講演会「限縮的正犯概念について:規範論と帰属論から」
主 催:早稲田大学比較法研究所
日 時:2023年3月6日(月)16:00-18:00
場 所:早稲田キャンパス8号館303教室
言 語:ドイツ語(独日通訳あり)
通 訳:仲道祐樹教授(社会科学総合学術院、比較法研究所所員)
世話人:仲道祐樹教授(社会科学総合学術院、比較法研究所所員)
参加者:32名(うち学生12名)
2023年3月6日、ドイツのハレ・ヴィッテンベルク大学のヨアヒム・レンツィコフスキー教授をお招きし、ドイツにおける限縮的正犯行為についてご講演いただきました。仲道祐樹教授が司会・通訳・世話人を務めました。
レンツィコフスキー教授はまず、共犯形式の区別を意識し、具体例を挙げながら、ドイツ刑法上の通説を紹介しました。すなわち、それによれば、少なくとも故意犯は決定的とされている限縮的正犯概念に対応するものであり、教唆者や幇助者は、自ら構成要件に記述された不法を行うのではなく、他者の犯罪に関与するものとされます。刑法26条と27条は、このように刑罰拡張事由として機能します。日本の刑法も60条以下で (共同) 正犯者、教唆者、幇助者を区別しており、したがって、 共犯体系 (Beteiligungssystem) に従っています。
このドイツの通説的見解に対しては批判があります。この批判によると、通説は限縮的正犯概念を採っていると主張しつつも、実のところはそれとはまったく調和しないような、拡張的な帰属ドグマーティクに従っているとのことです。ヨアヒム・レンツィコフスキー教授は、この批判を検討した上で、共犯ドグマーティクの出発点であるところの限縮的正犯行為 (Tat) 概念が問題となってくると論じられました。
さらに、レンツィコフスキー教授は、Volker Haas教授によって導入された議論が、従来的な表現よりも一層正確であると指摘されました。というのも、あらゆる共犯形式に関するドグマーティクの出発点が、法律上の不法構成要件の実現という意味における犯行 (Tat) であることを明確にしているためです。
その後の質疑応答では、高橋則夫名誉教授(早稲田大学)や中田己悠氏(早稲田大学法学研究科修士課程)などが、レンツィコフスキー教授や仲道教授と議論し、シンポジウムは盛況のうちに終わりました。
(文:魯潔・比較法研究所助手)