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【開催報告】「金利と法を巡る国際シンポジウム」  5月23日(土)開催されました

【開催報告】「金利と法を巡る国際シンポジウム」  5月23日(土)開催されました

0523

SAT 2026
Place
早稲田大学8号館313教室、Zoom
Time
13:00-17:25
Posted
Mon, 27 Apr 2026

「金利と法を巡る国際シンポジウム」

【主 催】国際商事研究学会
【共 催】早稲田大学比較法研究所、早稲田大学法学部、法学研究科、国際取引法学会国際契約法制部会
タシケント国立法科大学 / 国立テルミズ大学
【日 時】2026年5月23日(土)13:00~17:25
【場 所】Zoom(オンライン)および早稲田大学8号館313教室
【企画責任者名】久保田 隆(早稲田大学法学学術院教授)
【公開対象者】学生、一般、教職員

Zoom接続情報
https://list-waseda-jp.zoom.us/j/97123477360?pwd=bCabU9CHbN33dz2Hb30GJfpgPJTjDP.1
ミーティング ID: 971 2347 7360
パスコード: 259920

【使用言語】英語(通訳なし)
【講演者】山本和志・国際商事研究学会・会長、真鍋泰治・公認会計士、Said Gulyamov・タシケント国立法科大学・教授、Husain M. Radjapov・タシケント国立法科大学・准教授、Alimnazar Islamkulov・タシケント国立経済大学・副学長、Fernando Bario・ロンドン大学クイーンメリー商学部・准教授、アケミック・キュチュク・アリ・福岡大学商学部教授、Bakhshillo Khodjaev・タシケント国立法科大学・学長 ほか

≪13:00~13:20基調講演≫
主催・共催団体挨拶  久保田隆・早稲田大学・教授(5分)
基調講演 「近代とは何か-利子(と法)の観点から考察する」(仮題:15分)山本和志・国際商事研究学会・会長
≪13:20–13:40  講演0≫
講演 「利子ー金融システムの経済学から法学への応答」(15分)
植田 健一(東京大学・教授)
コメント+予定討議 (5分) 山本 和志(国際商事研究学会会長・タシケント国立法科大学栄誉卓越大学教授)
≪13:40~14:08 講演1≫
「ブロックチェーンと利子」(仮題:18分) 真鍋泰治・公認会計士
コメント+予定討議:10分   山寺智・埼玉大学経済経営系大学院・特任教授
≪14:08~14:36 講演2≫
「CBDCの文脈から」:18分  Said Gulyamov・タシケント国立法科大学・教授
コメント+予定討議:10分   久保田隆・早稲田大学法学学術院教授
≪14:36~15:04 講演3≫
「イスラム金融の文脈から」:18分 Husain M. Radjapov・タシケント国立法科大学・准教授
コメント+予定討議:10分   Alimnazar Islamkulov・タシケント国立経済大学・副学長
≪15:04~15:32 講演4≫
「ロンドン「近代」の文脈から」:18分 Fernando Bario・ロンドン大学クイーンメリー商学部・准教授
コメント+予定討議:10分   大矢伸・地経学研究所・客員主任研究員
≪15:32~16:00 講演5≫
「日本の文脈から」:18分 アケミック・キュチュク・アリ・福岡大学商学部教授
コメント+予定討議:10分   中川忍・埼玉大学経済学部・学部長
≪16:00~16:28 講演6≫
「デジタル化の未来」(仮題:18分) Zakirov Bekzod・タシケント・ウエストミンスター国際大学・研究所長
コメント+予定討議:10分  Liliya Repa・東京大学金融教育研究センター・招聘研究員

対面パート
【時 間】16:40~17:25
【場 所】早稲田大学8号館313教室
【使用言語】日本語
【講演者】山本和志・タシケント国立法科大学・客員教授

≪16:40~17:20 シンポジウム≫
提題:10分 山本和志・タシケント国立法科大学・客員教授
ゲストスピーカー相互のQ&A:20分
フロアとの質疑応答:10分
17:20–17:25  閉会の挨拶
閉会の挨拶 (5分) Prof. Dr. Islambek Rustambekov(タシケント国立法科大学・副学長)

 

【開催報告】
*参加者数 52名(うち大学院生・学部生28名)

*成果の概要
当シンポジウムは、ブロックチェーン、CBDC(中央銀行デジタル通貨)、イスラム金融、ポスト社会主義の比較制度論など、多角的な視点からデジタル秩序の到来を見据えた「金利と法」の意義を問い直す目的で開催されました。

