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比研共催講演会:『ウェールズの未来世代幸福法-成立経緯・成果・可能性- 』10/10(金)開催されました

比研共催講演会:『ウェールズの未来世代幸福法-成立経緯・成果・可能性- 』10/10(金)開催されました

1010

FRI 2025
Place
早稲田キャンパス8号館3階大会議室
Time
15:05~16:45
Posted
Wed, 10 Sep 2025

◆ウェールズの未来世代幸福法-成立経緯・成果・可能性-◆

主 催】 イギリス最高裁判所研究会
共 催】 早稲田大学比較法研究所

日 時】 2025年10月10日(金)15:00-16:50
場 所】 早稲田キャンパス8号館3階大会議室

講演者】 ジェーン・ディビッドソン(Jane Davidson)氏(元ウェールズ議会議員)
質疑参加】デレック・ウォーカー(Derek Walker)氏
使用言語】 英語
通 訳】 なし

世話人】 中村 民雄 (比較法研究所研究所員、早稲田大学法学学術院教授)
対 象】 学生、教職員、一般

概 要】—————————————————————————————-

若者の疑問に率直に応える講演会です。
今や異常気象は気候変動の産物だと誰もが感じています。世の中のあらゆる「持続可能性」が問われています。

英国のウェールズでは国連のSDGs(Sustainable Development Goals)よりも先に、「将来世代幸福法 (Well-being of Future Generations (Wales) Act 2015)」が採択され、将来の未来の世代のために、ウェールズを持続可能なものにしていく法制度がつくられました。

2015年法は、ウェールズ政府のあらゆる機関に、将来世代のための目標を考慮して現在の政策を立案し執行する義務を課しています。そしてそれを監視する「将来世代コミッショナー」を独立の機関として設置しています。このように、将来世代のための利益を法律と法制度で守る仕組みを、世界に先駆けてウェールズはつくりました。

今回の講演は、この世界的に画期的な法律の立案者である、ジェーン・ディビッドソン(Jane Davidson)さんを迎えての講演会です。しかも現在の「将来世代コミッショナー」のデレック・ウォーカー(Derek Walker)さんも質疑に参加してくださいます。こんな素晴らしい機会は二度とありません。

また今年9月には、ジェーン・ディビッドソンさんの2015年法までの苦闘を描いた著書『未来のために今日行動する―ウェールズ発「未来世代のためのウェルビーイング法」ができるまで』(明石書店、2025)が刊行されました。これも今回の講演と直接に関係します。

いま、社会・経済・文化・自然の「持続可能性」を心配する若者はたくさんいます。皆さんが我が事として考える問題です。講演会に参加して、積極的に率直に疑問をぶつけてみましょう。

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===議事次第===

 

【プログラム】
15:00~(5分) 開会の挨拶 (中村民雄・法学学術院教授、イギリス最高裁研究会代表)
15:05~15:35(30分) 基調講演 ジェーン・ディビッドソン(Jane Davidson)氏(元ウェールズ議会議員)
15:35~15:50(15分) コメント ジェーン・ディビッドソン(Jane Davidson)氏
15:50~16:05(15分)デレック・ウォーカー(Derek Walker)氏
16:05~ 質疑応答

 

◆事前登録は不要です!直接会場へお越しください!◆

Link to English page

【開催報告】

参加者:30名(うち学生15名)

【概要】

2025年10月10日(金)、早稲田大学にて講演会「ウェールズの未来世代幸福法-成立経緯・成果・可能性-」が開催されました。講演者のジェーン・ディビッドソン氏(元ウェールズ議会議員)は、ウェールズの「未来世代のためのウェルビーイング法(未来世代幸福法)(Well-being of Future Generations (Wales) Act 2015)」の立案者です。質疑参加したデレック・ウォーカー氏は、未来世代幸福法により設置された独立の機関である「ウェールズ未来世代コミッショナー (Future Generations Commissioner for Wales)」を現在務めており、未来世代幸福法の執行を監視し、政府に助言する役割を担っています。

【ディビッドソン氏の報告】

まず、ディビッドソン氏は、自身の著書『未来のために今日行動する―ウェールズ発「未来世代のためのウェルビーイング法」ができるまで』(明石書店、2025)に基づいて、未来世代幸福法が制定されるまでの経緯や背景について紹介しました。

1998年ウェールズ法の下で、同国の国民議会はあらゆる活動において持続可能な成長を促進する法的義務を負っていました。2011年には与党がその公約に持続可能な開発を実現するビジョンを掲げました。そして、2014年にはWelsh Council for Voluntary Organisationsが政府を代表して、国民との大規模な国民的対話「私たちが望むウェールズ (The Wales We Want)」を実施しました。これにより、政府は、国民が環境、平等、健康、文化、言語等の各分野において何を望んでいるかを学ぶ機会を得て、未来世代幸福法の制定が実現しました。

未来世代幸福法 (The Well-being of Future Generations (Wales) Act 2015) には4つの柱(社会、環境、経済、文化)、国連のSDGs (Sustainable Development Goals) に結び付いた7つの目標及び5つのやり方(長期的視座、協力・協働、予防、総合的視座、利害関係者の関与)があります。さらに、未来世代コミッショナーを始めとする複数の説明責任のメカニズムが組み込まれています。2022年には「ウェールズ ネットゼロ2035年 チャレンジ・グループ」が発足し、ウェールズが2035年までにネットゼロの実現に向けた加速ができるか、またどのようにそれができるのかが試されました。2024年にグループの一つの成果として公刊された「繁栄し、レジリエントなウェールズに向けて」には、現在および将来世代の利益のための10年にわたる政策とその実現に向けた計画が提示されています。

【ウォーカー氏の報告】

次に、ウォーカー氏は、未来世代コミッショナーが未来世代をどのように代表しているかについて説明しました。コミッショナーは、ウェールズ政府と公的機関に対して、持続可能な長期的な計画、未来世代のための政策の策定、未来世代幸福法にある目標の達成等を求めます。さらに、政府と公的機関が説明責任を果たすように監視します。また、コミッショナーは、公的機関が未来世代幸福法の7つの目標(繫栄するウェールズ、強靭なウェールズ、より健康なウェールズ、より平等なウェールズ、結束したコミュニティのウェールズ、文化が躍動しウェールズ語が栄えるウェールズ、グローバルに責任を持つウェールズ)と5つのやり方―長期的視座、予防、(利害関係者の)関与、協働、(諸活動の)統合―に沿って行動するようにサポートします。

続いて、未来世代幸福法の制定後10年が経ち、その間に達成されたいくつかの変化が紹介されました。例えば、公共交通機関への投資が大幅に増額され、バス、電車、サイクリング等の持続可能な移動手段の普及が支援されています。また、ウェールズのリサイクル率は世界第2位を誇ります。これらの目標達成に向けて、コミュニティの強化等にも力が入れられています。

【質疑応答】

未来世代幸福法がウェールズで成功した要因、政府による情報公開・説明責任・透明性確保の必要性、未来世代コミッショナーの選考プロセス、人口減少や過疎化を未来世代幸福法のもとでどのように考えていくか、相反する利益の統合と調整(例えば、経済成長と持続可能な開発)等について熱い議論が展開され、講演会は盛況の内に幕を閉じました。

(文:ドイル彩佳 比較法研究所助手)