみならず、社会実装を目指した研究を展開する。なお、先端ベンチャー・起業家養成ラボと・ゼロイチラボの名称は、「企業変革・スタートアップイノベーションラボ」と改称する。以下に各ラボの実施概要を記載する。
① グローバルバイオメディカルグリーンサイエンスラボ
本ラボでは、東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設 Tokyo Women’s Medical University-Waseda University Joint Institute for Advanced Biomedical Sciences (TWIns;ツインズ)の先端生命科学研究センターの研究者が中核となって、超高齢化社会における課題の解決に学術分野の壁を越えて取り組み、欧州、米国、アジア、中東の諸国の卓越した大学・研究機関との相補的・相乗的な共同融合研究の推進、及び人的交流の組織的展開の強化、とくに、博士人材育成のための機関間の連携の取り組みの促進などを目指して多角的に研究教育を展開する。
具体的には、ドイツのボン大学の LIFE and Medical Sciences Bonn(LIMES)、Institute for Molecular Psychiatry、及び医学部、イタリアの Italian Institute of Technology(IIT)及び聖アンナ大学院大学、米国のニューヨーク大学、オーストラリアのクイーンズランド大学、ベルギーのブリュッセル自由大学、中国の北京大学、イスラエルのテルアビブ大学やワイズマン研究所、サウジアラビアのKAUST の研究者との共同研究を推進する。スウェーデンとのわが国との連携プログラムである
「MIRAI 2」の「Ageing」、「Materials Science」、「Innovation & Entrepreneurship(IEAG)」のセッションと連携して、ルンド大学、チャルマース工科大学、ウプサラ大学などの大学と国際共同研究を推進する。
さらに、産業競争力懇談会(COCN)の研究プロジェクト「フード・サステナビリティ実現に向けたwell-being 代替タンパク質の開発と社会実装」と連携して、社会実装を目指して研究開発を展開する。
【主たる研究のテーマ例】
- 朝日透:「キラルサイエンスの研究」、「フォトメカニカル結晶の研究」、「未来社会技術創出のための機能性薄膜材料の研究開発」、「メディカルバイオデバイス・装置の研究開発」、「循環型食料生産システムの研究開発」
- 井上貴文:「神経細胞の情報処理機構の解明の研究」、「蛍光顕微鏡による神経科学の研究」
- 大島登志男:「脳の形成・発達過程を遺伝子やタンパク質の働きとして解明する研究」、「ゼブラフィッシュを用いた代謝制御機構の研究」
- 合田亘人:「生活習慣病の病態形成・進展機構の解明を目指した研究」、「糖尿病治療に繋げる再生医療の研究」、「低酸素応答の病態医化学研究」
- 佐藤政充:「微小管による細胞分裂の制御機構の解明」、「細胞骨格異常がもたらす疾患とその原因の研究」
- 仙波憲太郎:「がんの発症機構と悪性化に関わる遺伝子の発見とその機能の解明」、「がん治療に資する細胞制御の研究」
- 武岡真司:「ナノシートによるナノ絆創膏や再生医療の研究」、「リポソームを用いたナノ医療の研究」
- 武田直也:「バイオマテリアルとマイクロ・ナノ工学の融合技術による細胞挙動・機能の操作の研究」、「再生組織工学、再生医療材料・デバイスの研究」
- 竹山春子:「シングルセルゲノム解析の研究」、「マリンバイオテクノロジー:海洋生物・遺伝子資源の解析と利用」
常田聡:「腸内細菌の研究」、「複合微生物系の機能解明と構造制御の研究」
- 秋本崇之:「メカニカルストレスによる骨格筋可塑性制御」、「マイクロ RNA による骨格筋可塑性制御」
- 中西卓也:「固液界面の制御と機能性物質相の構築」
- 片岡孝介:「昆虫が支える循環型食料生産システムの開発」、「内在性カンナビノイド系の変調がもたらす加齢性記憶障害の分子基盤の解明」
- 中川鉄馬:「銅酸化物高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+x における空間・時間反転対称性の破れの検証」
- 山口佳則:「次々世代 DNA シーケンサの研究開発」、「神経細胞の3D 構造による論理回路の実証実験」
② ブロックチェーン研究教育ラボ
本ラボでは、産業界と連携して、ブロックチェーンテクノロジーの研究と教育を推進することで、わが国において不足しているブロックチェーンエンジニアを質高く輩出するとともにブロックチェーン技術と他のサイエンスとを融合させた産業技術を創出することを目指す。本学の他の人材育成プログラムとも連携し、メタバース、NFT、Web3 などブロックチェーンを活用した新しいビジネスの創出に繋がる研究とブロックチェーン分野のアントレプレナーの育成にも取り組む。
【主たる研究のテーマ例】
ブロックチェーンの設計原則に関わる教育研究暗号資産の研究