1. 開会挨拶および基調講演
• 主催・共催挨拶(久保田隆氏 / 早稲田大学教授)
o シンポジウムの開会にあたり、世界中から集まった専門家や参加者に向けて歓迎の辞を述べました 。
• 基調講演:「近代とは何か―”未知への跳躍”という構想を利子と法から考察する」(山本和志氏 / 国際商事研究学会会長)
o 未来という「未知なる領域」へ人間が行動を起こし跳躍(リープ)するためには、勇気とインセンティブが必要であると指摘しました 。
o 人類が発見した最も普遍的なインセンティブが「利子(金利)」であり、それがシステム化されて金融のエンジンになったと説明しました 。
o 法は事後的な解釈や適用にとどまりがちですが、利子は未来へ社会を突き動かす原動力であり、それゆえに歴史上、倫理や宗教(キリスト教、イスラム教など)と常に緊張関係にあったと考察しました 。
2. 各セクションの講演および討論
■ 講演0:「利子-金融システムの経済学から法学への応答」
• 報告者: 植田健一氏(東京大学教授)
• コメンテーター: 山本和志氏
• 要約:
o 経済学の視点から、金利は金融市場における資金の需要と供給の均衡点で決定されると解説しました 。
o 「厚生経済学の基本定理」に基づき、市場で決定された金利レートは社会的最適であり、政府による不必要な価格介入はこれを損なうと主張しました 。
o 一方で、市場が健全に機能するためには「法と金融(Law and Finance)」の枠組み、すなわち財産権の確立、不確実性を抑える法の支配、効率的な破産手続き、良好なコーポレートガバナンスが不可欠であり、これらを整えることが政府の役割であると指摘しました 。
o 山本氏は、植田氏が「財産」と「法の支配」の重要性に言及した点を評価し、リベラル社会においてリスクを取って未来へ跳躍した者が成功報酬(リターン)を得る仕組みのベースであると補足しました 。
■ 講演1:「ブロックチェーンと金利―自己増殖と妥当性としての受容」
• 報告者: 真鍋泰治氏(公認会計士)
• コメンテーター: 山寺智氏(埼玉大学特任教授)
• 要約:
o 真鍋氏は(山寺氏の事前のコメントを反映しつつ)、従来の「通貨の3機能(決済、価値の保存、計算単位)」は定義として広すぎるため、最も本質的なのは「決済機能」であると再定義しました 。
o 決済手段として成立するための最重要要件は「一般的受容性(社会的受容)」であり、暗号資産においては価値の安定性がその鍵になると指摘しました 。
o また、暗号資産における金利について、理論上の金利平価説が崩れてプレミアムが生じる現状(コンタンゴ取引など)に触れ、暗号資産にも明示的な金利を認めるべきではないかと提起しました 。
o 山寺氏は、真鍋氏の試みを「貨幣を単なる決済手段から、自己増殖的な投資手段へと分析をシフトさせた点」で独創的であると解説しました 。
o ただし、歴史的には種子や家畜の貸し出しでも同様の「同じ単位内での未来の価値の組織化(自己増殖)」が見られるため、利子の発生が「貨幣」を定義する十分条件と言えるか、国家や法による強制力・一般的受容性こそが不可欠ではないかという問いを投げかけました 。
■ 講演2:「CBDCーアーキテクチュアルに設計可能な思想における利子」
• 報告者: Said Gulyamov氏(タシケント国立法科大学教授)
• コメンテーター: 久保田隆氏
• 要約:
o デジタル通貨のプログラム可能性(Programmability)により、主権者は金利を単に外部から規制するだけでなく、通貨の「アーキテクチャ(構造)」の内部に金利を直接組み込むか排除するかを選択できる時代になったとし、これを「利子の憲法(制度)的瞬間(Constitutional Moment of Interest)」と呼びました 。
o 2026年時点の世界の5つのモデル(①中国:金利の組み込み、②EU:金利の排除、③ウズベキスタン:卸売CBDCをベースとしたステーブルコイン層への委譲、④ウズベキスタン・シャリア互換:選択の可能性の憲法化、⑤米国:民間発行体に委譲し市場が再構成)を提示しました 。
o 久保田氏は、専門家主導の中央銀行によるCBDC設計が「民主的な正当性の欠如」を隠蔽するリスク、市場が主権外(DEXや海外ステーブルコイン)で金利を再構成してしまう可能性、過去の貨幣文化などの「パス依存性」による制約について質問しました 。
o Gulyamov氏は、このフレームワークはまさに技術官僚的な決定を可視化し民主的な議論を促すためのものであると回答し、市場の圧力やパス依存性があるからこそ、単一の論理に縛られない「アーキテクチャの中立性」を確保することがnormatively(規範的)に求められると応じました 。
■ 講演3:「イスラム金融の文脈から」
