Institute of Comparative Law早稲田大学 比較法研究所

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【開催報告】シンポジウム「仮想通貨はどこへ向かうのか」が開催されました

日時:2018年11月28日(水)15:00-17:00
場所:早稲田キャンパス27号館地下2階小野記念講堂
参加人数:255名(うち学生212名)

黒沼悦郎 比較法研究所幹事

2018年11月28日、小野記念講堂において、黒沼悦郎早稲田大学比較法研究所幹事(早稲田大学法学学術院教授)の司会により、シンポジウム「仮想通貨はどこへ向かうのか」が開催されました。

シンポジウムに先立ち、黒沼幹事より、本シンポジウムは比較法研究所が早稲田大学の学生を対象として企画したものであるとの開会挨拶がありました。

【基調報告】
黒沼氏の開会挨拶に続いて、久保田隆研究所員(早稲田大学法学学術院教授)より、国際取引法の文脈で「仮想通貨はどこへ向かうのか」と題する基調報告がありました。

久保田隆 研究所員(早稲田大学法学学術院教授)

久保田氏は、「仮想通貨とは何か」、「仮想通貨の光と影」、「仮想通貨の規制」(仮想通貨はどうあるべきか)の3つの論点を中心に報告を行いました。

(1)仮想通貨とは何か
久保田氏は、ビットコインと電子マネー(デジタル通貨)の違い等、いくつかの具体例を挙げながら仮想通貨について説明しました。
また、中央管理型ではなく分散型である点に特徴があるが、仮想通貨に明確な定義はない点を指摘しました。

会場の様子

(2)仮想通貨の光と影
久保田氏は、仮想通貨がもたらす技術革新や仮想通貨に対する投資家の期待について説明し、さらに、仮想通貨のこのような側面に対して、仮想通貨は資金洗浄やハッキングなどの懸念を伴うために、国際的な方向性は規制強化に向かっていることを指摘しました。議論の中で、久保田氏は、日本を含む各国の法整備状況を考慮したうえで、仮想通貨の完全な制御は極めて難しいために、仮想通貨の規制は強化すべきであると論じました。

(3)仮想通貨の規制
久保田氏は、日本と諸外国(中国を含む)の立場を比較して論じ、諸外国と比較すると日本では業界団体による自主規制が進展していることを指摘しました。仮想通貨の規制に関しては、このほかに中央銀行デジタル通貨やデジタル空間における法規制、消費者保護、国際的に統一されたルール作りに向けた動きが論点として取り上げられました。

【コメントと補足説明】
久保田氏の基調報告に対して、岩原紳作研究所員(早稲田大学法学学術院教授)と岩村充研究所員(早稲田大学商学学術院教授)がコメントと補足説明を行いました。

岩原紳作 研究所員(早稲田大学法学学術院教授)

まず、岩原氏は、ビットコインを中心に仮想通貨の法的問題を論じました。ハイエクの主張を紹介しながら、ビットコインはあらゆる規制を受けないように作られた通貨ではないかとの問題提起をしました。また、仮想通貨が広く利用されるようになるには、価値の安定性、安全性(デジタル署名、ブロックチェーン技術)、利便性、「適法な利用」が保たれなければならないと指摘しました。
岩原氏の議論では、P2P(ピア・ツー・ピア)取引、「(決済手段ではなく)投資商品としての仮想通貨」を含む金融論上の主要な論点が取り上げられました。
次いで、岩村氏は、久保田氏の基調報告に沿って、貨幣論・金融論(金融政策)の観点から仮想通貨の課題を論じました。岩村氏は、ハイエクの議論や貨幣論の論点を説明したうえで、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)のような膨大な個人データを保有する主体による通貨発行に対して、人々は冷静でなければならないと述べました。

岩村充 研究所員(早稲田大学商学学術院教授)

【出席者による討論】
討論では、久保田氏が岩原氏と岩村氏に質問する形式で討論が行われました。まず、久保田氏と岩原氏との間で、次の2点について意見が交わされました。

1)金融商品取引法をICO(Initial Coin Offering)に適用するための立法論について。
2)倒産の局面における信託法活用の可能性について。

続いて、久保田氏と岩村氏との討論において、岩村氏は、仮想通貨の技術的側面に着目しつつ、次の3点を指摘しました。

1)日本銀行の金融政策によって、すべてが解決するわけではないとの見方は重要である。市場の自律性こそが民主主義や自由主義経済の本来の姿であることを忘れないでほしい。
2)仮想通貨の暗号化技術に関して、コンピュータ・パワーで保護しようとすると多大なコストがかかる。
3)ビットコインの匿名性に関していえば、人を特定するのは容易ではない。

【質疑応答】

出席者による討論

質疑応答では、ブロックチェーンの経済性やセキュリティ(安全性)、日本銀行のデジタル通貨の政策的影響を含むいくつかの論点について議論が交わされました。当日は、会場が満席となったため、急遽会場の外のロビーにも椅子を用意して、会場に入れなかった方のためにシンポジウムの様子を中継するほどの盛況でした。
また、多くの参加者と登壇者の間で活発な議論が展開され、改めて仮想通貨に対する関心の高さを感じました。
参考
開催概要

 

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