ブロックチェーン業界のジャイアントとスタートアップの研究
③ SDGs フロンティアラボ
本ラボでは、企業・官公庁との共同研究・教育活動に、サイエンスやテクノロジーの学術上の壁やシステムの壁を乗り越えて取り組み、文理・産学官等の枠を超えた研究・教育・交流を推進すること で、大阪万博(2025 年)、SDGs(2030 年)、シンギュラリティ(2045 年)を越えた先の世界の課題解決に資するとともに、日本の価値開拓・人材育成・情報発信を推進する。
学問、産業セクター、及びあらゆる研究分野の視点から、フロンティア精神を持ち、新発想の研究を推進するとともに、定期的にイベントを開催し、積極的な成果・情報発信を展開する。本ラボでは、次世代人材育成ワーキング、次世代エンターテインメントワーキング、次世代ライフサイエンスワーキング、次世代農業・食ワーキング、次世代エコノミーワーキングの5 ワーキングを設置し、適宜、プロジェクトとして産学官共同の研究を推進する。
次世代人材育成ワーキングでは、GEC に開講されている「起業特論 A:トップリーダーマネジメント」を通じて構築された学生間、学生・講師間のネットワークを活用し、日本の次世代を牽引する人材の育成に資するための研究に取り組む。他の人材育成プログラムと連携するとともに、新しい領域である「SDGs ピースコミュニケーション—」をテーマにして、グローバルな視点で人材育成を展開するための研究に産学連携で取り組む。財団法人「SDGs ピースコミュニケーション」と連携して取り組みを展開する。
次世代エンターテインメントワーキングでは、産業界と共同して、テクノロジーとエンターテインメントを掛け合わせた次世代型のエンターテインメントに関する研究を行う。
次世代ライフサイエンスワーキングでは、産業界と共同して、スマートスキャン等をはじめとする、人間の安全保障や超少子高齢化等の問題解決に資するためのライフサイエンスに関する研究をグローバルバイオメディカルグリーンサイエンスラボの研究員とも協働して展開する。
次世代農業・食ワーキングでは、AI や IoT、VR、GPS、ロボティクス等の最新技術を用い、地方創生や食糧安全保障、ひいては SDGs の目標達成に資する研究を展開する。他の人材育成のプログラムと連携して、当該分野の人材育成にも取り組む。
次世代エコノミーワーキングでは、シェアリングエコノミー、観光立国としてのインバウンド、キャッシュレス社会、IR(複合型娯楽施設)などの、次世代経済・次世代経済圏に関わる研究に取り組む。
【主たる研究のテーマ例】
次世代人材育成ワーキング「グローバルイノベーション人材の育成」
次世代エンターテイメントワーキング「エンターテイメントとの異分野融合研究」
次世代ライフサイエンスワーキング「超高齢化社会における課題解決のためのライフサイエンスの融合研究」
次世代農業・食ワーキング「先端テクノロジーを活用した地方創生及び食糧安全保障の研究」
次世代エコノミーワーキング「次世代エコノミーと先端テクノノロジーの融合研究」
④ 企業変革・スタートアップ イノベーションラボ
本ラボでは、グローバルアントレプレナーの養成、ベンチャー企業の支援、及び研究成果の社会還元に取り組み、わが国の喫緊の課題の解決に貢献することを目指す。ビジネス創出法を習得した学生の中から、起業に挑戦したい学生を発掘し、実際に挑戦する機会を得ることができるようサポートし、ビジネスモデル・コンペティションへの出場の機会を提供する。さらに、女性を対象とした起業家養成に関する講座やセミナー、国際シンポジムを開催する。海外との交流を基盤にしたイノベーション創出型の国際共同研究も推進する。 イノベーションの先端事例研究や本ラボでの研究結果の社会実装を目的とした DX 研究会の実施や人材育成講座を実施する。
【主たる研究のテーマ例】
成功事例に基づく起業家の支援・育成にかかる各種プログラムの開発・評価イノベーションの期待される技術シーズの事業化にかかる多角的な検証
⑤ 早稲田リサーチプロントラボ
本ラボでは、“Sciences and Technologies for Global Society”のビジョンを掲げ、2030 年以降の日本ならびに国際社会を思い描き、想定される課題の解決に資する実践的基礎研究や調査研究、及び新しい学問や学術分野の創成に繋がる独創性高い基礎研究に産業界、国際機関や各省庁などの行政機関、及び篤志家からの財政的支援を得て取り組み、それらに関わる国際共同研究を推進するとともに、研究成果を世界配信する。
とくに、内閣府ムーンショット型農林水産研究開発事業の「地球規模の食料問題の解決と人類の宇宙進出に向けた昆虫が支える循環型食料生産システムの開発」プロジェクトおよび JST 戦略的創造研究推進事業総括実施型研究(ERATO)の「山内物質空間テクトニクスプロジェクト」を推進する。
【主たる研究のテーマ例】
物性科学・量子科学・結晶学・光化学・神経科学・遺伝子工学・細胞生物学・情報科学・数理科学・原子力工学・電子工学・再生医療・宇宙論などの自然科学の研究分野の実践的基礎研究や調査研究