• 報告者: Husain M. Radjapov氏(タシケント国立法科大学准教授)
• コメンテーター: Alimnazar Islamkulov氏(タシケント国立経済大学副学長)
• 要約:
o イスラム金融は単なる特定の銀行システムではなく、貿易、投資、雇用、サービスなどあらゆる商業活動を律する倫理的・制度的枠組みであると解説しました 。
o その核心は利子(リバ)と過度な不確実性(ガラール)の禁止にあります 。
o 世界のイスラム金融実務の8〜9割は、銀行が物品を買い取ってマージンを乗せて転売する「ムラバハ」に依存していますが、これは従来の利子をマークアップ(上乗せ)というラベルに置き換えただけであるとの批判があり、自身も問題意識を共有していると述べました 。
o イスラム金融の真の精神は、銀行が貸し手ではなく投資家としてリスクと利益を等しく共有する「ムシャラカ(パートナーシップ)」や「ムダーラバ」にあると強調しました 。
o Islamkulov氏は報告の誠実さと明確さを称賛しつつ、真のリスク共有モデルがバーゼル規制等のグローバルな金融監督枠組みのなかでどこまでスケール可能か、国際資本市場の競争下でどう倫理的独自性を維持できるかを課題として挙げました 。
o Radjapov氏は、二重課税などの法的障害の解消や法整備を進めることで、従来の金融システムと健全に競合・共存できるオルタナティブになり得ると答えました 。
■ 講演4:「ロンドン「近代」の文脈から」
• 報告者: Fernando Barrio氏(ロンドン大学クイーンメリー商学部准教授)
• コメンテーター: 大矢伸氏(地経学研究所客員主任研究員)
• 要約:
o 近代経済において利子は強力なエンジンでしたが、利子それ単体ではシステムの安定をもたらさず、むしろSpeculation(投機)や道徳的不安、高利貸し(ウズリー)規制などの反発を引き起こしてきたと指摘しました 。
o 近代が利子を正常化し拡大できた本質的な理由は、利子そのものではなく、法を通じた「信頼の制度化(Information / Institutionalization of Trust)」にあります 。ロンドンが世界の中心となったのも、契約の執行可能性や商業法に対するシステム化された信頼があったからであると論じました 。
o デジタル近代においては、価値そのものがプログラム可能となり、かつて法が「外部」から裁判等を通じて行っていたガバナンスが、技術インフラの「内部(コードやスマートコントラクト)」に埋め込まれるシフトが起きているとし、「誰がプログラム可能な価値を統治(デザイン)するのか」が現代の憲法(制度)的課題であると結論付けました 。
o 大矢氏は、報告を非常に説得力があるとした上で、シェイクスピアの『ベニスの商人』における「肉1ポンドの契約(ただし血は流してはならないという裁判のレトリック)」と、それに対する法律学者イェーリングの批判を引用し、「当事者自治(契約の自由)」と「公的政策(パブリック・ポリシー)」の境界線について考察を展開しました 。
o 質問として、ステーブルコインへの利子支払いを禁止すべきか当事者自治を尊重すべきかという点を投げかけ、Barrio氏は、巨大なステーブルコインは「準貨幣インフラ」と化しマクロ経済的・システム的な外部性をもたらすため、規模やシステム的関連性に応じた公的監督とガバナンスが必要であり、今後は公私の枠を超えた「レイヤー化されたハイブリッド・ガバナンス」が現実的であると回答しました 。
■ 講演5:「日本における近代と利子ーオスマン帝国たる前近代との比較から」
• 報告者: アケミック・キュチュク・アリ氏(福岡大学教授)
• コメンテーター: 中川忍氏(埼玉大学経済学部長)
• 要約:
o カール・ポランニーの「埋め込み(Embeddedness)」の概念を用い、前近代のオスマン帝国と日本の江戸時代における金利の社会・文化的埋め込みを比較しました 。
o オスマン帝国ではイスラム法(シャリア)の利子禁止原則を迂回するため、法学者の解釈により「現金ワクフ(Cash Waqf:金銭信託・流動資産の寄付)」という革新的な制度が認められ、コストプラス金融(ムラバハなど)の形で事実上の利子付き融資が法的に埋め込まれていました 。
o 一方、江戸時代の日本にはドクトリンとしての利子禁止令はなかったものの、儒教的な身分秩序(士農工商)の中に経済が埋め込まれていました 。大名や武士(借り手)が商人(貸し手)に依存するなか、幕府は時に「棄損令(徳政令)」を発動して債務を帳消しにしたため、市場は法的枠組みよりも商人ネットワーク内の「相互の信頼と評判、関係性」によって維持されていました 。
o さらに、オスマンでは土地が国家に帰属し担保化できなかったのに対し、日本では大坂の「堂島米市場」などで米や農産物が金融資産化され、先物取引(1710年〜)が行われるなど、余剰を金融商品に変える能力(プロト資本主義的経験)において日本が優れており、これが明治以降の急速な資本主義発展を支えたと分析しました 。
o 中川氏は、堂島米市場の最新研究を紹介し、幕府の公定金利が実態を反映しなくなるなか、大坂の商人たちが現物と先物の価格差(価格発見機能)から「市場駆動型のアウテンティコ(本物)の金利」を独自に算出して資産を管理していた点を指摘し、鎖国下でなぜこのような概念が自発的に発展できたのかを質問しました 。
o アケミック氏は、複雑な金融慣行の発展に必ずしもグローバルな開放性は必要ではなく、江戸時代の高い制度的安定性と、米の担保化・国内貿易の極めて高い活発さ(国内的な商業化)こそが、商人たちの実験と市場金利の算出を可能にした核心であると回答しました 。
■ 講演6:「社会主義から資本主義へ一利子の制度化をめぐるウクライナとウズベキスタン」
• 報告者: Bekzod Zakirov氏(ウエストミンスター国際大学タシケント所長)
• コメンテーター: Liliya Repa氏(東京大学招聘研究員、元ウクライナ中央銀行)
• 要約:
o かつてソ連の単一銀行システム(ゴスバンク)に属し、金利を市場信号ではなく行政的な計画手段として扱っていた国々が、崩壊後に辿った対照的な資本主義移行経路を比較しました 。
o ウクライナは自由化を一気に進める「ショック療法」を採用し、多くの民間銀行が設立されたものの、市場を支える法的・制度的インフラが未成熟であったため、銀行が新興財閥(オリガルヒ)の身内用金庫(キャプティブ・トレジャリー)と化し、激しいインフレと金融不安定化を招いたと分析しました 。
o 一方、ウズベキスタンは国家管理を維持する「漸進主義(Gradualism)」をとり、産業政策の道具として金利を行政的に設定し続けた結果、安定は保たれたものの、数十年にわたる市場の「停滞」を生んだと指摘しました 。
o 金利そのものの許可・不許可ではなく、それを支える法的・制度的インフラの構築(制度化)の成否が決定的な差をもたらしたと結論付け、現在は両国が逆の方向(ウズベキスタンは自由化とイスラム金融の導入、ウクライナはEU加盟を見据えた金融監督や司法改革の強化)から収斂しつつあると述べました 。
o Repa氏は、ノーベル賞学者ダグラス・ノースの「パス依存性」やスティグリッツの「不完全情報の経済学」を引き、ウクライナは市場の効率性を過信した「淡水経済学(Freshwater)」的、ウズベキスタンは国家の調整を重視した「塩水経済学(Saltwater)」的な移行戦略であったと整理しました 。そして、市場単独では制度的補完を行えないため、結果としてのボラティリティ(ウクライナ)と硬直性(ウズベキスタン)の双方がシーケンシング(順序)の課題を物語っていると解説しました 。
3. 全体討論および閉会の挨拶
• 閉会の挨拶(Islambek Rustambekov氏 / タシケント国立法科大学副学長)
o 古代からアリストテレスやアクィナス、イスラムの法学者を悩ませてきた「金利」という古い問いが、現代の主権者デジタルマネー(CBDCなど)において「憲法(制度)的瞬間」として再構成されていることを示した当シンポジウムの学術的価値を賞賛しました 。
o 日本とウズベキスタンの法学界の間に30年以上にわたって強固な信頼の架け橋を築き、当イベントを組織した山本会長への深い感謝を述べました 。
o 本日交わされた serial minds(一流の知性)による優れた議論を永続的な成果とするため、Springer等の国際的な学術出版社から論文集(International Volume)として共同出版する計画を進めており、大学として全面的な支援を行うことを表明しました 。
• 山本和志氏による総括
o ロシアのDmitrii氏、パキスタンのAli氏、モンゴルのGoro氏など、世界中からオンラインで参加した実務家・研究者のコメントに感謝を述べました 。
o パブリック・ブロックチェーン(ビットコイン等)が本来目指した「中央の権威を必要としない trustless(信頼不要)な技術特性」と、それを既存の国家・法的枠組み(財産権や証券としての規制など)に組み込もうとする市場・参加者の欲求との間に横たわる、本質的な矛盾やガバナンスの課題について議論を深める重要性を指摘しました 。
o 実証的(positive)アプローチと規範的(normative)アプローチ、そして法学と経済学の対話の重要性を再確認し、これからの国際的な共同研究への期待を込めてシンポジウムを締めくくりました 。

 

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